美術検定1・2級合格者対象イベント「若手アーティストを迎えたトークイベント」レポート
はじめまして。アートナビゲーターの入曽です。今回は2019年12月9日(月)に開催された美術検定1・2級合格者対象イベント「若手アーティストを迎えたトークイベント」についてのレポートをお届けいたします。
2019年4月に京都で開催し好評をいただいたアーティストを迎えた作品鑑賞&トークイベント「京都でアーティストと美術鑑賞」につづき、東京藝術大学出身の若手女性アーティストお二人を迎えたイベントが東京・原宿の「画廊喫茶 神宮苑」にて開催され、20名ほどの1・2級合格者の方々が参加しました。ギャラリーと喫茶がひとつになった「神宮苑」の店内にはお二人の作品が展示され、アーティストと参加者が共にワインや軽食をいただきつつ、アートについて語り合いました。

会場になった「画廊喫茶 神宮苑」と参加された方々
●アーティストによるトーク
今回のトークイベントでは、立花清美さん(1993年生まれの東京都出身、2017年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業)、山田ゆりさん(1994年生まれの東京都出身、2018年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業、現在同大学大学院美術研究科油画専攻修士課程所属)のお二人を迎え、一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパンの深井厚志さんがファシリテーターとして進行しました。東京藝術大学=藝大の先輩後輩でご友人でもあるお二人に、それぞれの作品や藝大に入った経緯、現在アーティストとしての活動についてなど様々なお話を語っていただきました。

アーティストによるトーク風景
◎立花清美さん
立花さんは、もともと持っている“共感覚”を使って主に油絵を制作されています。“共感覚”とは、文字に色が見えたり、数字に形が見えたりする感覚で、立花さんの場合は香りや本に色や形を感じるそうです。例えば、カンディンスキーは“共感覚”を目指して音楽が聴こえるような絵画を描きましたが、生まれつき“共感覚”を持っている立花さんは、その描く対象の持つ香りの見えたままを描いています。大学に入って描いた最初の作品は、本を読んでイメージした具象的な作品であり、本イベントで店内に飾られた作品は一見抽象的なようですが、立花さんにとってはタイトルにある香りを見えたままに描いているので具象作品という認識なのだそうです。

立花清美《milk tea》(壁面一番左の作品)

立花清美《気配》

立花清美《雲》
◎山田ゆりさん
山田さんは、大学院の油画専攻に所属しながら、日常や地元に寄り添った写真や映像作品を中心に制作されています。友達の日常から感じる環境を通して写真を制作しており、大学の卒業制作では友人のドキュメントを冊子化した作品を制作されました。また、自らのバックグラウンドとして地元を考えるようになり、ご自身の地元である東京・練馬区の写真を撮影。その作品《地元#1》《地元#2》は、建物のスクラップ&ビルドが激しく、地元意識が沸きにくいという対比を表現しています。さらに、本イベントの店内で上映されていた映像作品は、上野仲町通りのスペースを拠点に、地元の人々へインタビューしたものをまとめたもので、見るために集まってきた人々の場所をつくること自体もご自身の作品としての表現とされています。

山田ゆり《地元 #1》(壁面一番右の作品)

山田ゆり《地元 #2》

山田ゆり《カレーになりたい》
お二人の関係は大学の先輩後輩であり、立花さんの卒業制作は映像パフォーマンスで、山田さんの作品にも出演していたそうです。立花さんは、山田さんに関して「自分に持っていない感覚、ちょっとふざけた、笑いと狂気に尊敬する」とおっしゃる一方、山田さんは、立花さんの作品に関して「いろんなレイヤーで見ることができる、自分の見せ方がうまい」と相互に評価しておりました。
お二人が藝大に入った経緯について、立花さんはもともとパフォーマンスアートがしたくて油画科に入り、“共感覚”による表現は在学中に描き始めたそうです。山田さんは高校まで勉強ばかりだったので、違う世界を見たくて藝大へ、そして入学後すぐに写真制作を開始し、次第にプロジェクトベースの作品も制作するようになったそうです。
●参加者とアーティストの交流
参加者からアーティストへの質問タイムでは、「“共感覚”について」や「若いアーティストにとってのプロモーションについて」などの質問が投げかけられ、アーティストお二人の丁寧で正直な回答に参加者の方々は興味津々に耳を傾けていました。
その後、アーティストと参加者が自由に席を行き来しての歓談タイムがあり、作家と参加者、また参加者同士、作品やアートに関して色々と意見を交わしておりました。
立花さんは「あなたの香り描きます」と題して、定期的に新宿のバーで来店された方の香りを描いており、今回参加した方々の香りも描いていました。山田さんは上野の仲町エリアで開設していたアートスタジオのお話などをしており、現在も精力的に様々な活動をされております。
このように作家から直接話を聴くことにより、美術史に造詣の深い美術検定上級者の方々でも、作家の作品に対する思いやアーティスト活動の現状など普段知ることのできないような新たな発見があったのではないかと思います。
+++
私自身も大学で美術史を勉強しておりましたが、このように同時代を生きる若手アーティストと直接お話をする機会は、美術館へ行ったり、文献を読んで一人で勉強したりすることとは違った新鮮な刺激を得ることができました。本イベントに参加され、楽しい時間を共有させていただいた参加者の方々と、このような機会を設けていただいた美術検定協会に深く感謝申し上げます。
プロフィール/バックパッカーで欧州を旅しているときに出会った絵画に感銘を受けたことがきっかけで、美術史を本格的に学ぶことを決意。大学に再入学して学芸員資格を取得。大学では西洋美術史を専攻し、主に17世紀オランダ絵画を研究していました。2018年に美術検定1級を取得。


会場になった「画廊喫茶 神宮苑」と参加された方々
●アーティストによるトーク
今回のトークイベントでは、立花清美さん(1993年生まれの東京都出身、2017年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業)、山田ゆりさん(1994年生まれの東京都出身、2018年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業、現在同大学大学院美術研究科油画専攻修士課程所属)のお二人を迎え、一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパンの深井厚志さんがファシリテーターとして進行しました。東京藝術大学=藝大の先輩後輩でご友人でもあるお二人に、それぞれの作品や藝大に入った経緯、現在アーティストとしての活動についてなど様々なお話を語っていただきました。


アーティストによるトーク風景
◎立花清美さん
立花さんは、もともと持っている“共感覚”を使って主に油絵を制作されています。“共感覚”とは、文字に色が見えたり、数字に形が見えたりする感覚で、立花さんの場合は香りや本に色や形を感じるそうです。例えば、カンディンスキーは“共感覚”を目指して音楽が聴こえるような絵画を描きましたが、生まれつき“共感覚”を持っている立花さんは、その描く対象の持つ香りの見えたままを描いています。大学に入って描いた最初の作品は、本を読んでイメージした具象的な作品であり、本イベントで店内に飾られた作品は一見抽象的なようですが、立花さんにとってはタイトルにある香りを見えたままに描いているので具象作品という認識なのだそうです。

立花清美《milk tea》(壁面一番左の作品)

立花清美《気配》

立花清美《雲》
◎山田ゆりさん
山田さんは、大学院の油画専攻に所属しながら、日常や地元に寄り添った写真や映像作品を中心に制作されています。友達の日常から感じる環境を通して写真を制作しており、大学の卒業制作では友人のドキュメントを冊子化した作品を制作されました。また、自らのバックグラウンドとして地元を考えるようになり、ご自身の地元である東京・練馬区の写真を撮影。その作品《地元#1》《地元#2》は、建物のスクラップ&ビルドが激しく、地元意識が沸きにくいという対比を表現しています。さらに、本イベントの店内で上映されていた映像作品は、上野仲町通りのスペースを拠点に、地元の人々へインタビューしたものをまとめたもので、見るために集まってきた人々の場所をつくること自体もご自身の作品としての表現とされています。

山田ゆり《地元 #1》(壁面一番右の作品)

山田ゆり《地元 #2》

山田ゆり《カレーになりたい》
お二人の関係は大学の先輩後輩であり、立花さんの卒業制作は映像パフォーマンスで、山田さんの作品にも出演していたそうです。立花さんは、山田さんに関して「自分に持っていない感覚、ちょっとふざけた、笑いと狂気に尊敬する」とおっしゃる一方、山田さんは、立花さんの作品に関して「いろんなレイヤーで見ることができる、自分の見せ方がうまい」と相互に評価しておりました。
お二人が藝大に入った経緯について、立花さんはもともとパフォーマンスアートがしたくて油画科に入り、“共感覚”による表現は在学中に描き始めたそうです。山田さんは高校まで勉強ばかりだったので、違う世界を見たくて藝大へ、そして入学後すぐに写真制作を開始し、次第にプロジェクトベースの作品も制作するようになったそうです。
●参加者とアーティストの交流
参加者からアーティストへの質問タイムでは、「“共感覚”について」や「若いアーティストにとってのプロモーションについて」などの質問が投げかけられ、アーティストお二人の丁寧で正直な回答に参加者の方々は興味津々に耳を傾けていました。
その後、アーティストと参加者が自由に席を行き来しての歓談タイムがあり、作家と参加者、また参加者同士、作品やアートに関して色々と意見を交わしておりました。
立花さんは「あなたの香り描きます」と題して、定期的に新宿のバーで来店された方の香りを描いており、今回参加した方々の香りも描いていました。山田さんは上野の仲町エリアで開設していたアートスタジオのお話などをしており、現在も精力的に様々な活動をされております。
このように作家から直接話を聴くことにより、美術史に造詣の深い美術検定上級者の方々でも、作家の作品に対する思いやアーティスト活動の現状など普段知ることのできないような新たな発見があったのではないかと思います。
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私自身も大学で美術史を勉強しておりましたが、このように同時代を生きる若手アーティストと直接お話をする機会は、美術館へ行ったり、文献を読んで一人で勉強したりすることとは違った新鮮な刺激を得ることができました。本イベントに参加され、楽しい時間を共有させていただいた参加者の方々と、このような機会を設けていただいた美術検定協会に深く感謝申し上げます。

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