国際的なコンサルティング企業
デロイト トーマツと、ヴィジュアル・コミュニケーション事業を切り拓いた
株式会社アマナの共催で開かれた「
Art & Financeセミナー2019」は、日本で初めてアートビジネスの最前線を紹介するシンポジウムでした。日本は国の経済規模や年間の美術館入館者数から考えると、信じられないくらい小規模なアート市場しかありません。現在、アジアでアート市場を牽引するのは、中国と香港です。これについては、以前から語られてきたことですので、ご存じの方も多いでしょう。
今回のシンポジウムは、とくに超富裕層へアクセスしたい企業や事業体に向けた、アート市場のトレンドや分析、日本の位置、提案、そしてアートの可能性を伝えるものだったと思われます。ただ、最終セッションのパネル・ディスカッションでは、株式会社アマナの上坂真人氏(同社執行役員・プランニング担当)から、非常に明快な「アートとビジネス」という言葉の整理、企業がアートを事業に活用するための指針例が提示されました。上坂氏からは、「ほかのとらえ方や考え方も当然あるはず。これらは精査したものではなく、議論の余地があるもので、あくまでも指針の1つになれば」との前置きがありました。
■「アートとビジネス」なる言葉
(上坂氏の講演より)■企業がアートを活用する「目的」と「手段」の組み合わせ
(引用:上坂氏の発表資料 2019.12.10)この整理の中に“アート・シンキング”が入っていないのは、その思考そのものは重要ではあるものの、今、企業などが必要としているのは、行動を起こすための道筋をわかりやすくすることという判断からのようでした。また、大手企業の場合は、トップにこそ、“アート・シンキング”が必要との厳しい言葉もありました。
ここ数年、「アートとビジネス」という言葉が、まるで流行のように語られるようになってきましたが、話し手によってその言葉が意味する文脈は大きく異なります。アートとお仕事を結びつけたいと考える方への小さなヒントになれば幸いです。
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「アート・シンキング」についてもさまざまな解釈があります。上坂氏は以下の2冊を参考書籍と例示されました。
ご興味のある方は、読んでみてください。
●ニール・ヒンディ著『
世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること』(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
●岡崎大輔著『
なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?』(SBクリエイティブ 2018年)
国際的なアート市場の動向に興味のある方への参考リンク
●デロイト トーマツ『
Art & Finance Report 2019』(日本語ダイジェスト版)
(文=本ブログ編集 染谷ヒロコ)