◆生物学者と美術館に行こう!?『
芸術と科学のあいだ』 福岡伸一 著 (木楽舎)
みなさんは美術館へは誰と一緒に行きますか?
これってけっこう大事なことですよね。
実は、私にはぜひご一緒したいなぁ…と夢見ている人がいます。
それは生物学者の福岡伸一氏。
福岡先生はれっきとした分子生物学者。
ベストセラーとなった『
生物と無生物のあいだ』をはじめ、数多くの著書を発表されています。
が、その著書の中でも、ヨハネス・フェルメールの全作品を巡った旅の紀行『
フェルメール 光の大国』などで、アートファンとしての福岡先生をご存知の方も多いことでしょう。
そもそも、フェルメールファンとなったきっかけが「虫」、というのも楽しいエピソード。
虫大好き少年が、顕微鏡を手にしミクロの世界に魅入られたと同時に、
「このすばらしい顕微鏡というものを発明したのは誰だろう?」という興味からレーウェンフックという人物を知る。
そしてさらに、その彼の生まれ暮らした17世紀のオランダ・デルフトのことを調べているうちにフェルメールに出会った。
というのですから!
「私たちを構成するはずの微粒子はたえず空気の中に拡散していき、ついには宇宙へと希釈されていく。存在は常にその揺らぎのなかに、かろうじて、かすかにあるのだと。旅の朝、ふと見た花の姿にさえ、彼は無限の広がりを感得したのだ。」
この「彼」とは、日本画家の高山辰雄です。
福岡先生と美術館に行って、
北斎の波から人体の血流へ。
人類古来文化の文様からDNAの二重らせんの秘密へ。
メタボリズム運動による建築と新陳代謝の問題。
500年前のデューラーの版画にL型アミノ酸の結晶?!
…とワクワクとするような新鮮な視点で、作品を楽しむ。
まさに芸術の眼と科学の眼で。
そんな体験を味わえる本です。
そして美術検定でおなじみの絵画・彫刻・建築・デザインが、図版とともにたくさん登場するのもおすすめポイントです!
◆美術館の舞台裏見せます!『
美術館で働くということ 東京都現代美術館 学芸員ひみつ日記』 オノユウリ 著 (KADOKAWA)
私は
東京都現代美術館でボランティアをしているのですが、
ボランティアをしています…というと、
まずほとんどの方に「あぁ、あの黒い服を着て座っている人?」と聞かれます。
が、私の場合はガイドスタッフとして作品解説(ギャラリートークツアー)をするのが主な活動です。
ちなみにあの黒い服で座っている人は「監視スタッフ」。
もしかしたら、誰よりも館内で作品と長い時間を過している人かもしれませんね。
私たちのギャラリーツアー時もいろいろと助けて下さる、頼りがいのあるプロフェッショナルです。
さて、みなさんは美術館の作品を前に、
「この作品はどうしてここにあるのかな?」という考えが頭をよぎったことはありますか?
美術館だから壁に絵がかかっているのはあたりまえ?!
実は、作家の手から美術館にたどり着くまでには、
そしてそれを私たちが楽しく鑑賞するためには、
たくさんの人たちの働きとたくさんのエピソードがあるのです。
2015年、東京都現代美術館では開館20周年を記念して、
収蔵作品を中心とした特別企画が行われましたが、
なかでも
「コレクション・ビカミング」として収蔵作品の収集・保存・公開に焦点を当てた回は、
特に大きな関心を持っていただきギャラリーツアーも盛り上がりました。
惜しいことにこの展示を見逃した方に!
そして美術館で働くことを目指している方に!
そしてそして今年の美術検定に向けて勉強中の方に。
美術館学芸員の汗と涙を知っていただきたい!!
なんといってもコミックエッセイだから楽しいです!
プロフィール/アートナビゲーター試験という名称だった2005年に1級を取得。現在は東京都現代美術館を中心に活動中。現代アートを知るには、アートに偏ることなく現代社会の出来事、動きに関心を持つことが欠かせない、と実感しています。それはどの時代の芸術も同じでしょう。もし苦手な分野があったら、まずその時代の空気のようなものがつかめると、ぐっと理解が深まるかもしれませんね。