タイトルとなっているPARASOPHIAは、「別の知性」という意味の造語です。従来の国際美術祭や地域アートプロジェクトとは一線を画すことを強く意識しています。ねらいは次のとおり、きわめて先鋭的です。
・京都経済同友会などの民間資金が中心となっているので、公的資金に縛られず、思い切ったことができる
・京都という観光資源にも安易に頼ることをせず、来場者数という結果にこだわらない
・作品のキャプションは、無料ガイドブックに集約し、会場での表示を最低限にすることにより、 来場者にじっくり作品に向き合い、考えてもらう
・とかく「わかりにくい」とされる現代アートですが、安易に敷居を低くしない、口当たりを良くする味付けはしない
作品鑑賞ガイドツアーも、単なる作品解説ではなく、海外の先進的なアートイベント、アートセンターにおける「メディエーター」のような対話型のガイドツアーを行い、お客さんとの感想などを共有する形式になっています。そのため、本芸術祭でのガイドは「シェルパ」、ガイドツアーは「シェルパツアー」と名付けられました。「シェルパ」という名は、鑑賞者の手助けをするという意味で、ヒマラヤ登山の荷物運び役をもじったもので、皆で案を出し合い決めました。

さて、去る3月14日(土)、第1回目のガイドツアーを実施しました。お客さんは10人。対話型では適正人数です。45分間、長くても1時間のツアーですので、3点を選んでのガイドとなりました。
一つ目は、サイモン・フジワラの《ピエタ(キング・コング・コンプレックス)》等の一連の作品。独特のエロティシズムやジェンダー観から、それぞれが感じたキーワードを述べ合いながらの鑑賞となりました。続いては、世界で活躍する現代美術家、蔡國強の《京都ダ・ビンチ》。花火で有名な作家ですが、今回は少し作風に変化がありました。従来の作風との対比などについても感想が語られました。最後は、ジャン=リュック・ヴィルムートの《カフェ・リトル・ボーイ》。これは、鑑賞者がチョークで自由に書き込めるいわゆるリレーショナルアートです。作家がどの部分を書き、河本信治アーティスティックディレクターがどこを書いたなど、制作途中の様子なども交えて解説し、感想を述べ合いました。
(写真左)蔡國強の《京都ダ・ビンチ》を前に作品説明 (写真右)ジャン=リュック・ヴィルムートの《カフェ・リトル・ボーイ》現代アートのガイドの楽しさは、まず、作家がほぼ現存しており、トークなどが聞けるのでそのエピソードなども織り交ぜながらガイドできることでしょうか。現在の社会状況などに絡んで、作品の狙いなどが議論できることもガイドの醍醐味です。一方で、難しい点は、新作が出品されることが多く、ガイドをするためには短期間で作品を見て、読み込んで、ガイドそれぞれのスタイルに合わせたツアーを組むことです。ただ、今回は会場も普通のホワイト・キューブではないので、小声で話す必要はありません。ときに笑いも出るなど、一種お祭りのような高揚した独特の雰囲気の中でのガイドツアーとなりました。
なお、ほとんどすべての作品が撮影可能で、SNS等で誰でもが自由に情報発信できるのも、本芸術祭の楽しさです。京都は大学も多く、若いボランティアの方が多く(私は高齢の部類になります)、ガイドのための勉強会もにぎやかで楽しいです。
是非、京都の春爛漫を愛でながら、鋭く尖った現代アートの饗宴をたっぷり堪能しに、PARASOPHIAへおいでやす!
プロフィール
2010年2級、2015年1級取得。1956年東京生まれ、1979年某美術専門学校卒(当時の恩師の一人はもの派の方)。1984年宣伝会議コピーライター講座卒。職業は美術とは全く関係なく、転勤族で現在大阪市在住。定年が近づく中、アートレビュー講座に出たり、Webで発信したり、まれに公募展に出品したりしています。アートは日展系から現代アートまで、美術の多様性を大切にして鑑賞しています。《個人のSNS一覧》https://twitter.com/forimalisthttp://www.facebook.com/yuhji.mutohhttp://loplop-eggs.blogspot.jp/http://blog.goo.ne.jp/forimalitsuto