エプサイトはフォト・アーティストの方や、趣味で写真を楽しんでいる人たちのオアシス的な場所です。入場無料の展示室だけでなく、最新の機種でのプリントアウトサービスや、写真のスキルを上げるセミナーなど、写真プリントに関する幅広い活動を行なっています。
エプソンイメージングギャラリー エプサイトの会場入口
このギャラリーは通常18時に閉館します。閉館後の18時半から20時まで、展示室をプライベートな空間にして、アートナビゲーターの方たちなどを中心に事前申し込みくださった方たち限定で、今回のトーク・イベントを開催しました。
用意した30席はほぼ満席、展示作家でもある写真家の北島敬三先生をお招きしてお話を伺いました。作家の方から直接お話しを伺えることは大変貴重な機会です。良い情報を皆さんに提供するため、先生との事前の打ち合わせをしました。その結果、1)アート・フォトグラフとはなにか、2)アート・フォトグラフの成り立ちと現状、3)アート・フォトグラフの楽しみ方、そして4)ヘンリー・ダーガーの部屋の作品についてお話しいただくことになりました。
実は、このイベント前の2月21日に、同じ場所で一般向けトーク・イベントがあり、その時北島先生は大勢のダーガー・ファンに、ダーガーについての質問を投げかれられてしまいました。「僕はダーガー専門家じゃないのに・・・」と少々落ち込みぎみだったので、当日は「アート・フォトグラフ」に関する話題、つまり「写真をアートとして楽しむ」というポイントに絞ったトークにしようと考えました。
今回は、アートの関心が高く知識も豊富な方々が参加されることを先生に事前にお伝えしていましたので、先生は写真だけでなく絵画などの幅広いアートに関する話題を引用されながら、大変熱のこもったお話をしてくださいました。
写真家の北島敬三さん(右)と、司会のアートナビゲーター・中村宏美さん
アートナビゲーターをはじめとしたアートファンが熱心に耳を傾けた北島先生の後ろに展示されている作品は、ダーガーの部屋を撮影した最初の作品です。この作品にはダーガーの残した作品やファイル、絵の具などが雑然と写っています。この作品を示しながら、先生は「撮影するとき、ここに写っているものすべて、私に見えていると思いますか?実は見えていません」と告白(?)されました。撮影するときには意識していない物が偶然写りこむのが写真だというのです。絵画では作家が自由にモチーフを描きこんだり、レイアウトしたりできますが、写真は偶然写り込んだ物や、そのままの景色を受け入れる・・・そこが絵画と写真との大きな違いであり、鑑賞のポイント、面白さなのだと教えてくださいました。
最後に皆さんからの質問を受け、エプサイト畑中氏のサポートをいただきながらの90分のトーク・イベントはあっという間に終了しました。このイベントが、写真をアートとして鑑賞するヒントを提供する機会になっていましたら嬉しい限りです。
先日、畑中氏にイベント報告書を提出したところ、年に数回このようなトーク・イベントを開催したいと依頼がありました。大変嬉しいことです。次回の日程が決まりましたらまた告知させていただきますので、ぜひ皆様のご参加をお待ちしております!
プロフィール
2008年美術検定1級を取得。同年から東京オペラシティアートギャラリーでボランティアとして活動。その後、六本木森美術館、国立西洋美術館などでボランティアとして作品解説を始める。現在、東京メトロポリタンテレビジョンの「美術館へいこう!」の担当として台本制作、出演。他、繊研究新聞のアートコラム執筆、美術アカデミー&スクールの講師として、美術鑑賞のための講座や展覧会の作品解説を担当する。