「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」レポート
こんにちは。「美術検定」事務局です。
今回は、視覚障害者と晴眼者が対話を重ねながら共に美術鑑賞するワークショップ、
「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」を紹介します。
今回は、視覚障害者と晴眼者が対話を重ねながら共に美術鑑賞するワークショップ、
「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」を紹介します。
このワークショップを主宰する林建太さんは、
「いろいろな人の視点があるからこそ美術鑑賞は面白い」というコンセプトのもと、
2012年6月より、都内の美術館を中心に月1回程度ワークショップを実施しています。
この日訪れたワークショップの開催場所は、
ワタリウム美術館の「宝箱-齋藤陽道 写真展」。
参加者19名のうち、視覚障害者は4名でした。
まずは二つのグループに分かれ、それぞれ自己紹介の後、展示作品の写真をもとに、
晴眼者が視覚障害者に作品を伝えるウォーミングアップを行ないます。
どのように作品を言葉にすればよいのか難しく考えていた様子の晴眼者に、
視覚障害者でもあるグループのナビゲーター役の方が
「あまり難しく考えなくてもいいです。色や形、大きさなどで分かりますので、
それらをキーワードに、みたままをお話していただければ。」と伝えると、
「私はこんな風にみえます。」「私はこうかな。」と自由な対話が広がっていきました。

まずは展示作品の写真を使ってウォーミングアップ
グループ内の雰囲気も和やかになり、いよいよ展示会場に入っての鑑賞です。
晴眼者の参加者が、壁面に書かれた展覧会のテーマやキャプションを読み上げ、
その言葉をもとに作品について読み解こうとします。
「ここは“感動”というテーマの章だけれど、私たちが日頃思う感動とはちょっと違う」
「作家が感動している景色がこの景色なのでは」
「写し出されている人々の存在こそが感動なのかも」
今回は写真展ということもあってか、作品が多く展示してある壁面もありました。
すべての作品を説明するのが難しそうなところでは、
ナビゲーター役が「どの作品が気になりましたか?」と質問し対話を促します。
後半になるにつれ、対話もどんどん弾んでいきました。

作品をじっくりみながら、参加者それぞれが作品について語り合う
展示作品の全体的なテーマやシリーズ、作品10点ほどを対話しながら鑑賞していたら、
あっという間に2時間が経過しタイムアップ。
今回は、鑑賞後に作家である齋藤陽道さんとの座談会がありました。
聴覚障害者の齋藤さんは筆談で参加者の質問に応え、
スタッフがそれを声に出して視覚障害者に伝えていました。
ワークショップ終了後、視覚障害の参加者は
「いろいろな方の対話を聞かせていただくことで、作品が分かってきたような気がします」
「それぞれの感想が違っていたところが面白かったです」
と展覧会を楽しまれた様子でしたが、晴眼者も
「一人でみていると気づかなかった作品の良さが、対話することで気づくことができました」
「作品に込められた思いが、対話することでより深く理解できました」
と、通常の鑑賞とは違った印象を述べられていました。
参加者はこのワークショップを通し、
作品を言語化して伝えるということは何かを改めて考察できたと共に、
他者と対話することによって作品の理解が深まるという発見があったようです。
この「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」は、
最近では美術館だけでなく、科学館や植物館などでも開催し、
また美術館と協同企画しプログラムを実施するなど、活動の幅を広げています。
「いろいろな人が自由に楽しめる新たな“美術(館)像”が
各地で少しずつ現れ始めていると日々実感しています。
今後も、みえる人みえない人いろいろな人が混ざり合う鑑賞の場をつくり、
楽しみたいと思っています。」
多種多様な人々との対話を通し、新しい美術鑑賞を提案するワークショップ、
今後の展開が楽しみです。
※「宝箱-齋藤陽道 写真展」はワタリウム美術館で2013年11月30日(土)~2014年3月16日(日)に開催。
詳細は → http://www.watarium.co.jp/exhibition/1311saitou/index.html
※「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」の詳細は下記サイトをご参照下さい。
http://kansho-ws.jugem.jp/
http://www.facebook.com/kanshows
取材・文=高橋紀子(「美術検定」事務局)
「いろいろな人の視点があるからこそ美術鑑賞は面白い」というコンセプトのもと、
2012年6月より、都内の美術館を中心に月1回程度ワークショップを実施しています。
この日訪れたワークショップの開催場所は、
ワタリウム美術館の「宝箱-齋藤陽道 写真展」。
参加者19名のうち、視覚障害者は4名でした。
まずは二つのグループに分かれ、それぞれ自己紹介の後、展示作品の写真をもとに、
晴眼者が視覚障害者に作品を伝えるウォーミングアップを行ないます。
どのように作品を言葉にすればよいのか難しく考えていた様子の晴眼者に、
視覚障害者でもあるグループのナビゲーター役の方が
「あまり難しく考えなくてもいいです。色や形、大きさなどで分かりますので、
それらをキーワードに、みたままをお話していただければ。」と伝えると、
「私はこんな風にみえます。」「私はこうかな。」と自由な対話が広がっていきました。

まずは展示作品の写真を使ってウォーミングアップ
グループ内の雰囲気も和やかになり、いよいよ展示会場に入っての鑑賞です。
晴眼者の参加者が、壁面に書かれた展覧会のテーマやキャプションを読み上げ、
その言葉をもとに作品について読み解こうとします。
「ここは“感動”というテーマの章だけれど、私たちが日頃思う感動とはちょっと違う」
「作家が感動している景色がこの景色なのでは」
「写し出されている人々の存在こそが感動なのかも」
今回は写真展ということもあってか、作品が多く展示してある壁面もありました。
すべての作品を説明するのが難しそうなところでは、
ナビゲーター役が「どの作品が気になりましたか?」と質問し対話を促します。
後半になるにつれ、対話もどんどん弾んでいきました。

作品をじっくりみながら、参加者それぞれが作品について語り合う
展示作品の全体的なテーマやシリーズ、作品10点ほどを対話しながら鑑賞していたら、
あっという間に2時間が経過しタイムアップ。
今回は、鑑賞後に作家である齋藤陽道さんとの座談会がありました。
聴覚障害者の齋藤さんは筆談で参加者の質問に応え、
スタッフがそれを声に出して視覚障害者に伝えていました。
ワークショップ終了後、視覚障害の参加者は
「いろいろな方の対話を聞かせていただくことで、作品が分かってきたような気がします」
「それぞれの感想が違っていたところが面白かったです」
と展覧会を楽しまれた様子でしたが、晴眼者も
「一人でみていると気づかなかった作品の良さが、対話することで気づくことができました」
「作品に込められた思いが、対話することでより深く理解できました」
と、通常の鑑賞とは違った印象を述べられていました。
参加者はこのワークショップを通し、
作品を言語化して伝えるということは何かを改めて考察できたと共に、
他者と対話することによって作品の理解が深まるという発見があったようです。
この「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」は、
最近では美術館だけでなく、科学館や植物館などでも開催し、
また美術館と協同企画しプログラムを実施するなど、活動の幅を広げています。
「いろいろな人が自由に楽しめる新たな“美術(館)像”が
各地で少しずつ現れ始めていると日々実感しています。
今後も、みえる人みえない人いろいろな人が混ざり合う鑑賞の場をつくり、
楽しみたいと思っています。」
多種多様な人々との対話を通し、新しい美術鑑賞を提案するワークショップ、
今後の展開が楽しみです。
※「宝箱-齋藤陽道 写真展」はワタリウム美術館で2013年11月30日(土)~2014年3月16日(日)に開催。
詳細は → http://www.watarium.co.jp/exhibition/1311saitou/index.html
※「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」の詳細は下記サイトをご参照下さい。
http://kansho-ws.jugem.jp/
http://www.facebook.com/kanshows
取材・文=高橋紀子(「美術検定」事務局)
| 美術館&アートプロジェクトレポート | 12:02 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑