
会場ではブルーの頭のバルーンボーイに迎えられ、何やら不思議な入口にワクワク感が増します。開催間もない平日の昼間でしたが、様々な年齢層と国籍の人々で賑わい、あちらこちらでそれぞれに思い入れのあるキャラクターに声を上げている様子です。

今回の「ティム・バートンの世界展」は2009年に
ニューヨーク近代美術館(MoMA)で
「Tim Burton展」として始まったものをベースに、出品作品や構成を変え、新たな美術展として2014年の春から世界ツアーを開始したものです。この度ようやく日本に上陸。MoMAでは総入場者数80万人以上、同館史上3番目の入場者数を記録し、その後に巡回した5都市でも大人気で迎えられたそうです。

それもそのはず、フィギュアや短編フィルム、カートゥーン、絵本の原稿といった作品にとどまらず、紙ナプキンやメモ帳、大小のスケッチ帳や、テーブルマットの吸い取り紙に至るまで、描かれたおびただしい数のスケッチは圧巻。どのモチーフをどんな素材で描いても、そこにはまぎれもないバートンのテイストが溢れていて、圧倒的な個性に完全にやられます。ギョロギョロの眼、縫い目のような口、細い手足の不思議ちゃんたち。

バートンの描くキモかわいい(?)クリーチャー達は、六本木ヒルズのロクロク星人や日本でブームの妖怪たちと友好を深めているのでしょうか?どんなおもてなしを受けているのかな、と想像すると何だかとても楽しくなります。バートン自身も来日して、ダダやピグモンといったウルトラ怪獣たちにサプライズ歓迎されたとか…まるで映画のようですね。
そんな日本のカルチャーが大好きなバートンは、芸術家と呼ばれることを好みません。
インタビュー記事の中では、「今回の展覧会は、ふだん美術館に行かないような人たちが見に来てくれることに、大きな意義があるんだ。特に子どもたちが僕の作品を見て『彼にできるなら、自分にもできる』って感じてくれることが重要なんだ。~中略~『こんなふうに絵をかいてみたいな。つくってみたいな』ってインスピレーションを与えることができる。そこが素晴らしいんだ。」と語っています。
展覧会ディレクターのジェニーと作り上げていった“こういうものも美術館で展示できる”という新たな試みは、日本ではここ森アーツギャラリーという絶好の場所を得て、日本人デザイナーの力も借りて、100パーセント以上に花開いています。
…あっ、でもエクササイズにはなりません。会場内では未公開の短編フィルムにたびたび足を止め、見入ってしまうし、終了後には摩訶不思議なバートンの世界を表現した様々なフードアートの誘惑もあるからです。

会場内で800歩に満たない歩数計を見ながら、帰ったら映画
「チャーリーとチョコレート工場」を見直して、ウンパルンパのダンスを一緒に踊ろう、とひそかに誓いました…。
プロフィール/もともとイラストレーターをしていたので、美術は大好き。美術館にもよく足を運んでいました。そこで見つけた美術検定のチラシのイラストに惹かれて受験。2008年に1級取得。現在は損保ジャパン東郷青児美術館でガイドスタッフとして活動しています。
「美術検定」に向けては、テキストの図版に吹き出しを付けて覚えたいことをメモ書きしたり、カラフルな美術年表を手作りして手帳に挟んで持ち歩いたり、実際の作品や美術書の図版、写真をたくさん見るといったビジュアル勉強法(?)を実践していました。