トークセッションvol.2「展覧会カタログってどう使うの?」レポート
二度目の登場となります、あづまです。
今回は8月27日に行われた美術検定関連イベント・トークセッションvol.2「展覧会カタログってどう使うの?美術を記録/記憶すること」のレポートをさせていただきます。
今回は8月27日に行われた美術検定関連イベント・トークセッションvol.2「展覧会カタログってどう使うの?美術を記録/記憶すること」のレポートをさせていただきます。
このイベントは、6月4日に行われた「本物の美術をみること、カタログから学ぶこと」に続く展覧会カタログについて考えるトークセッションの第二弾です。
会場は現在ヨコハマトリエンナーレ特別提携プログラム「新・港村」開催中の新港ピア。
モデレーターは八巻香澄さん(東京都庭園美術館学芸員)藤田千彩さん(美術ライター)タムラサトルさん(アーティスト)といった美術業界に携わる方々と、新参者の私、恐縮ながらトークデビューさせていただきました。
イベントは二部構成で、まず参加者には各モデレーターが準備したカタログを置いたテーブルについてもらい、なんとなくグループ分けされて第一部がスタート。この座席の決め方がよかったのか、それぞれのグループで面白いお話が展開したようです。
第二部では、モデレーターから各グループでのカタログについての意見報告の後、美術検定事務局の高橋紀子さんの司会進行で、モデレーター4名でカタログの必要性や電子媒体の可能性について話し合いました。お三方はそれぞれの立場で展覧会のカタログ制作に関わっていらっしゃるので、お話になるエピソードはどれも興味深いものでした。そんな中から印象に残ったお話をいくつか紹介します。

まずはは、工夫を凝らした冊子が並ぶ中、あえて東京国立博物館「阿修羅展」など大型展覧会のオーソドックスなカタログをとりあげた八巻さんと、参加された人たちとの会話の中から展開された話です。
●購買層や購入する理由(混み合ってよく見えなかった部分をじっくり見たいという本音に近いものも!)
●紙質がよい⇔重いので電子媒体
●文字情報が多くテキストが正確⇔誰に向けて書いているか書き手の顔が見えない
といった「カタログ」がもつ魅力と問題点を徐々に浮き彫りにしていくプロセスなど、興味深い報告を聞かせていただけました。
次はカタログの必要性について。
カタログについてはみなさんが「必要!」と熱く語られていましたが、なかでもタムラサトルさんが、「予算不足でも絶対つくるんだ」、といってつくった小冊子がきっかけとなり、次のより大きな展示につながっていった、とお話される姿に、アーティストの心意気を感じて自分自身も熱くなりました。

また美術ライターとして活躍されている藤田さんは、アーカイブズにも造詣が深く、デジタル媒体に関するお話には驚きの連続でした。
特に、国立国会図書館が取り組んでいるデジタル化の取り組みの一方で、当初からデジタル媒体に記録されたものへの対応の遅れに懸念されていて、あらためて中長期的な視野にたったカタログのデジタル化についての議論の必要性を感じました。
会場からも多くの質問が出ましたが、そのなかで興味深かったのは「カタログの命」についてです。
展覧会の会場でのみ販売しているカタログの場合は、美術館でしか手に入りません。ただ最近では書籍として流通したり、東京都庭園美術館での「舟越桂 夏の邸宅」展のように、カタログとは別に写真集が制作され書店に並んだり、展覧会が終了しても多くの人の目にとまる機会が増えている例もあります。そのような人気のある展覧会については、事後的にでも書籍化できないものだろうか、というご意見に、うむ、と思わずうなずいてしまいました。
全体としてはあっという間の90分でしたが、トーク終了後も会場ではモデレーターを囲んで話が続き、「カタログ」については語り尽くせていないテーマがまだまだ多く潜んでいる、と感じました。
なんて自分の感想を中心に書いてまいりましたが、自分自身が今回のイベントで与えられたお題『カタログにみる美術検定必勝法』について2点ほど。
企画展ではその展覧会期間しか作品を見られませんが、常設展示のある美術館の場合、作品を目の前にしてコレクションカタログに掲載された解説をよみながらじっくり鑑賞できます。時代別、テーマ別になっているところも多く、知識を系統立てておさらいするにはよいのではないかと思います。
また、トークの際にもお話したのですが、美術検定1級の記述式問題によく出題される、展覧会に関連したツアーやワークショップなどイベントの提案については、カタログだけではなく美術展のフライヤーに掲載されている情報や、美術館の活動をまとめた「年報」や「紀要」が参考になるのでは、と思います。ぜひ一度ご覧になってみてください。
例えば東京都現代美術館はこちらのサイトで公開しています。
*****
余談ですが、お三方は1997年に東京大学駒場キャンパスのコマバクンストラウムで行われたタムラサトルさんの初個展『ワニガマワルンデス』をみていらっしゃるベテランの方々。やや緊張気味の自分の前で、会場で売っていた妻有のキュウリに味噌をつけて「おいしい!」とぱくつく八巻さんに、とってもリラックスさせていただきました!
<モデレーターの近況>
■タムラサトルさんのグループ展
所沢ビエンナーレ「 引込線 」2011 所沢市生涯学習推進センター他 9/18(日)まで
Essential Ongoing 新・港村ギャラリー 9/2(金)~21(水)
■八巻香澄さん
東京都庭園美術館では9/25(日)まで「国立エルミタージュ美術館所蔵 皇帝の愛したガラス」展を開催中。次回展は恒例の美術館公開「アール・デコの館」展で10/6(木)から31(月)まで開催、その後メンテナンスのためしばらく休館となります。
■藤田千彩さん
美術館鑑賞講座がスタート、第一弾は9/28(水)国立新美術館「モダン・アート,アメリカン」展を楽しむ
ウェブアートマガジン『PEELER』主宰、関西方面で販売されている小冊子「視覚の現場」vol.8など執筆多数
東孝彦 プロフィール/2005年の横浜トリエンナーレで初ボランティア、それ以来、都内を中心にガイドやワークショップのお手伝いをしております。休日は3歳の息子とギャラリーや美術館巡りをしながら、コミュニケーション中。そんな日常をtwitter:@az_takahikoでアート情報とあわせて発信しています。毎週日曜22時ハッシュタグ #art_jp でつぶやくSNA(SundayNightArt)にも参加しています。
会場は現在ヨコハマトリエンナーレ特別提携プログラム「新・港村」開催中の新港ピア。
モデレーターは八巻香澄さん(東京都庭園美術館学芸員)藤田千彩さん(美術ライター)タムラサトルさん(アーティスト)といった美術業界に携わる方々と、新参者の私、恐縮ながらトークデビューさせていただきました。
イベントは二部構成で、まず参加者には各モデレーターが準備したカタログを置いたテーブルについてもらい、なんとなくグループ分けされて第一部がスタート。この座席の決め方がよかったのか、それぞれのグループで面白いお話が展開したようです。
第二部では、モデレーターから各グループでのカタログについての意見報告の後、美術検定事務局の高橋紀子さんの司会進行で、モデレーター4名でカタログの必要性や電子媒体の可能性について話し合いました。お三方はそれぞれの立場で展覧会のカタログ制作に関わっていらっしゃるので、お話になるエピソードはどれも興味深いものでした。そんな中から印象に残ったお話をいくつか紹介します。

まずはは、工夫を凝らした冊子が並ぶ中、あえて東京国立博物館「阿修羅展」など大型展覧会のオーソドックスなカタログをとりあげた八巻さんと、参加された人たちとの会話の中から展開された話です。
●購買層や購入する理由(混み合ってよく見えなかった部分をじっくり見たいという本音に近いものも!)
●紙質がよい⇔重いので電子媒体
●文字情報が多くテキストが正確⇔誰に向けて書いているか書き手の顔が見えない
といった「カタログ」がもつ魅力と問題点を徐々に浮き彫りにしていくプロセスなど、興味深い報告を聞かせていただけました。
次はカタログの必要性について。
カタログについてはみなさんが「必要!」と熱く語られていましたが、なかでもタムラサトルさんが、「予算不足でも絶対つくるんだ」、といってつくった小冊子がきっかけとなり、次のより大きな展示につながっていった、とお話される姿に、アーティストの心意気を感じて自分自身も熱くなりました。

また美術ライターとして活躍されている藤田さんは、アーカイブズにも造詣が深く、デジタル媒体に関するお話には驚きの連続でした。
特に、国立国会図書館が取り組んでいるデジタル化の取り組みの一方で、当初からデジタル媒体に記録されたものへの対応の遅れに懸念されていて、あらためて中長期的な視野にたったカタログのデジタル化についての議論の必要性を感じました。
会場からも多くの質問が出ましたが、そのなかで興味深かったのは「カタログの命」についてです。
展覧会の会場でのみ販売しているカタログの場合は、美術館でしか手に入りません。ただ最近では書籍として流通したり、東京都庭園美術館での「舟越桂 夏の邸宅」展のように、カタログとは別に写真集が制作され書店に並んだり、展覧会が終了しても多くの人の目にとまる機会が増えている例もあります。そのような人気のある展覧会については、事後的にでも書籍化できないものだろうか、というご意見に、うむ、と思わずうなずいてしまいました。
全体としてはあっという間の90分でしたが、トーク終了後も会場ではモデレーターを囲んで話が続き、「カタログ」については語り尽くせていないテーマがまだまだ多く潜んでいる、と感じました。
なんて自分の感想を中心に書いてまいりましたが、自分自身が今回のイベントで与えられたお題『カタログにみる美術検定必勝法』について2点ほど。
企画展ではその展覧会期間しか作品を見られませんが、常設展示のある美術館の場合、作品を目の前にしてコレクションカタログに掲載された解説をよみながらじっくり鑑賞できます。時代別、テーマ別になっているところも多く、知識を系統立てておさらいするにはよいのではないかと思います。
また、トークの際にもお話したのですが、美術検定1級の記述式問題によく出題される、展覧会に関連したツアーやワークショップなどイベントの提案については、カタログだけではなく美術展のフライヤーに掲載されている情報や、美術館の活動をまとめた「年報」や「紀要」が参考になるのでは、と思います。ぜひ一度ご覧になってみてください。
例えば東京都現代美術館はこちらのサイトで公開しています。
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余談ですが、お三方は1997年に東京大学駒場キャンパスのコマバクンストラウムで行われたタムラサトルさんの初個展『ワニガマワルンデス』をみていらっしゃるベテランの方々。やや緊張気味の自分の前で、会場で売っていた妻有のキュウリに味噌をつけて「おいしい!」とぱくつく八巻さんに、とってもリラックスさせていただきました!
<モデレーターの近況>
■タムラサトルさんのグループ展
所沢ビエンナーレ「 引込線 」2011 所沢市生涯学習推進センター他 9/18(日)まで
Essential Ongoing 新・港村ギャラリー 9/2(金)~21(水)
■八巻香澄さん
東京都庭園美術館では9/25(日)まで「国立エルミタージュ美術館所蔵 皇帝の愛したガラス」展を開催中。次回展は恒例の美術館公開「アール・デコの館」展で10/6(木)から31(月)まで開催、その後メンテナンスのためしばらく休館となります。
■藤田千彩さん
美術館鑑賞講座がスタート、第一弾は9/28(水)国立新美術館「モダン・アート,アメリカン」展を楽しむ
ウェブアートマガジン『PEELER』主宰、関西方面で販売されている小冊子「視覚の現場」vol.8など執筆多数

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