ーーというわけで、今回は美術「館」にまつわる本をご紹介します。
◆『
美術館をめぐる対話』西沢立衛・著(集英社新書)
建築家ユニットSANAAとして手掛けた金沢21世紀美術館・ルーヴル美術館ランス別館をはじめ、国内外で活躍の西沢氏。
「アートが美術館をつくるのか? いや、美術館がアートをつくりだすのか?」
「ルーヴル美術館の壁は絵なんかかけられて邪魔だと思っている」
「美術品でできている街」そして「美術館がつくっていく街」
「わたしたちはひとりひとりで美術館を共有している」・・・・・などなど。
都市の歴史から見た美術館からアートと建築の関係まで まさに美術館をめぐる「!」とする魅力的なことばが交わされる対話集です。
お相手はSANNAの妹島和世氏、青木淳氏(建築家)平野啓一郎氏(小説家)南條史生氏(森美術館館長)オラファー・エリアソン氏(アーティスト)。
「開く・開かれた」という言葉が何度もでてくることも印象的。21世紀の美術館を考えるときのキーワードなのかもしれません。

もう1冊は、実際に私たちになじみある一館を通して「美術館」をもっと知ることができるものをご紹介します。
◆『
東京都美術館ものがたりーニッポン・アート史ダイジェスト』東京都美術館・編(鹿島出版社)
昨年の「マウリッツハイス美術館展」など、いつも大人気の展覧会そして公募展会場としておなじみの東京都美術館はわが国初の公立美術館です。
この本は2012年のリニューアルオープン記念展に伴い出版されたものですが、副題にあるとおり、1926年「美の殿堂」(!)として開館してからの歴史はまさに日本の近現代美術史であり、アーティストと美術館・アートと建築・そして美術館と都市社会との関係性を知る、とてもわかりやすい資料となっています。
可愛いイラストや図版も多く楽しく読みやすい装丁なのもおススメポイント。
おまけとして・・・
◆「
美術館の秘密」(『Pen』2011年No.291、阪急コミュニケーションズ)
◆「
美術館をつくった富豪たち」(『東京人』2010年4月号、都市出版株式会社)
など雑誌のバックナンバーもチエックしてみるのもおもしろいですよ。
最近は、展覧会の内容や所蔵作品ばかりでなく建築物として、またカフェ・レストランやミュージアムショップ、さらに周辺の街の楽しみ方まで……いろいろな角度から注目を集める美術館。関連本もたくさん並んでいますが、今回は検定試験の勉強中のみなさんにも役立てていただけそうなものを選んでみました。
実際に作品の前に立つのもたいせつな試験勉強のひとつだと思います。
その時には「館」にもぜひ注目を!!
*****
プロフィール
美術館で見つけたポスターの引力にひかれ第一回美術検定(当時はアートナビゲーター検定試験)から受験。2005年1級取得。現在は東京都現代美術館ボランティアガイドを中心に活動。
そんな日々の中で「私は美術館に来ている人が好きなんだ!」ということに気づきました。人と作品が出会うその瞬間を共有できること。いつもそれを楽しく感じています。