アートナビゲーター・美術館コレクションレポート「本郷新記念札幌彫刻美術館」
こんにちは。札幌在住の高橋です。今回は本郷新記念 札幌彫刻美術館をご案内します。
札幌市中央区宮の森という、閑静な住宅地に道をはさんでたたずむ瀟洒な二つの建物(本館・記念館)は、北海道で初めて彫刻に特化した美術館として、1981年に開館しました。2007年には、札幌彫刻美術館から本郷新記念 札幌彫刻美術館と改名したことからもわかる通り、戦後日本を代表する彫刻家・本郷新の彫刻、絵画など1800点余りのコレクションを有しています。
本郷新記念 札幌彫刻美術館・記念館の外観
上遠野徹設計の記念館は、もともと本郷新のアトリエでした。東京を拠点に活動していた本郷が、1977年に生地である札幌に建てた邸宅です。美術館の建つ宮の森は、現在は札幌でも屈指の高級住宅地ですが、建設当時まだ住宅はまばら…眺望の良いアトリエ・ギャラリーは本郷にとっても自慢で、家族や親しい友人と過ごす時間はかけがえのないものでした。本郷の没後、札幌市が遺族から譲り受け、様々な視点から本郷新の芸術を見ることができるように常設展示を行っています。

コレクション展「本郷新、その生涯と作品」開催中の記念館2階
記念館では現在コレクション展「本郷新、その生涯と作品」が開催されています(2019年3月31日まで)。1905年札幌市に生まれ、東京高等工芸学校(現千葉大工学部)に学び、国画会、新制作派協会で活躍、全国80か所にも及ぶモニュメンタルな野外彫刻を残し、74歳で亡くなった本郷新の魅力あふれる生涯と作品をコンパクトにまとめたものです。本郷新入門編ともいえる展示作品の中には、数々の話題を残した戦没学生記念碑《わだつみの声》のエスキースも見られます。(本作は本館の庭にあります・後述)
記念館の1階には、野外彫刻の石膏原型が並んでいます。屋外のブロンズ像ではその大きさを実感することはありませんが、室内で間近に見るとその迫力に圧倒されます。これらの原型は、死後鋳造が可能な彫刻家にとって守られるべき、貴重な遺産です。

記念館1階の展示風景
記念館2階には、札幌市が一望できる大きな窓が広がります。一般的な美術館では外光は作品を傷めるものとして極力さえぎられますが、この眺めは開放的なアトリエならではのものです。

記念館2階からの眺望
2017年12月から、記念館に図書コーナーが設けられました。私の所属する札幌彫刻美術館友の会では、3000冊に及ぶ蔵書の整理と、図書コーナー利用者の見守りのボランティアを始めました。のんびりと我が家の書斎のように美術書を眺め、くつろげる時間を来館者と共有するのが楽しみです。整理中の蔵書や、本郷新が書き溜めた新聞記事などの貴重な資料を、誰もが自由に利用できるようにという美術館の目標と、美術館を道内の野外彫刻の戸籍管理をする場にという友の会の願いが一体となって、プロジェクトが進み始めました。

記念館の図書コーナー
田上義也設計の本館は、「わたくしをのりこえてゆく若い芸術家の育成のために」と、生前から若手育成の願いを語っていた本郷の遺志を継ぎ、優れた彫刻芸術にふれられる場として完成しました。フランク・ロイド・ライトに師事した田上義也の設計も見どころで、複数の箱を組み合わせた外観、高低差のある5つの展示室など個性的な美術館は本郷の力強い作品と響き合うものです。
本郷が44歳の時に手がけた《わだつみの声》が出迎えてくれる本館で開催される企画展は、彫刻や立体造形を中心としています。

本館の外観
現在は、3年に1度公募により授与される本郷新記念札幌彫刻賞の受賞者・加藤宏子さんの個展が開催中です(6月17日まで)。和紙の原料・こうぞを素材とした立体作品は生命感にあふれています。

加藤宏子展の風景
本郷新へのオマージュを感じられる作品(improvisation ⅩⅩⅩⅣ)が伸びて、制作中の本郷新の写真へとつながる展示も迫力あるものとなっています。本郷新記念札幌彫刻賞の前身である本郷新賞は、15回にわたり全国のパブリックアートに対して授与され、その受賞者は現在も活躍中のそうそうたる顔ぶれです。

作品《improvisation ⅩⅩⅩⅣ》の表側と裏側
地方の個人作家の美術館が拠点となって、彫刻・立体造形という芸術に多くの人が親しんでもらえるよう、小さな美術館だからこそ来館者を大事に、そんなアットホームな美術館をぜひ訪れてみてください。
■本郷新記念 札幌彫刻美術館
〒064-0954 北海道札幌市中央区宮の森4条12丁目
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
TEL:011-642-5709
http://www.hongoshin-smos.jp/
プロフィール
札幌在住のアートナビゲーター1期生です。北海道立近代美術館をサポートする(一社)北海道美術館協力会のボランティアとして活動する傍ら、札幌彫刻美術館友の会に所属。個人でも日生セミナーや月1回の美術サロンなどで、学芸員さんとは違い、専門的な美術教育を受けていない素人の目を大事に美術鑑賞の楽しみをお伝えしています。上京した折に、美術館の梯子をすることとアートナビゲーター仲間との美術談義が自分へのご褒美です。

本郷新記念 札幌彫刻美術館・記念館の外観
上遠野徹設計の記念館は、もともと本郷新のアトリエでした。東京を拠点に活動していた本郷が、1977年に生地である札幌に建てた邸宅です。美術館の建つ宮の森は、現在は札幌でも屈指の高級住宅地ですが、建設当時まだ住宅はまばら…眺望の良いアトリエ・ギャラリーは本郷にとっても自慢で、家族や親しい友人と過ごす時間はかけがえのないものでした。本郷の没後、札幌市が遺族から譲り受け、様々な視点から本郷新の芸術を見ることができるように常設展示を行っています。

コレクション展「本郷新、その生涯と作品」開催中の記念館2階
記念館では現在コレクション展「本郷新、その生涯と作品」が開催されています(2019年3月31日まで)。1905年札幌市に生まれ、東京高等工芸学校(現千葉大工学部)に学び、国画会、新制作派協会で活躍、全国80か所にも及ぶモニュメンタルな野外彫刻を残し、74歳で亡くなった本郷新の魅力あふれる生涯と作品をコンパクトにまとめたものです。本郷新入門編ともいえる展示作品の中には、数々の話題を残した戦没学生記念碑《わだつみの声》のエスキースも見られます。(本作は本館の庭にあります・後述)
記念館の1階には、野外彫刻の石膏原型が並んでいます。屋外のブロンズ像ではその大きさを実感することはありませんが、室内で間近に見るとその迫力に圧倒されます。これらの原型は、死後鋳造が可能な彫刻家にとって守られるべき、貴重な遺産です。

記念館1階の展示風景
記念館2階には、札幌市が一望できる大きな窓が広がります。一般的な美術館では外光は作品を傷めるものとして極力さえぎられますが、この眺めは開放的なアトリエならではのものです。


記念館2階からの眺望
2017年12月から、記念館に図書コーナーが設けられました。私の所属する札幌彫刻美術館友の会では、3000冊に及ぶ蔵書の整理と、図書コーナー利用者の見守りのボランティアを始めました。のんびりと我が家の書斎のように美術書を眺め、くつろげる時間を来館者と共有するのが楽しみです。整理中の蔵書や、本郷新が書き溜めた新聞記事などの貴重な資料を、誰もが自由に利用できるようにという美術館の目標と、美術館を道内の野外彫刻の戸籍管理をする場にという友の会の願いが一体となって、プロジェクトが進み始めました。


記念館の図書コーナー
田上義也設計の本館は、「わたくしをのりこえてゆく若い芸術家の育成のために」と、生前から若手育成の願いを語っていた本郷の遺志を継ぎ、優れた彫刻芸術にふれられる場として完成しました。フランク・ロイド・ライトに師事した田上義也の設計も見どころで、複数の箱を組み合わせた外観、高低差のある5つの展示室など個性的な美術館は本郷の力強い作品と響き合うものです。
本郷が44歳の時に手がけた《わだつみの声》が出迎えてくれる本館で開催される企画展は、彫刻や立体造形を中心としています。

本館の外観
現在は、3年に1度公募により授与される本郷新記念札幌彫刻賞の受賞者・加藤宏子さんの個展が開催中です(6月17日まで)。和紙の原料・こうぞを素材とした立体作品は生命感にあふれています。

加藤宏子展の風景
本郷新へのオマージュを感じられる作品(improvisation ⅩⅩⅩⅣ)が伸びて、制作中の本郷新の写真へとつながる展示も迫力あるものとなっています。本郷新記念札幌彫刻賞の前身である本郷新賞は、15回にわたり全国のパブリックアートに対して授与され、その受賞者は現在も活躍中のそうそうたる顔ぶれです。


作品《improvisation ⅩⅩⅩⅣ》の表側と裏側
地方の個人作家の美術館が拠点となって、彫刻・立体造形という芸術に多くの人が親しんでもらえるよう、小さな美術館だからこそ来館者を大事に、そんなアットホームな美術館をぜひ訪れてみてください。
■本郷新記念 札幌彫刻美術館
〒064-0954 北海道札幌市中央区宮の森4条12丁目
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
TEL:011-642-5709
http://www.hongoshin-smos.jp/

札幌在住のアートナビゲーター1期生です。北海道立近代美術館をサポートする(一社)北海道美術館協力会のボランティアとして活動する傍ら、札幌彫刻美術館友の会に所属。個人でも日生セミナーや月1回の美術サロンなどで、学芸員さんとは違い、専門的な美術教育を受けていない素人の目を大事に美術鑑賞の楽しみをお伝えしています。上京した折に、美術館の梯子をすることとアートナビゲーター仲間との美術談義が自分へのご褒美です。
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