アートでエクササイズ? vol.5

あっという間に桜の季節が過ぎ、花粉症からも解放されました。
新緑には少し早いかなと思いつつ、待ちきれずに箱根のポーラ美術館に出かけてみました。
同館は、美術検定・応援美術館です!
ポーラ美術館はJR・箱根登山鉄道「小田原駅」から箱根登山電車で「強羅駅」下車。バスに13分ほど乗って到着です。新宿からロマンスカーを利用して、ビールを飲みながら…という魅力的な行き方もあります。しかし、今回は車を利用しました。東名御殿場ICより約20分です。
山道を走り抜けていくと、ポーラ美術館のサインが見えてきました。
美術館は地上部分の高さを抑えた設計により、森の中に違和感なく、すっぽりと溶け込んでいます。ガラスの回廊を通って、シェルターにゆっくりと入っていくような感じです。シェルターというと閉塞的なイメージがありますが、白い大理石やガラスで構成されたこの美術館では森の緑の中へ招き入れられたような気持の良さです。
入り口では佐藤忠良《カンカン帽》の女性が迎えてくれました。
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ポーラ美術館はポーラ創業家二代目の鈴木常司氏が収集した約9500点にも及ぶコレクションから成り立っています。今年の7月まで、開館10周年を記念した「コレクター鈴木常司―美へのまなざし」展が3期に分けて開催されています。Ⅰ期のピカソ、Ⅱ期のモネに続き、Ⅲ期にあたる現在はポーラ美術館の近現代の日本画コレクションの中から杉山寧の作品を特集展示していました。
スレート状の美しい天井の展示室では鈴木氏の執務室が再現されていました。広いデスク、黒皮の椅子、整然と並んだたくさんの美術書。壁にはカンデンスキーのスクエアな絵画がかけられています。40余年にわたっての美術作品の収集は、ここでの勉強と静かな情熱によって支えられてきたのでしょうか。
「絵画は私に糧を与えてくれる」、鈴木氏のこの言葉は印象的でした。
初めて購入したという二点の絵画から展示は始まりました。レオナール・フジタ《誕生日》は軽快な薄塗の油彩画。荻須高徳《バンバラ城》は荒いタッチでうねるような地面が特徴的な油彩画。タイプの違う二点はどちらもこぢんまりとしたサイズです。その後はユトリロを中心とした初期の収集作品、「勇気が出る」と好んだというルオーやルドン、静謐な岡鹿之助、ルソー作品と続きます。
社名のポーラは美の女神に由来することから女性の造形美を描いた作品も多く、かつて社屋のエントランスでポーラの顔となっていた、ロダン作《ナタリー・ド・ゴルベフの肖像》のノーブルな姿を見ることもできます。犬をモチーフにした小さな愛らしい作品の数々、坂本繁二郎の馬、熊谷守一やピカソ、セザンヌ、モネの作品など多岐にわたるコレクションに加えて、特集展示の杉山寧作品は《水》、《洸》などの大作を含めて約20点ありました。また、ポーラならではの世界の化粧道具のコレクションは約6500点にものぼり、珍しい調香台やトラベルセット、アール・ヌーヴォー期の香水瓶には只々うっとりするばかりです。

広々とした壁面にゆったりと展示されている絵画を時間をかけて見ているうちに、穏やかな気持ちになり、自然と笑みが浮かんできました。「どうだ!」というようなある種のおどろおどろしさのある絵画作品はここにはありません。
鈴木氏のまなざしにかなった作品はどれもやさしい色彩や素直な美しさに満ちていて、例えて言うならば「観る美容液」。口角が確実に5ミリほど上がることは間違いありません!
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「7月のパリの夕暮れの光」をイメージしたというコレクションルームを出ると、トップライトから自然光がシャワーのように降り注ぐアトリウムに。
館内のレストラン「アレイ」も大きな窓を持つ明るいつくりで、小塚山の眺望が広がっています。
開催中のワークショップで寄木細工のコースター作りを楽しんだ後、2か所あるミュージアムショップに寄りました。モネのスイレンクッキーやフジタのキャンディ、箱根・小田原の美味しいものに加えて、デザイン性の高いミュージアムグッズ、熊谷守一の巾着やTシャツなどオリジナル商品も豊富でワクワクします。
4月には美術館周辺の遊歩道もリニューアルオープンしました。ブナやヒメシャラが群生し、様々な野鳥も見られるそうです。気持ちよさそう!

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1日たっぷりと箱根を満喫し、この日の歩数計のトータルは145577歩、距離にして約8.1km。消費カロリーは321Kcalでした。
時々はこんな贅沢な空間で、くすみがちな日々をデトックスしなくては……と心ひそかに思ったのでした。
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プロフィール/もともとイラストレーターをしていたので、美術は大好き。美術館にもよく足を運んでいました。そこで見つけた美術検定のチラシのイラストに惹かれて受験。2008年に1級取得。現在は損保ジャパン東郷青児美術館でガイドスタッフとして活動しています。
「美術検定」に向けては、テキストの図版に吹き出しを付けて覚えたいことをメモ書きしたり、カラフルな美術年表を手作りして手帳に挟んで持ち歩いたり、実際の作品や美術書の図版、写真をたくさん見るといったビジュアル勉強法(?)を実践していました。

美術館は地上部分の高さを抑えた設計により、森の中に違和感なく、すっぽりと溶け込んでいます。ガラスの回廊を通って、シェルターにゆっくりと入っていくような感じです。シェルターというと閉塞的なイメージがありますが、白い大理石やガラスで構成されたこの美術館では森の緑の中へ招き入れられたような気持の良さです。
入り口では佐藤忠良《カンカン帽》の女性が迎えてくれました。
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ポーラ美術館はポーラ創業家二代目の鈴木常司氏が収集した約9500点にも及ぶコレクションから成り立っています。今年の7月まで、開館10周年を記念した「コレクター鈴木常司―美へのまなざし」展が3期に分けて開催されています。Ⅰ期のピカソ、Ⅱ期のモネに続き、Ⅲ期にあたる現在はポーラ美術館の近現代の日本画コレクションの中から杉山寧の作品を特集展示していました。

「絵画は私に糧を与えてくれる」、鈴木氏のこの言葉は印象的でした。
初めて購入したという二点の絵画から展示は始まりました。レオナール・フジタ《誕生日》は軽快な薄塗の油彩画。荻須高徳《バンバラ城》は荒いタッチでうねるような地面が特徴的な油彩画。タイプの違う二点はどちらもこぢんまりとしたサイズです。その後はユトリロを中心とした初期の収集作品、「勇気が出る」と好んだというルオーやルドン、静謐な岡鹿之助、ルソー作品と続きます。
社名のポーラは美の女神に由来することから女性の造形美を描いた作品も多く、かつて社屋のエントランスでポーラの顔となっていた、ロダン作《ナタリー・ド・ゴルベフの肖像》のノーブルな姿を見ることもできます。犬をモチーフにした小さな愛らしい作品の数々、坂本繁二郎の馬、熊谷守一やピカソ、セザンヌ、モネの作品など多岐にわたるコレクションに加えて、特集展示の杉山寧作品は《水》、《洸》などの大作を含めて約20点ありました。また、ポーラならではの世界の化粧道具のコレクションは約6500点にものぼり、珍しい調香台やトラベルセット、アール・ヌーヴォー期の香水瓶には只々うっとりするばかりです。



鈴木氏のまなざしにかなった作品はどれもやさしい色彩や素直な美しさに満ちていて、例えて言うならば「観る美容液」。口角が確実に5ミリほど上がることは間違いありません!
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開催中のワークショップで寄木細工のコースター作りを楽しんだ後、2か所あるミュージアムショップに寄りました。モネのスイレンクッキーやフジタのキャンディ、箱根・小田原の美味しいものに加えて、デザイン性の高いミュージアムグッズ、熊谷守一の巾着やTシャツなどオリジナル商品も豊富でワクワクします。
4月には美術館周辺の遊歩道もリニューアルオープンしました。ブナやヒメシャラが群生し、様々な野鳥も見られるそうです。気持ちよさそう!


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時々はこんな贅沢な空間で、くすみがちな日々をデトックスしなくては……と心ひそかに思ったのでした。
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「美術検定」に向けては、テキストの図版に吹き出しを付けて覚えたいことをメモ書きしたり、カラフルな美術年表を手作りして手帳に挟んで持ち歩いたり、実際の作品や美術書の図版、写真をたくさん見るといったビジュアル勉強法(?)を実践していました。
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