レゴ®ブロックは、デンマークに本社をもつレゴ社が販売している知育玩具で、60年以上の長い歴史があります。
レゴ®ブロックに興味をもったのは、自分の子供がレゴ®ブロックに夢中である、というのも一因ですが、昨年の2017年にレゴ®シリアスプレイ®(詳細はこちらのリンクをご参照下さい→
http://www.seriousplay.jp/)という、対話を通して自分の考えを言語化する手法と出会ったことです。レゴ®ブロックがもつ作る楽しみと、レゴ®ブロック作品への問いかけによる対話により、自分が無意識に表現したことを言語化していきます。この手法が、特に個人的にも興味のある対話を通しての美術鑑賞の際に、誰もが見慣れた作品のちょっとした再発見や、抽象画や社会問題に言及した美術作品の鑑賞後うまく言い表せない気持ちを言語化することに役立つのでは、と感じました。そこで、このレゴ®シリアスプレイ®と美術鑑賞を併せ持ったワークショップを考案してみました。
そして、今回そのワークショップの実践の場として、早稲田大学資格ゲッターズの学生さんと美術検定1級を取得したアートナビゲーター数名の方に参加いただき実施しました。
ワークショップの説明をする東さん。参加者はレゴ®ブロックで思い思いに自分の考えを表現した。(写真提供=(C)日本の資格・検定) ワークショップでは、レゴ®ブロックを使った自己紹介のあと、オーギュスト・ロダン《考える人》を題材に、「彫刻の人物が次に何をしようと考えているのか」というテーマで、レゴ®ブロックによる作品を作っていただきました。ロダンの《考える人》は、だれもが目にしたことがある一方で、ポーズが分かりやすいためその内容まで踏み込むことがほとんどない、ということから、今回題材として取り上げました。
結果として、身近な日常の問題から、普段感じている社会課題をとりあげた人、なかにはそもそも《考える人》は考えていないのではないのでは、という人まで、レゴ®ブロックでさまざまな形態が作られ、自分の考えを表現されてました。どれが正解ということではなく、参加者の多様な考えを受け入れられる、違いを楽しむ場が生まれたと感じました。
『参加者が短時間でアヒルをつくり、全員が違っていることからその違いや多様性を楽しむ』 この手法は、本年1月26日にDNP大日本印刷で行われたシンポジウム、
「日本・フィンランド2つのアートプロジェクト - アートが私達にもたらしてくるもの」で、慶應義塾大学准教授の川畑秀明氏が発表された、「内省型の絵画鑑賞の効果」にも通じるものがあるように思いました。「内省型の絵画鑑賞の効果」というのは、絵画を見てどんな気持ちになったか、またどうしてそのようなきもちになったかという気持ちに注目するものです。
現在川畑先生は、大日本印刷のDNPミュージアムラボ、フィンランドのアテネウム美術館と共同で、対話を通じて鑑賞する方法が高齢者に対して有効かどうかが研究されている、ということですが、レゴ®ブロックを使ったワークショップでも、高齢者をはじめ様々な世代に「内省型の絵画鑑賞の効果」をもたらすことができるのではないかと思っています。
これから、いろいろな場所や作品でこのワークショップを実施して広げていきたいと考えています。またこちらのブログでもその様子をレポートさせていただければと思います。
追記・今回DNP大日本印刷で行われたシンポジウムは、2016年11月6日に開催された
「ミュージアムの幸せ効果-美術鑑賞の可能性から考える」の第二弾で、当ブログにもレポートがあがっています。
◆シンポジウム「ミュージアムの幸せ効果-美術鑑賞の可能性から考える」レポート
http://bijutsukentei.blog40.fc2.com/blog-entry-224.html
プロフィール
2005年の横浜トリエンナーレで初ボランティア、それ以来、会社員のかたわら都内を中心にガイドやワークショップのお手伝いをしております。休日は二人の子どもとギャラリーや美術館巡りをしながら、コミュニケーション中。