アジ美とボランティア組織アジ美は、地下鉄の中洲川端駅に直結した
博多リバレインという複合施設の7・8階に1999年に開館しました。アジアの近現代美術を専門に扱い、交流型の美術館を目指しています。具体的な交流事業としては、アジアの作家や研究者を招くレジデンス事業、そして私も所属するボランティア組織などです。ボランティアは案内・解説の他にも絵本の読み聞かせや活動支援など合計8つのグループがあり、現在240名ほどが登録しています。いずれも月2回活動できることが条件です。
アジ美が取り扱う国と地域を示す地図の前に立つ筆者お客様と一緒に楽しむ案内・解説の活動はアジアギャラリー(常設展示室)の作品解説です。毎日午後1時から4時までならいつでも解説が可能です。その時に来館されたお客様の依頼もありますが、こちらからお声かけすることも。普段知る機会が少ないアジアの歴史的背景などを交えて話すと、その深さに驚かれることもしばしばです。また、逆に「キレイね」「スゴイね」と話しかけてくる方も。そんな時はあまり説明せず、お客様の話に耳を傾けながら一緒に作品を鑑賞します。
その他、事前にお申込みがあった学校の団体見学などでも解説します。小学生の場合は、子供たちの集中力をきらさないように心がけています。色とりどりでも抽象的で分かりづらい作品では自分の服と同じ色を探してもらったり、緻密な具象画ではどんな筆で描いたか尋ねてみたり。うまくいくと子供たちが私も気付かなかったことを作品の中に発見してくれます。解説を通して喜びや感動を共有できる心から嬉しい瞬間です。
小学生の団体見学で解説するボランティア(撮影:知念愛佑美)近いのに知らなかったアジア所蔵作品と向き合う中で気付いたことがあります。それは、欧米に比べ、私はアジアの美術についてほとんど知らないということでした。アジアの作品は確かに「面白い」。でも私が「美しい」と感じるものとは随分違いました。正直今でも、奇抜な色彩表現や社会的な強いメッセージに戸惑うことも少なくありません。
ただ、アジ美でボランティアをしていなかったら私はそれらに目を止め、思い巡らすことはおそらくなかったでしょう。例えば、カースト制度の中で生きた女性たちが何を考えていたのかとか。私にとって身近な美術を介するからこそ、その領域を超えて理解を深めたいという願いが起こされるのだと思います。
多くの人と喜びを共有するために今後は、所蔵作品の勉強はもちろんですが、何よりも長く活動を続けることが大切だと考えています。9月6日からは
第5回福岡アジア美術トリエンナーレ2014も開催されます。作家とお客様、作品とお客様をつなげ、共に心豊かになれるお手伝いがこれからもできれば幸いです。
プロフィール
高校、大学ともに美術系で、卒業後おさらいも兼ねて2009年から「美術検定」に挑戦し、2012年1級に合格。検定受験のためにそれまで苦手だった日本美術など様々な展覧会に足を運び、何を観ても面白いところを見つけられるようになりました。ちなみに所定の養成研修を終え、私がアジ美の案内・解説ボランティアとしてデビューしたのは2013年4月。仕事との両立が大変な面もありますが先輩ボランティアの方々はじめ、多くの人に励ましてもらいながら頑張っています。