「ミューぽん」ユーザー向け対話型鑑賞会
こんにちは。「美術検定」実行委員会です。
2011年美術検定も終了し、ほっとされている方々も多いのではないでしょうか。
今年も残り少なくなりましたが、受験から解放されて美術館に足を運ぶ方もいらっしゃることでしょう。
さて、
今回の「アート・エデュケーション」では、11月下旬に開催された、
Tokyo Art Beatが運営する「ミューぽん」主催の、Twitterも使うユニークな美術鑑賞会「ミューぽん対話型鑑賞 in 東京都現代美術館」をレポートします。
2011年美術検定も終了し、ほっとされている方々も多いのではないでしょうか。
今年も残り少なくなりましたが、受験から解放されて美術館に足を運ぶ方もいらっしゃることでしょう。
さて、
今回の「アート・エデュケーション」では、11月下旬に開催された、
Tokyo Art Beatが運営する「ミューぽん」主催の、Twitterも使うユニークな美術鑑賞会「ミューぽん対話型鑑賞 in 東京都現代美術館」をレポートします。
レポートに先立ち、まずは「ミューぽん」とTokyo Art Beat(以下TAB)のことをご紹介しましょう。
「ミューぽん」は、東京都内および近郊を中心に、美術館やアートイベントの割引が受けられるiPhoneアプリです。その運営元がTABというアートとデザインの情報発信サイトなのです。TABと「ミューぽん」では、美術館などの新しい楽しみ方も提案しています。「ミューぽん」ユーザーを対象とした今回のイベントもその一環として実施されました。
今回の鑑賞会は東京都現代美術館で開催中の「ゼロ年代のベルリン―わたしたちに許された特別な場所の現在(いま)―」展に出品されている作品を題材としたものです。鑑賞にはまずWebとTwitterを利用した鑑賞、次いで展示室での鑑賞と2つの場が設けられ、1人のアートナビゲイターが進行役として双方に関わりました。
①Twitterを使うつぶやき鑑賞
東京都現代美術館での鑑賞会は11月27日(日)に開催されましたが、それに先立つ同月7日、TABのサイトで、鑑賞会イベントの告知とアートナビゲイター、平野智紀さんによるTwitter上での鑑賞の呼びかけがスタートしました。
サイト上に同展出品作の1つ、ヨン・ボック作《バウフヘーレ・バウヘン》から1シーンが掲示されています。それに続いて、
「東京を舞台にしたパフォーマンスを収めた映像作品のワンカット。
右に座っているのはアーティスト本人です。
彼はいったい何をしているのでしょうか?
また、それはどこをみてそう思いましたか?
Twitterでつぶやいてみてください!」
という平野さんの告知が登場しています。
画像=TABのイベント告知画面。詳細はこちら
鑑賞会に参加希望の「ミューぽん」ユーザーは、それぞれ自分が作品から考えたことをTwitter上でつぶやいています。その内容を少しのぞいてみましょう。
「俺、この仕事やめて、国に…帰ろうと思うんだ。」「お、お前まで、俺を裏切るのか?」手前の人は神妙な面持ちでラーメンをすすり、奥の人は衝撃を受けた様な表情だったので、なにやら彼にとって重大な話を聞かされたのではないかと。
右「ラーメン占いやらないの?えっ日本発じゃないの?こっちじゃ常識だよ?」左「ズルズル」「麺をあらかじめ針金に通して、後は普通に食べる。麺が抜けた順番で次のラーメンをまでの運勢わかるんだ!麺が切れた時は不吉!」左「・・・」右「・・・」左「麺伸びるよ」
Johnは、大学に所属する国際関係の研究者(身なりから)。普段からラーメン屋台を渡り歩いては、絡まった麺を一本一本ほぐしている(謎の装置は年季が入ってそう)。近所の普通のオッちゃんが本質を語るのを聞いて、驚きの表情を浮かべている。
(Twitterでヨン・ボック作品のカット画像に寄せられたつぶやきより)
呼びかけ当初は、アーティストの表情に注目する人が多かったようです。つぶやきが重なっていくうちに、ラーメン丼を囲むオブジェ(装置?)に注目し出す人、アーティストの食べ方を分析する人、おじさんとアーティストの関係を考える人など、さまざまに見方が広がっていったそうです。また、ほかの人のつぶやきを読み、自分の考えたことを発展させた人もいたようです。平野さんもつぶやきを読み、それに対する書き込みを通してナビゲイトをすることでTwitterでの鑑賞は進行していきました。
準備運動のようなTwitterでの鑑賞。さて、この体験が美術館での鑑賞にどのようにつながっていくのでしょうか。
②美術館での鑑賞
東京都現代美術館での鑑賞会は、同館閉館後に貸し切りという贅沢な環境の中で実施されました。鑑賞するのは2作品です。プログラム開始前に対象の作品をみる時間も確保されていました。
当日の参加者は20名。20代~40代と比較的若い参加者が多いのは、Twitterユーザーという条件があるからでしょう。中には幼稚園児を連れたお母さんもいます。
最初のプログラムは、参加者を5人ほどのグループに分け、Twitterでのつぶやきを説明しながら自己紹介するというものでした。
平野さんから「みなさん初対面の方も多いかもしれませんが、実はすでに同じ作品をみて意見を言い合っていますよね。今から作品をみて声を出して意見を言う練習をしたいと思います」と声がかかります。
これは通常の美術館での鑑賞ツアーではほとんどない体験です。ほぼ初対面の参加者たちは自発的に「ぼくのことは◎◎と呼んでください」のような発話をし、躊躇なくユーザーネームを交換し合います。また、あらかじめ主催者から配布された自分のつぶやきのプリントアウトを手に、自分の考えを臆することなく紹介していくのです。参加者同士が初対面という空気はほとんどなく、非常にくだけた雰囲気でグループでのディスカッションが盛り上がります。これは主催者が取り組んだ、Twitterユーザーが参加者ならではの場の設定とプログラムの立て方が功を奏した結果なのでしょう。
そのくだけたムードのまま、次のプログラム、実際の作品鑑賞へと移っていきました。ここでは2つ目の作品鑑賞の様子を紹介します。

イザ・ゲンツケン《ベルリンのための新しい建築》2001年
床から150cmほどの高さまで白い台座が複数、空間を斜めに横切り一直線上に並ぶ。
それぞれの台座の上にはプラスティック製の板などで作られた立体が載っているという作品。
平野「この作品、素通りした方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は僕もその1人です。しかし、よくみてみるととてもおもしろい作品です。しばらく作品をみてください」
平野「この作品から思ったことは何かありますか」
参加者「建てつけの悪い建築物に見える。ここはスキマが空いているし」
参加者「素材のせいもあるけど、チープな感じがする」
平野「確かに。ビニールテープや養生テープ、あとはプラスティックの板などが使われていますね。吉崎さん、この作品を制作したのはどんな人物なんでしょうか?」
吉崎(キュレーター)「イザ・ゲンツケンは、周囲と環境との関係をテーマにしながら、日常的な素材で彫刻作品やインスタレーションを作っている作家です」
平野「素材のほかに気付いたことはありませんか?」
参加者「タイトルを先に見ちゃったので、ベルリンだと分かったけれど、実際のベルリンの混沌とした雰囲気に合っているような気がします」
平野「…建築模型のようだという意見もありましたが、実はこの作品、ミース・ファンデル・ローエという建築家が1920年頃に描いたフリードリヒ通りの高層ビル案から着想を得た作品なんです(図を参加者に見せる)。この図と見比べてみて気付いたことはありませんか?」
参加者「今のベルリンの建築を批判的にみたらこうなるのかも、って思います」
参加者「でも、この模型、見る場所を変えるとキラキラしていてきれい。アーティストはベルリンの未来はこうあってほしいと思ったのかも」
参加者「こっちからみると暗い色が強調されているようにみえるけど、反対からみるとカラフルでキラキラしているようにみえる。都市の二面性みたいなものを表しているような感じがする」
参加者「僕はこの建築に住みたい。この(テープの)色がドイツの国旗になってるから」
参加者たちはそれぞれの意見に耳を傾けながら、作品の視点を写し、目の高さを変え、作品に対する新しい見方を発見していたようです。
平野「最初は素通りしていた作品ですが、じっくり時間をかけてみてみました。現在のベルリンに対する賞賛、批判あるいは、都市の持つ二面性という意見も出てきて作品をみることで将来のベルリンの姿を想像できるのはおもしろいと思います。みなさんの考えはまだ広がると思いますが、今日の鑑賞はこれで終了します。ご参加、ありがとうございました」
*****
鑑賞会終了後、展覧会キュレーターの吉崎さんは「みなさんが作品を読み解いていくプロセスが非常に興味深かった。作品の核心に迫る鋭い見方も聞けて、あらためてこういった場の面白さを体験させてもらった」とコメントされていました。
最後にナビゲイターを務めた平野さんに、作品の選択理由と参加者の反応について感じたことを尋ねてみました。
「Twitterによる鑑賞では、東京という身近な街が舞台で、一見普通にみえてふつうじゃないという面白さから、みる人たちがさまざまな物語をつむぎやすいと考え、作品とシーンを選びました。展示鑑賞では、まず展覧会のキーワードが“都市と記憶”だと考えました。記憶についてはフジ・リユナイテッドの《再会のための予行演習》(1作品目)でカバーできると思い、都市というキーワードで《ベルリンのための新しい建築》を選びました。2つ目の作品では、ベルリンを採り上げたわけですが、現在や未来への賞賛的な読み解きがあったのは予想外でした。僕はそのように読んでいなかったので。特に理想の展開を想像しながら鑑賞をしているわけではありませんが、自分の想定より外にみなさんの見方が広がり、深まっていくのは非常に興味深いです」
この鑑賞では、アートナビゲイターは進行役に徹しながら、参加者の話に沿って関係する情報を渡す、アーティストの考えや展示についての事実をキュレーターが解説する、という方法で進められました。情報を全く提示しないという対話型でもなく、特に理想の展開を想像しながら鑑賞しているわけではありませんが、どこかに着地点がみえる手法がとられていたのです。
本ブログでは、かなりの頻度で対話的な鑑賞を採り上げており、あたかもそれが日常のように感じます。しかし、社会人が美術館で声を出して、グループで話し合いながら作品をみる機会はあまり多くありません。主催者もその点を最初に参加者へ「めったに体験できないこと」として話していました。
Twitterを利用した鑑賞が、対話的鑑賞?みる・考える・話す・聞くをもとにした創造の現場?をどれほど生み出せるのかは未知数ですが、参加者のつぶやきが重層的になっていくことも考えられるし、新たなコミュニティを生む面白さもはらんだ鑑賞の方法と思います。また、この方法がリアルな場所での鑑賞にどう作用していくかについても興味がつきません。
今後もTABと「ミューぽん」はこのようなイベントを企画していく予定だそうです。
*「ミューぽん」2012年版もリリースされました。
(画像提供=Tokyo Art Beat 取材・文=染谷ヒロコ 本ブログ編集)
「ミューぽん」は、東京都内および近郊を中心に、美術館やアートイベントの割引が受けられるiPhoneアプリです。その運営元がTABというアートとデザインの情報発信サイトなのです。TABと「ミューぽん」では、美術館などの新しい楽しみ方も提案しています。「ミューぽん」ユーザーを対象とした今回のイベントもその一環として実施されました。
今回の鑑賞会は東京都現代美術館で開催中の「ゼロ年代のベルリン―わたしたちに許された特別な場所の現在(いま)―」展に出品されている作品を題材としたものです。鑑賞にはまずWebとTwitterを利用した鑑賞、次いで展示室での鑑賞と2つの場が設けられ、1人のアートナビゲイターが進行役として双方に関わりました。
①Twitterを使うつぶやき鑑賞

サイト上に同展出品作の1つ、ヨン・ボック作《バウフヘーレ・バウヘン》から1シーンが掲示されています。それに続いて、
「東京を舞台にしたパフォーマンスを収めた映像作品のワンカット。
右に座っているのはアーティスト本人です。
彼はいったい何をしているのでしょうか?
また、それはどこをみてそう思いましたか?
Twitterでつぶやいてみてください!」
という平野さんの告知が登場しています。
画像=TABのイベント告知画面。詳細はこちら
鑑賞会に参加希望の「ミューぽん」ユーザーは、それぞれ自分が作品から考えたことをTwitter上でつぶやいています。その内容を少しのぞいてみましょう。
「俺、この仕事やめて、国に…帰ろうと思うんだ。」「お、お前まで、俺を裏切るのか?」手前の人は神妙な面持ちでラーメンをすすり、奥の人は衝撃を受けた様な表情だったので、なにやら彼にとって重大な話を聞かされたのではないかと。
右「ラーメン占いやらないの?えっ日本発じゃないの?こっちじゃ常識だよ?」左「ズルズル」「麺をあらかじめ針金に通して、後は普通に食べる。麺が抜けた順番で次のラーメンをまでの運勢わかるんだ!麺が切れた時は不吉!」左「・・・」右「・・・」左「麺伸びるよ」
Johnは、大学に所属する国際関係の研究者(身なりから)。普段からラーメン屋台を渡り歩いては、絡まった麺を一本一本ほぐしている(謎の装置は年季が入ってそう)。近所の普通のオッちゃんが本質を語るのを聞いて、驚きの表情を浮かべている。
(Twitterでヨン・ボック作品のカット画像に寄せられたつぶやきより)
呼びかけ当初は、アーティストの表情に注目する人が多かったようです。つぶやきが重なっていくうちに、ラーメン丼を囲むオブジェ(装置?)に注目し出す人、アーティストの食べ方を分析する人、おじさんとアーティストの関係を考える人など、さまざまに見方が広がっていったそうです。また、ほかの人のつぶやきを読み、自分の考えたことを発展させた人もいたようです。平野さんもつぶやきを読み、それに対する書き込みを通してナビゲイトをすることでTwitterでの鑑賞は進行していきました。
準備運動のようなTwitterでの鑑賞。さて、この体験が美術館での鑑賞にどのようにつながっていくのでしょうか。
②美術館での鑑賞
東京都現代美術館での鑑賞会は、同館閉館後に貸し切りという贅沢な環境の中で実施されました。鑑賞するのは2作品です。プログラム開始前に対象の作品をみる時間も確保されていました。
当日の参加者は20名。20代~40代と比較的若い参加者が多いのは、Twitterユーザーという条件があるからでしょう。中には幼稚園児を連れたお母さんもいます。

平野さんから「みなさん初対面の方も多いかもしれませんが、実はすでに同じ作品をみて意見を言い合っていますよね。今から作品をみて声を出して意見を言う練習をしたいと思います」と声がかかります。
これは通常の美術館での鑑賞ツアーではほとんどない体験です。ほぼ初対面の参加者たちは自発的に「ぼくのことは◎◎と呼んでください」のような発話をし、躊躇なくユーザーネームを交換し合います。また、あらかじめ主催者から配布された自分のつぶやきのプリントアウトを手に、自分の考えを臆することなく紹介していくのです。参加者同士が初対面という空気はほとんどなく、非常にくだけた雰囲気でグループでのディスカッションが盛り上がります。これは主催者が取り組んだ、Twitterユーザーが参加者ならではの場の設定とプログラムの立て方が功を奏した結果なのでしょう。
そのくだけたムードのまま、次のプログラム、実際の作品鑑賞へと移っていきました。ここでは2つ目の作品鑑賞の様子を紹介します。

イザ・ゲンツケン《ベルリンのための新しい建築》2001年
床から150cmほどの高さまで白い台座が複数、空間を斜めに横切り一直線上に並ぶ。
それぞれの台座の上にはプラスティック製の板などで作られた立体が載っているという作品。
平野「この作品、素通りした方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は僕もその1人です。しかし、よくみてみるととてもおもしろい作品です。しばらく作品をみてください」
平野「この作品から思ったことは何かありますか」
参加者「建てつけの悪い建築物に見える。ここはスキマが空いているし」
参加者「素材のせいもあるけど、チープな感じがする」
平野「確かに。ビニールテープや養生テープ、あとはプラスティックの板などが使われていますね。吉崎さん、この作品を制作したのはどんな人物なんでしょうか?」
吉崎(キュレーター)「イザ・ゲンツケンは、周囲と環境との関係をテーマにしながら、日常的な素材で彫刻作品やインスタレーションを作っている作家です」
平野「素材のほかに気付いたことはありませんか?」
参加者「タイトルを先に見ちゃったので、ベルリンだと分かったけれど、実際のベルリンの混沌とした雰囲気に合っているような気がします」

参加者「今のベルリンの建築を批判的にみたらこうなるのかも、って思います」
参加者「でも、この模型、見る場所を変えるとキラキラしていてきれい。アーティストはベルリンの未来はこうあってほしいと思ったのかも」
参加者「こっちからみると暗い色が強調されているようにみえるけど、反対からみるとカラフルでキラキラしているようにみえる。都市の二面性みたいなものを表しているような感じがする」
参加者「僕はこの建築に住みたい。この(テープの)色がドイツの国旗になってるから」
参加者たちはそれぞれの意見に耳を傾けながら、作品の視点を写し、目の高さを変え、作品に対する新しい見方を発見していたようです。
平野「最初は素通りしていた作品ですが、じっくり時間をかけてみてみました。現在のベルリンに対する賞賛、批判あるいは、都市の持つ二面性という意見も出てきて作品をみることで将来のベルリンの姿を想像できるのはおもしろいと思います。みなさんの考えはまだ広がると思いますが、今日の鑑賞はこれで終了します。ご参加、ありがとうございました」
*****
鑑賞会終了後、展覧会キュレーターの吉崎さんは「みなさんが作品を読み解いていくプロセスが非常に興味深かった。作品の核心に迫る鋭い見方も聞けて、あらためてこういった場の面白さを体験させてもらった」とコメントされていました。
最後にナビゲイターを務めた平野さんに、作品の選択理由と参加者の反応について感じたことを尋ねてみました。
「Twitterによる鑑賞では、東京という身近な街が舞台で、一見普通にみえてふつうじゃないという面白さから、みる人たちがさまざまな物語をつむぎやすいと考え、作品とシーンを選びました。展示鑑賞では、まず展覧会のキーワードが“都市と記憶”だと考えました。記憶についてはフジ・リユナイテッドの《再会のための予行演習》(1作品目)でカバーできると思い、都市というキーワードで《ベルリンのための新しい建築》を選びました。2つ目の作品では、ベルリンを採り上げたわけですが、現在や未来への賞賛的な読み解きがあったのは予想外でした。僕はそのように読んでいなかったので。特に理想の展開を想像しながら鑑賞をしているわけではありませんが、自分の想定より外にみなさんの見方が広がり、深まっていくのは非常に興味深いです」
この鑑賞では、アートナビゲイターは進行役に徹しながら、参加者の話に沿って関係する情報を渡す、アーティストの考えや展示についての事実をキュレーターが解説する、という方法で進められました。情報を全く提示しないという対話型でもなく、特に理想の展開を想像しながら鑑賞しているわけではありませんが、どこかに着地点がみえる手法がとられていたのです。
本ブログでは、かなりの頻度で対話的な鑑賞を採り上げており、あたかもそれが日常のように感じます。しかし、社会人が美術館で声を出して、グループで話し合いながら作品をみる機会はあまり多くありません。主催者もその点を最初に参加者へ「めったに体験できないこと」として話していました。
Twitterを利用した鑑賞が、対話的鑑賞?みる・考える・話す・聞くをもとにした創造の現場?をどれほど生み出せるのかは未知数ですが、参加者のつぶやきが重層的になっていくことも考えられるし、新たなコミュニティを生む面白さもはらんだ鑑賞の方法と思います。また、この方法がリアルな場所での鑑賞にどう作用していくかについても興味がつきません。
今後もTABと「ミューぽん」はこのようなイベントを企画していく予定だそうです。
*「ミューぽん」2012年版もリリースされました。
(画像提供=Tokyo Art Beat 取材・文=染谷ヒロコ 本ブログ編集)
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