「プラド美術館展」キヤノン・ミュージアム・キャンパス レポート
皆様こんにちは。アートナビゲーターの高村啓子です。
今回は、上野の国立西洋美術館で開催中の「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」関連イベント、キヤノン・ミュージアム・キャンパスでのアートナビゲーターの活動についてレポートさせて頂きます。
今回は、上野の国立西洋美術館で開催中の「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」関連イベント、キヤノン・ミュージアム・キャンパスでのアートナビゲーターの活動についてレポートさせて頂きます。
「大学生のための無料観覧日」キヤノン・ミュージアム・キャンパスは、国立西洋美術館閉館日の月曜日を利用し、4月23日に行われました。本イベントは、大学、大学院、短期大学、専門学校など幅広い学生の方々に、美術を楽しみながらより深く理解して頂くための企画です。同展を特別協賛しているキヤノン株式会社と、国立西洋美術館、読売新聞社との共同で開催されています。今回で8回目のこのイベントに、当日は約1300人もの学生の方々が来館され、美術検定1級を取得したアートナビゲーターが見どころをお伝えするために、1時間に3回、約8分の「ミニ授業」を行ない、また参加者から質問を受け付けたりしました。
「プラド美術館展」には、スペイン王家のコレクションを所蔵するプラド美術館の作品の中から、スペインを代表する画家ベラスケスを含め約70点の作品が来日しています。王家のコレクションは幅広く、ティツィアーノやルーベンス、ヴァン・ダイク、ヤン・ブリューゲル、風景画で有名なクロード・ロランなどの作品が、「芸術」「知識」「神話」「宮廷」「風景」「静物」「宗教」「芸術理論」の8つの分野に分けられて展示されています。その中の5つのエリアに、午前午後合わせて20名のアートナビゲーターが2人ずつ配置され、交代で解説をしました。
ベラスケスは、宮廷画家として王家の絶対的信頼を得て、多くの肖像画や日常的な宮廷の様子を描いていますが、人間の本質、人間の尊厳を描いているような不思議な魅力をたたえています。膨大な絵画をコレクションしたフェリペ4世や、カルロス王太子の凛々しい佇まい、彫刻家や哲学者、軍神マルス、使用人などの個性豊かな風貌、ベラスケスの家族を重ね合わせたとされている穏やかな聖家族…ベラスケスの時代から200年後に活躍した印象派の巨匠マネは、ベラスケスを「画家の中の画家」として崇拝し、印象派の画家達は輪郭をはっきりと描かないベラスケスの筆致から学んだとされています。また、20世紀の画家、サルヴァドール・ダリやフランシス・ベーコンも、ベラスケスの絵をモチーフとした作品を描いているほど、後々の画家に影響を与えています。
この王家のコレクションを代表する作品の魅力を多くの方々に感じ理解して頂くために、アートナビゲーターは事前に展覧会を鑑賞し、本や資料に目を通して、自分の担当するエリアでのアプローチの仕方を準備しました。アートナビゲーター同士での本の紹介や、疑問点についての話し合いなど、事前準備は当日まで尽きることはありません。このような準備を経て、一人一人が熱意を持って学生の方々と触れ合っているのです。
アートナビゲーターが展示のガイドを始める声かけをすると、聞きたい学生が集まってきました。近くに寄って熱心にメモを取る学生も見受けられましたが、椅子に座ってリラックスしながら、或いは他の絵を見ながら、など20~30人位の方々が自由な雰囲気でガイドに耳を傾けていました。学生の方々からは、「すいていたので、とても見やすかった」「ガイドの話を聞いて、こういう見方があるのか、と思った」「短い時間でのガイドだったけど、内容が充実していた」「自分に知識があまりないので、いろいろな話を聞くことによって、よりイメージを掴むことができた」「スペイン美術に興味があるので、ゼミの勉強のためにきた」などの声を聞くことが出来ました。社会人学生の年配の方に話を伺うと、「放送大学で美術や歴史を勉強したので興味を持った」「プラド美術館へ行った時によくわからなかったことが、ガイドによってよくわかった」とのことでした。
アートナビゲーターからは、「何回ガイドをやっても緊張しますが、熱心に聞いて下さるのでやりがいがありました」「今回は若い人達に馴染みにくい時代の作品が多いので、作品との距離感を感じさせないため、自分達の世界に引き寄せるようなトークが必要だと思った。例えば、飾れるサイズですよね、とか、聖家族の絵画がベラスケスの家族写真である、というような」といった意見がありました。確かに、学生の方々に馴染みのある印象派の作品より200年も前の時代の絵画です。参加された学生の方々からは、楽しかったという声を多数頂きましたので、ベラスケスという画家について少し理解を深めて頂けたのではないかと思いました。
アートナビゲーターは、これからも作品と鑑賞者の出会いの瞬間に立ち合い、その架け橋となるような活動をしていきたいと願っています。

午前午後と「プラド美術館展」の見どころをガイド下さったアートナビゲーターの皆さん、ありがとうございました!
(写真提供=キヤノン株式会社)
※「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」は国立西洋美術館で5月27日(日)まで、その後兵庫県立美術館で6月13日(水)より開催いたします。どうぞお見逃しなく!
展覧会公式サイト:http://prado2018.yomiuri.co.jp
展覧会公式Twitter:https://twitter.com/prado_2018
プロフィール/2013年に美術検定1級取得。東京都写真美術館で、ワークショップやスクールプログラムのボランティアとして活動しています。
「プラド美術館展」には、スペイン王家のコレクションを所蔵するプラド美術館の作品の中から、スペインを代表する画家ベラスケスを含め約70点の作品が来日しています。王家のコレクションは幅広く、ティツィアーノやルーベンス、ヴァン・ダイク、ヤン・ブリューゲル、風景画で有名なクロード・ロランなどの作品が、「芸術」「知識」「神話」「宮廷」「風景」「静物」「宗教」「芸術理論」の8つの分野に分けられて展示されています。その中の5つのエリアに、午前午後合わせて20名のアートナビゲーターが2人ずつ配置され、交代で解説をしました。
ベラスケスは、宮廷画家として王家の絶対的信頼を得て、多くの肖像画や日常的な宮廷の様子を描いていますが、人間の本質、人間の尊厳を描いているような不思議な魅力をたたえています。膨大な絵画をコレクションしたフェリペ4世や、カルロス王太子の凛々しい佇まい、彫刻家や哲学者、軍神マルス、使用人などの個性豊かな風貌、ベラスケスの家族を重ね合わせたとされている穏やかな聖家族…ベラスケスの時代から200年後に活躍した印象派の巨匠マネは、ベラスケスを「画家の中の画家」として崇拝し、印象派の画家達は輪郭をはっきりと描かないベラスケスの筆致から学んだとされています。また、20世紀の画家、サルヴァドール・ダリやフランシス・ベーコンも、ベラスケスの絵をモチーフとした作品を描いているほど、後々の画家に影響を与えています。
この王家のコレクションを代表する作品の魅力を多くの方々に感じ理解して頂くために、アートナビゲーターは事前に展覧会を鑑賞し、本や資料に目を通して、自分の担当するエリアでのアプローチの仕方を準備しました。アートナビゲーター同士での本の紹介や、疑問点についての話し合いなど、事前準備は当日まで尽きることはありません。このような準備を経て、一人一人が熱意を持って学生の方々と触れ合っているのです。
アートナビゲーターが展示のガイドを始める声かけをすると、聞きたい学生が集まってきました。近くに寄って熱心にメモを取る学生も見受けられましたが、椅子に座ってリラックスしながら、或いは他の絵を見ながら、など20~30人位の方々が自由な雰囲気でガイドに耳を傾けていました。学生の方々からは、「すいていたので、とても見やすかった」「ガイドの話を聞いて、こういう見方があるのか、と思った」「短い時間でのガイドだったけど、内容が充実していた」「自分に知識があまりないので、いろいろな話を聞くことによって、よりイメージを掴むことができた」「スペイン美術に興味があるので、ゼミの勉強のためにきた」などの声を聞くことが出来ました。社会人学生の年配の方に話を伺うと、「放送大学で美術や歴史を勉強したので興味を持った」「プラド美術館へ行った時によくわからなかったことが、ガイドによってよくわかった」とのことでした。
アートナビゲーターからは、「何回ガイドをやっても緊張しますが、熱心に聞いて下さるのでやりがいがありました」「今回は若い人達に馴染みにくい時代の作品が多いので、作品との距離感を感じさせないため、自分達の世界に引き寄せるようなトークが必要だと思った。例えば、飾れるサイズですよね、とか、聖家族の絵画がベラスケスの家族写真である、というような」といった意見がありました。確かに、学生の方々に馴染みのある印象派の作品より200年も前の時代の絵画です。参加された学生の方々からは、楽しかったという声を多数頂きましたので、ベラスケスという画家について少し理解を深めて頂けたのではないかと思いました。
アートナビゲーターは、これからも作品と鑑賞者の出会いの瞬間に立ち合い、その架け橋となるような活動をしていきたいと願っています。


午前午後と「プラド美術館展」の見どころをガイド下さったアートナビゲーターの皆さん、ありがとうございました!
(写真提供=キヤノン株式会社)
※「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」は国立西洋美術館で5月27日(日)まで、その後兵庫県立美術館で6月13日(水)より開催いたします。どうぞお見逃しなく!
展覧会公式サイト:http://prado2018.yomiuri.co.jp
展覧会公式Twitter:https://twitter.com/prado_2018

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