アートナビゲーター・美術館コレクションレポート「福岡市美術館」
福岡市美術館は福岡の中心部、天神から地下鉄で2駅、最寄りの「大濠公園」駅からは徒歩約10分という、大変便利な位置にあります。以前この地域には福岡城があったことから、城址跡や濠、現在は日本庭園や能楽堂もあり、散策やジョギング、ヨガを楽しむ人達や、訪日観光客で賑わっています。
そんな大きな公園と池の側に建つ福岡市美術館は、1979年に建築家・前川國男の設計によって建てられました。煉瓦色の外観が特徴で、重厚ながらも周囲の緑や池とも合う造りです。
開館以来、国内外・時代を問わず常に革新的な取り組みや美術展を開催してきました。日本初公開の作家や作品展も多く、ここで初めて巨匠の絵や彫刻にふれたり、小学校や中学校の美術の時間に鑑賞として訪れた思い出のある福岡市民も多くいます。
美術館自慢のコレクションは、大きく分けて20世紀以降の近現代美術、江戸時代以前の古美術があり、ダリ、ミロ、ウォーホル、バスキア、藤田嗣治などの世界的巨匠から、佐伯祐三、松本俊介、村山槐太、イヴ・クライン、デルヴォーまで、そう「美術検定」のテキストに出てくるような作家の作品もずらりとあるのです。
また九州の美術館として、東光院仏教美術や、旧福岡藩黒田家所蔵資料、松永コレクションとして有名な松永安左エ門の茶道具などの保護・展示にも、開館当初から取り組んでいます。これまで何度も訪れましたが、16000点を超えるコレクションは定期的な入れ替えがあり、いつ行っても何かしら新しい作品・懐かしい作品に出会うことが出来ます。
長年福岡のアート発信地として重要な役割担ってきましたが、老朽化に伴い2016年から改装工事のため休館、2019今年3月にリニューアルオープンしました。改装後の外観はほぼ以前のままで、煉瓦色の外観と草間彌生の作品《南瓜》が出迎えてくれます。しかし、より開かれた美術館としての造りが強化され、別のエントランスには大きなスロープが整備され、隣接する公園からは車椅子でもベビーカーでも入場がとてもスムーズになりました。

美術館入口では草間彌生の作品が出迎えてくれる。スロープも設置され、よりバリアフリーになった
新しくなった展示室は解放感が増し、作品との距離がより近くなっていて、中には作品の間を歩けるようなものまであります。現代アートの見せ方もバージョンアップされていて、紀元前約5000年から現在まで、長い美術の歴史を一度に楽しめます。
私は以前からこの美術館のキャプションが好きで、他の美術館に比べて表現や言葉の使い方が柔らかく、より親近感の湧くコメントだと思っていました。改装後はより自由度が高くなっていて、真面目な話から作品の背景の裏話や、個人の想いなどなど、学芸員さん達の作品への愛に溢れています。
また、小さな鑑賞者達の育成にも熱心です。「美術作品はなにで出来ているの?」「どうやって美術館にきたの?」といった子ども達の好奇心をくすぐるような導入から、大人が読んでも楽しいキャプションまで、年齢を問わずに楽しめる空間が広がっています。

子どもだけでなく大人が読んでも楽しく分かりやすいキャプション
館内にはそれぞれレストランとカフェが一ヶ所ずつあり、どちらも福岡の老舗ホテルニューオータニが運営しています。カフェではボサノバ調の音楽が流れ、ゆったりした雰囲気の中でお茶の時間を過ごせます。外にはテラス席もあり、休憩中の鑑賞者だけでなく、地元の住人らしきご夫婦やベビーカーを押したお母さん達で賑わっていました。

ミュージアムカフェ「アクアム」
この日鑑賞を終えてカフェで特製シュークリーム(抹茶パウダーがほんのり香ばしい大濠シュー)と紅茶で休息していると、すぐ近くには鑑賞でインスピレーションを受けたのか、葉書サイズの画用紙にペンを走らせる若い女性がいました。「私も今の感動を描いて表現したい!しかし道具を忘れた!」という方、ご安心ください。カフェの前にあるミュージアムショップでは、少し画材も取り扱っています。

大濠公園の新緑をイメージしたシューと、画材も取り扱うミュージアムショップ
五感だけでなくインスピレーションまでそっとサポートしてくれる福岡市美術館は、誰でも気軽に立ち寄りやすい開かれた空間です。ぜひ一度訪れてみて下さい。
■福岡市美術館
〒810-0051 福岡県福岡市中央区大濠公園1-6
開館時間 午前9時30分~午後5時30分、7~10月の金・土曜日は午後8時まで開館 (入館は閉館30分前まで)
休館日 月曜日(祝日除く)、祝日の翌日、12月28日~1月4日
入館料 [コレクション・企画展] 一般200円、高・大生150円、中学生以下無料
[特別展] 展覧会ごとに異なる
TEL 092-714-6051(代表)
URL https://www.fukuoka-art-museum.jp/
プロフィール
小さい頃から好きだった美術を体系的に学びたくて美術検定を受験。検定の勉強のおかげで、虫食い状態だった知識がなんとなく1本の線になりました。2009年1級取得。
そんな大きな公園と池の側に建つ福岡市美術館は、1979年に建築家・前川國男の設計によって建てられました。煉瓦色の外観が特徴で、重厚ながらも周囲の緑や池とも合う造りです。
開館以来、国内外・時代を問わず常に革新的な取り組みや美術展を開催してきました。日本初公開の作家や作品展も多く、ここで初めて巨匠の絵や彫刻にふれたり、小学校や中学校の美術の時間に鑑賞として訪れた思い出のある福岡市民も多くいます。
美術館自慢のコレクションは、大きく分けて20世紀以降の近現代美術、江戸時代以前の古美術があり、ダリ、ミロ、ウォーホル、バスキア、藤田嗣治などの世界的巨匠から、佐伯祐三、松本俊介、村山槐太、イヴ・クライン、デルヴォーまで、そう「美術検定」のテキストに出てくるような作家の作品もずらりとあるのです。
また九州の美術館として、東光院仏教美術や、旧福岡藩黒田家所蔵資料、松永コレクションとして有名な松永安左エ門の茶道具などの保護・展示にも、開館当初から取り組んでいます。これまで何度も訪れましたが、16000点を超えるコレクションは定期的な入れ替えがあり、いつ行っても何かしら新しい作品・懐かしい作品に出会うことが出来ます。
長年福岡のアート発信地として重要な役割担ってきましたが、老朽化に伴い2016年から改装工事のため休館、2019今年3月にリニューアルオープンしました。改装後の外観はほぼ以前のままで、煉瓦色の外観と草間彌生の作品《南瓜》が出迎えてくれます。しかし、より開かれた美術館としての造りが強化され、別のエントランスには大きなスロープが整備され、隣接する公園からは車椅子でもベビーカーでも入場がとてもスムーズになりました。


美術館入口では草間彌生の作品が出迎えてくれる。スロープも設置され、よりバリアフリーになった
新しくなった展示室は解放感が増し、作品との距離がより近くなっていて、中には作品の間を歩けるようなものまであります。現代アートの見せ方もバージョンアップされていて、紀元前約5000年から現在まで、長い美術の歴史を一度に楽しめます。
私は以前からこの美術館のキャプションが好きで、他の美術館に比べて表現や言葉の使い方が柔らかく、より親近感の湧くコメントだと思っていました。改装後はより自由度が高くなっていて、真面目な話から作品の背景の裏話や、個人の想いなどなど、学芸員さん達の作品への愛に溢れています。
また、小さな鑑賞者達の育成にも熱心です。「美術作品はなにで出来ているの?」「どうやって美術館にきたの?」といった子ども達の好奇心をくすぐるような導入から、大人が読んでも楽しいキャプションまで、年齢を問わずに楽しめる空間が広がっています。


子どもだけでなく大人が読んでも楽しく分かりやすいキャプション
館内にはそれぞれレストランとカフェが一ヶ所ずつあり、どちらも福岡の老舗ホテルニューオータニが運営しています。カフェではボサノバ調の音楽が流れ、ゆったりした雰囲気の中でお茶の時間を過ごせます。外にはテラス席もあり、休憩中の鑑賞者だけでなく、地元の住人らしきご夫婦やベビーカーを押したお母さん達で賑わっていました。

ミュージアムカフェ「アクアム」
この日鑑賞を終えてカフェで特製シュークリーム(抹茶パウダーがほんのり香ばしい大濠シュー)と紅茶で休息していると、すぐ近くには鑑賞でインスピレーションを受けたのか、葉書サイズの画用紙にペンを走らせる若い女性がいました。「私も今の感動を描いて表現したい!しかし道具を忘れた!」という方、ご安心ください。カフェの前にあるミュージアムショップでは、少し画材も取り扱っています。


大濠公園の新緑をイメージしたシューと、画材も取り扱うミュージアムショップ
五感だけでなくインスピレーションまでそっとサポートしてくれる福岡市美術館は、誰でも気軽に立ち寄りやすい開かれた空間です。ぜひ一度訪れてみて下さい。
■福岡市美術館
〒810-0051 福岡県福岡市中央区大濠公園1-6
開館時間 午前9時30分~午後5時30分、7~10月の金・土曜日は午後8時まで開館 (入館は閉館30分前まで)
休館日 月曜日(祝日除く)、祝日の翌日、12月28日~1月4日
入館料 [コレクション・企画展] 一般200円、高・大生150円、中学生以下無料
[特別展] 展覧会ごとに異なる
TEL 092-714-6051(代表)
URL https://www.fukuoka-art-museum.jp/

小さい頃から好きだった美術を体系的に学びたくて美術検定を受験。検定の勉強のおかげで、虫食い状態だった知識がなんとなく1本の線になりました。2009年1級取得。
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