勉強の合間に読みたい息抜きアートBOOKS vol.3
こんにちは。最近、1級どころか2級の知識もかなり怪しくなってきた、名前だけアートナビゲーターな杉山と申します。
今年も遂に美術検定の季節がやって参りました! 学習の進捗はいかがでしょうか。
今回も、受験の役に立つんだか立たないんだか分からないけれど、おそらく息抜きにはなるんじゃないだろうか…という無責任な視点で選んだ本をご紹介します。
今年も遂に美術検定の季節がやって参りました! 学習の進捗はいかがでしょうか。
今回も、受験の役に立つんだか立たないんだか分からないけれど、おそらく息抜きにはなるんじゃないだろうか…という無責任な視点で選んだ本をご紹介します。
◆ 『けんちく体操』
米山 勇、高橋 英久、田中 元子、大西 正紀・著 (エクスナレッジムック、2011年) 1200+税 円
古今東西、様々な建築の構造を、「けんちく体操マン」たちが組み体操で表現した様子を写した写真集(?)です。「けんちく体操」とは一体どんなものなのか、百聞は一見にしかず、まずは次のムービーをご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=gz7hE6Wd4qQ
https://www.youtube.com/watch?v=6wBKhfnvKMA
―たぶん、“しょーもな!”と心のなかでつぶやかれた方が大半だと思います。でも、ちょっと待ってください!騙されたと思って、一度本屋さんで、他にもいろんな種類の「けんちく体操」をご覧になってみてください。見れば見るほど、なんだか「じわじわくる」ものがないでしょうか。
「じわじわきた」方には同意いただけると思うのですが、「けんちく体操マン」達がカラダをよじってムリヤリ建築のカタチを再現している様子をじっと眺めていると、不思議なことに、何となくその建築の「見どころ」が分かってくるのです。あーなるほど、建築家はここを見て欲しくてこれを建てたのね、と。何というか、ぼんやり見ているだけでは気づかなかった建物の構造を、カラダのなかにぐっと引き寄せてみることで、初めてその面白さに気づく、といった具合です。
これまでよそよそしくそびえていたあの建物やその建物。体当たりで話してみると実は意外といいヤツだった。いやあ、ちょっと誤解してたわ。そんな気分になれる…かもしれない一冊です。
◆ 『しかけ絵本の世界 武蔵野美術大学 美術館・図書館コレクション』
佐久間保明・監修、本庄美千代・編 (グラフィック社、2014年) 2,500+税 円
昨年、ムサビこと武蔵野美術大学で開催され、ちょっと話題になった「しかけ絵本」の展覧会。当時カタログに掲載された作品は前期分だけだったのですが、最近「完全版」カタログが市販本として出版されました。それが本書です。
しかけ絵本には様々な種類のものがありますが、やはり数も多いし目を引くのは「とびだす絵本」たち。ページをめくる度、20~30cmもの高さのある立体物がページの上に立ち現れては消えてゆく様子を見るのは、オトナになってもビックリするし、ワクワクするのではないでしょうか。
美術ファンにお楽しみいただける要素もいくつか。例えば…
開くとモネのジヴェルニーの庭を再現したジオラマが展開する絵本。コロッセオからガウディ、フランク・ロイド・ライトまで、様々な有名建築を、内部構造まで作りこまれたポップアップで紹介する絵本。果ては、なぜ線遠近法を使うと奥行きを平面に表現できるか?という幾何学的にややこしい理屈を、立体模型で直観的に説明してしまう絵本もあります。未来派のアーティストでブックデザイナーでもあったブルーノ・ムナーリの、もはや「抽象アート」な作品も多数掲載。
昔の絵本を眺めながら、それぞれの時代の大人達がこども達に何を託そうとしてきたのか…思いを馳せてみるのも面白いかもしれません。
◆ 『美術、応答せよ!: 小学生から評論家まで、美と美術の相談室』
森村泰昌・著 (筑摩書房、2014年) 1,800+税 円
ヨコハマトリエンナーレ2014で、「忘却」をテーマに据え、アートディレクターを務められた美術家・森村泰昌さんの最新の著作です。開幕の直前に出版されました。
これから駆け込みで見に行く方も、もう何度も見に行った!という方も、本書を読むと、トリエンナーレを貫く森村さんの目線をよりハッキリと感じられるようになると思います。
例えば、森村さんいわく、芸術家は“みんなと同じアッチじゃなく、誰もが興味を示さないコッチを向く(p25)”のが身上であるがゆえに、どんなに頑張ってもなかなか他人に理解されず、作品ともども忘れ去られてしまいかねない、因果な商売です。
しかし森村さんは、美術の存在意義は、そうしてすっかり忘れ去られた後に、どこかの誰かに不意に思い出されること、アイツがやっていたことは実はこんなに凄いことだった!と再認識されることだとお話しされています(文中では“時間因子が作用して化ける(p100)”という言い方をされています)。
また、例え作り手の言葉や思いが忘れ去られてしまっても、作品さえ後の世に残ることができれば、一度と言わず何度でも何度でも、その時代時代に応じた新しい意味と共に、作品を再発見してもらうことができるのです。
逆に言えば、「世の中から忘れ去られたものたち」の声ならぬ声―“ささやき(p214)”や“沈黙(p249)”―にスポットライトを当て、その中に秘められた価値を語り得るのは、同じく忘れ去られることが身上の「美術」を置いて他にないのだ! と、そんな思いで、森村さんは今回のトリエンナーレに望まれたのではないだろうか…などと勝手に思っております。
※ここで紹介した本の一部は、amazonでも中身をチラ見できます(書籍タイトルをクリックすると、amazonサイトをご覧いただけます)。
*****
プロフィール/2011年に1級に合格してアートナビゲーターになりました。
高校の芸術科目では美術を選択していましたが、描くのも作るのも全く向いてないのを思い知らされたので、観る専門に徹することにしました…。美術検定は範囲が広すぎて、正直、投げ出したくことも一度や二度ではないのではと思うのですが、問われているのは知識ではありません! 貴方の好奇心の強さと、満ち溢れるほどに美術を愛する気持ちです! ―と思い込めば、多少はガマンできると思います。
米山 勇、高橋 英久、田中 元子、大西 正紀・著 (エクスナレッジムック、2011年) 1200+税 円
古今東西、様々な建築の構造を、「けんちく体操マン」たちが組み体操で表現した様子を写した写真集(?)です。「けんちく体操」とは一体どんなものなのか、百聞は一見にしかず、まずは次のムービーをご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=gz7hE6Wd4qQ
https://www.youtube.com/watch?v=6wBKhfnvKMA
―たぶん、“しょーもな!”と心のなかでつぶやかれた方が大半だと思います。でも、ちょっと待ってください!騙されたと思って、一度本屋さんで、他にもいろんな種類の「けんちく体操」をご覧になってみてください。見れば見るほど、なんだか「じわじわくる」ものがないでしょうか。
「じわじわきた」方には同意いただけると思うのですが、「けんちく体操マン」達がカラダをよじってムリヤリ建築のカタチを再現している様子をじっと眺めていると、不思議なことに、何となくその建築の「見どころ」が分かってくるのです。あーなるほど、建築家はここを見て欲しくてこれを建てたのね、と。何というか、ぼんやり見ているだけでは気づかなかった建物の構造を、カラダのなかにぐっと引き寄せてみることで、初めてその面白さに気づく、といった具合です。
これまでよそよそしくそびえていたあの建物やその建物。体当たりで話してみると実は意外といいヤツだった。いやあ、ちょっと誤解してたわ。そんな気分になれる…かもしれない一冊です。
◆ 『しかけ絵本の世界 武蔵野美術大学 美術館・図書館コレクション』
佐久間保明・監修、本庄美千代・編 (グラフィック社、2014年) 2,500+税 円
昨年、ムサビこと武蔵野美術大学で開催され、ちょっと話題になった「しかけ絵本」の展覧会。当時カタログに掲載された作品は前期分だけだったのですが、最近「完全版」カタログが市販本として出版されました。それが本書です。
しかけ絵本には様々な種類のものがありますが、やはり数も多いし目を引くのは「とびだす絵本」たち。ページをめくる度、20~30cmもの高さのある立体物がページの上に立ち現れては消えてゆく様子を見るのは、オトナになってもビックリするし、ワクワクするのではないでしょうか。
美術ファンにお楽しみいただける要素もいくつか。例えば…
開くとモネのジヴェルニーの庭を再現したジオラマが展開する絵本。コロッセオからガウディ、フランク・ロイド・ライトまで、様々な有名建築を、内部構造まで作りこまれたポップアップで紹介する絵本。果ては、なぜ線遠近法を使うと奥行きを平面に表現できるか?という幾何学的にややこしい理屈を、立体模型で直観的に説明してしまう絵本もあります。未来派のアーティストでブックデザイナーでもあったブルーノ・ムナーリの、もはや「抽象アート」な作品も多数掲載。
昔の絵本を眺めながら、それぞれの時代の大人達がこども達に何を託そうとしてきたのか…思いを馳せてみるのも面白いかもしれません。
◆ 『美術、応答せよ!: 小学生から評論家まで、美と美術の相談室』
森村泰昌・著 (筑摩書房、2014年) 1,800+税 円
ヨコハマトリエンナーレ2014で、「忘却」をテーマに据え、アートディレクターを務められた美術家・森村泰昌さんの最新の著作です。開幕の直前に出版されました。
これから駆け込みで見に行く方も、もう何度も見に行った!という方も、本書を読むと、トリエンナーレを貫く森村さんの目線をよりハッキリと感じられるようになると思います。
例えば、森村さんいわく、芸術家は“みんなと同じアッチじゃなく、誰もが興味を示さないコッチを向く(p25)”のが身上であるがゆえに、どんなに頑張ってもなかなか他人に理解されず、作品ともども忘れ去られてしまいかねない、因果な商売です。
しかし森村さんは、美術の存在意義は、そうしてすっかり忘れ去られた後に、どこかの誰かに不意に思い出されること、アイツがやっていたことは実はこんなに凄いことだった!と再認識されることだとお話しされています(文中では“時間因子が作用して化ける(p100)”という言い方をされています)。
また、例え作り手の言葉や思いが忘れ去られてしまっても、作品さえ後の世に残ることができれば、一度と言わず何度でも何度でも、その時代時代に応じた新しい意味と共に、作品を再発見してもらうことができるのです。
逆に言えば、「世の中から忘れ去られたものたち」の声ならぬ声―“ささやき(p214)”や“沈黙(p249)”―にスポットライトを当て、その中に秘められた価値を語り得るのは、同じく忘れ去られることが身上の「美術」を置いて他にないのだ! と、そんな思いで、森村さんは今回のトリエンナーレに望まれたのではないだろうか…などと勝手に思っております。
※ここで紹介した本の一部は、amazonでも中身をチラ見できます(書籍タイトルをクリックすると、amazonサイトをご覧いただけます)。
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高校の芸術科目では美術を選択していましたが、描くのも作るのも全く向いてないのを思い知らされたので、観る専門に徹することにしました…。美術検定は範囲が広すぎて、正直、投げ出したくことも一度や二度ではないのではと思うのですが、問われているのは知識ではありません! 貴方の好奇心の強さと、満ち溢れるほどに美術を愛する気持ちです! ―と思い込めば、多少はガマンできると思います。
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