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美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

「美術検定」のオフィシャルブログです。

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W検定を極めたアートナビゲーターに教わる「合格の極意」

こんにちは。「美術検定」事務局です。
相変わらず残暑が厳しい日々ですが、11月の「美術検定」試験まであと2ヵ月弱となりました。そこで、今回は先輩アートナビゲーターさんたちからのエールとして「合格までの極意」をお届けしたいと思います。

ご登場のお2人は、「美術検定」1級のみならず、「江戸文化歴史検定」1級あるいは「世界遺産検定」のマイスターも合格という方々。創意工夫にあふれた受験勉強の方法から、貴重な1級受験対策、W検定を極めるメリットまで個性豊かにご紹介くださっています。

「江戸文化歴史検定」「世界遺産検定」のいずれも、勉強すると美術の世界までググっと広がる検定です。


■「江戸文化歴史検定」も極めた落合さんからのエール

「検定」はまず「楽しんでやりましょう!
人生の楽しみ方を拡げたい方に「美術検定」は最適です。しかし試験であることも事実ですから「順調に段階を踏んで、早く合格し、自分が学びたい分野を磨く」方法を考えてみましょう。

1 テキストは最重視!
→問題が確実にでるのですから全て覚える程の情熱を!

2 過去問は必ずやっておく
→問題のスタイルに自分をなじませます。


[テキストは3回読む]

①1回目は「流す程度でわからないところは飛ばして早く読む」

②2回目は「精読」自分の弱いところを発見することに主眼をおく
私の場合はキリスト教絵画でした。昔フィレンツェにいった時も彫刻と建築しか見なかった覚えがあります。

③3回目は2で見つけた不得意分野を副読本などで強化していきます。

[ノートのとりかた]

①初めからノートは絶対とらない
「精読」が終わった時点ですでにわかっていることと、中途半端なものと、全くわからないものに分別できますから、後者のみを対象として勉強していきます。

②ノートは書き込める余裕をもってつくる
勉強する、同好の志ができると知識が飛躍的に増えていきます。私はA4ノートの見開き左側にのみ重要点(ルネッサンスなら定義、派、主要芸術家、その作品など)を箇条書きで書込み、右ページは「関連事項、フレーズなどを短文」で書き留める。定義とフレーズは1級論文対策に使えます。単に検定対策ではない、一生もののノートにしたいですね!

③ノートはつくらないのも「テ」
矛盾しているようですが、ノートを作るには時間と労力がいります。これに力を取られてテキスト等がおろそかになってしまうことが一番怖い。ではどうするか? テキストの余白に直接書き込んでいきましょう。別名「一冊(一殺)主義」。仕事をもっている方にお勧め!

[過去問のやり方(短答式)]

①まずとにかくやってみる

②結果を4つのグループに分ける
  a.選択肢全ての正誤が分かるもの
  b.正解とおもわれる選択肢が二つまでに絞れるもの
  c.正解はわかったが、その他の選択肢にわからないものがあったもの
  d.全く知らなかったもの


③aはもうやらない、c.bの順で勉強の重点をおきます、dはその後丸暗記

[過去問のやり方(記述式)]

①過去問を時間以内(自分で短答との時間の割振りを決めて)に必ず書いてみる

②予想問題を考えて書いてみる

③作品の鑑賞比較対策として時代、派の定義、その代表作家、作品を覚えておく


●2級対策で有意義だった副読本
カラー版 西洋美術史 WHO'S WHO』(美術出版社刊、1996年)
バラバラにしてアトランダムに通勤途中、絵を見て作家、作品名が分かるようにしていました

●1級対策で有意義だった副読本
絵でわかるアートのコトバ』(美術出版社刊、2011年)
定義をまとめるのに役に立ちます(私の受験時にはまだ出版されていませんでしたが)

20世紀の美術と思想』(美術出版社刊、2002年)
一歩進んだ記述対策に最適


「江戸文化歴史検定」×「美術検定」
勉強方法については全く同じです。基本書重視。「江戸文化歴史検定」の場合、基本書籍以外の知識が勝負になるわけですが、幅広い分野での江戸を知らねばなりません。正直いうと「みんなが知らないことも私は知っている」という自信がありましたが、1回目の1級検定受験では公式テキストをおろそかにして、同書に記述がありながら迷った10問をすべて落としたのが敗因でした。翌年は公式テキスト重視の原点に帰り楽勝でした。

続けて翌年から「美術検定」の受験をしようと思っていたので、「江戸文化歴史検定」での美術関係知識はそのまま利用できました。初めて学ぶ現代アートも興味がありましたし、すんなり入れたように思います。ただ西洋美術となると「キリスト教的教養」がわずかしかありませんでしたので、本来知りたかった「何故、こんな絵がうまれたのか?」という疑問に沈黙しながら学ばねばならなかったのは残念でした。

現在は近世から中世を学び、「こうした作品は何故うまれたのか?」という疑問に派生して仏教、儒教、道教、現代思想を学んでいます。3年以内に国立東京博物館のすべての展示品について解説できるレベルにもっていきたいと思っています。このため西洋美術を学べるのはその後からかな?

極意というほどのものではありませんが「すべて関連することに興味を持つこと(必ずテキスト以外の点数アップにつながります)、疑問は常に持ち、いつか答に逢える(憧れの君に)と確信すること」でしょうかね?
自分の築きあげてきた経験と興味が点数の底上げにつながる、と言えるかもしれません。

江戸文化歴史検定
第7回試験日 2012年10月28日(日)
お申し込み期間 10月14日(日)まで


プロフィール/落合信一
幼少時より江戸文化や美術に興味を持ち、父親の本棚をあさっては「幡隋院長兵衛ってだれ?かぶき者ってなに?」「なんでこんな絵があるのだろう?」といった疑問といつか学んでみたいという気持ちを持ち続けていました。本屋で『第1回 江戸文化歴史検定テキスト』に出会い、2006年に2級、2008年に1級合格。江戸美術を知るうちに現代美術も知りたいと「美術検定」にも挑戦。2009年2級、2010年に1級合格。
歴史に興味のある方向けのウォーキングガイドを務めたり、若い人たちに日本文化を知ってもらいたく「日本庭園と歴史散歩」を開催。現在は「3年間で1000冊読破(実際は6割読めれば大満足)」の目標をクリアすべく、対外活動は休止中。



*****

■「世界遺産検定」も極めた尾崎さんからのエール

私の場合は、1級に合格したといっても、神頼みの効果と、記述式問題のテーマが草間彌生というたまたま知っているアーティストだった、という情けない理由で、他の方々同様に語れるかどうかは、実に怪しいところです。
ただ、私も曲がりなりにも1級を受験したので、

「穴埋め問題で時間とられないようにね」

ということは言えます。私がそうでしたから。
当初は穴埋め問題を15分で突破して、あとは論文に全力投球するはずでしたが、やはり30分かかりました。15分は無理があります。

とはいえ、穴埋め問題はそれ相応に1級の出題のウェートを占めるので、決しておろそかにしてはいけない、というのが私の偽らざる感想です。もちろん美術史の知識は必要ですが、そういう問題は既に2級で出題済、というのが当時の出題者の意図するところだったようです。穴埋め問題は、むしろ時事的な問題が多かった気がします。

[1級対策]
受験当時は、穴埋め問題は時事的な問題が多かったので、『美術手帖』とか『芸術新潮』みたいなアート雑誌を読みこなす実力が求められたように思います。あと新聞の文化面には熱心に目を通してください。けっこうな美術評が載っている場合もありますし、アートに関する情報が得られることもありますから。私見ですが、新聞記事の文章は論文試験にも参考になりますから、よく読んでおくとよいと思います。書くときのお手本になるんです。
ちなみに、1級合格後は、私も文化面に目を通すことが多くなりました。
あとは美術アカデミー&スクールの「1級対策講座」を受講しました。

[2級対策]
私の場合は、『公式テキスト』と指定の参考書籍、『練習問題』とで乗り切りました。人にもよりけりですが、基本的には特別な受験勉強をしなくても合格は可能だということです。

ただし、これは「あくまで基本的に」です。私も苦手分野克服のために、参考書籍以外にも本を読んでいまして。現代美術が苦手でしたので、たまたま出た新書を2冊を読みました。苦手ジャンルについては、指定の書籍と練習問題集以外の何かを読んだ方がいい場合もあるかと思います。

[おまけ]
これは2級と1級の試験対策に言えますが、
「著作権に関する文献を必ず読んでおくこと」。

2級と1級の穴埋め問題では、著作権に関する出題が必ずあります。とはいえそんなに難しい法律書を読む必要はなく、各社の新書から著作権に関するものが出ていますから、それで十分でしょう。私の場合は、そういう本を読まずに受験したので、著作権には苦戦した、という感じです。

3級は、指定の参考書と練習問題集で十分、ではないかと思います。
ただ、どうせだったら、「2級との併願をおすすめします」というのが私の思うところ。さすがに1級となると、無責任に受験をすすめるにはちょっと、というところですが、2級をすすめるのは、美術鑑賞を楽しむには、2級程度の知識があった方がいいように思うからです。ほら、よく英検でも「履歴書に書くのなら最低でも2級は」と言うでしょう? あんな感じですよ。

[受験勉強期間]
私の経験ですと、
「それは公式の関連書籍と練習問題集が出そろってからでいいと思いますよ」
ということになります。つまり7月の下旬あたりから。
もちろん、それまでは、美術にまったく無関心でいていい、というわけではありませんが、公式の受験勉強というのは、そのあたりの時期からでいいと思います。私も2度目の2級と1級はそうでした。

7月下旬の参考書と練習問題集が出そろう時期から受験日までに、関連書籍と練習問題集を3回読むことができたら、それでひと通りの知識は得られると思います。3回読めれば十分でしょう。

それから、精神論になるというご批判もあるでしょうが、私の場合は、特に「世界遺産検定」マイスター資格と「美術検定」1級受験時は、自分のピークを試験日の試験開始時間に持っていくことにも注意を払いました。よく、オリンピックの選手が、決勝戦の日時にピークが最高になるように持っていく、というのがあるでしょう? 検定試験にも同じことが言えるのです。
なのでツイッターに、「美術検定1級受験まであと何日」というカウントダウン書き込みを、試験の5週間前から毎日していました。

[受験テクニック]
出題問題が2種類ある2級、1級となると、どちらから先に、と迷われる方も多いかと思います。 私は穴埋め問題から解答を始めました。こちらが得意ジャンルだったから、ということもありますが、2級はともかく、1級の場合は論文がありますから、先に論文という手順は、まずおすすめしません。穴埋め問題を手早く片付けてからの方がいいでしょう。

論文はかなり時間をとります。90分という試験時間で、穴埋め問題と論文の2種類の試験を終わらせるのは、相当きついです。制限時間120分という、世界遺産検定マイスター資格の試験の受験経験が私にはあるので、なおのことそう思います。実際1級の試験は、私の場合、まず論文試験の出題内容をチェックして、それから穴埋め問題、そして論文、という順序で進めました。

また、どの級の試験でも言えることですが、「余白のように最後の10分を余らせるくらいで、試験を進める」ことは大切かと思います。万が一の、たとえば、名前の記入忘れ的なトラブルも試験にはつきものですから、そういうことに対処するためにも、最後の10分を残しておくことは必要でしょう。


「世界遺産検定」×「美術検定」
私の場合、2008年から2つの検定を並行して受験し始めました。まず「美術検定」受験希望者を奈落の底に突き落とすことから先に申し上げますと、美術の世界は、海よりも広く、深いので、受験勉強は大変です、というのが正直なところ。いちばん勉強したのは2級です。出題範囲が広く、指定の参考書籍も半端なく多いのです。1級は受験勉強より、日頃の美術への素養がものをいうと思います。一方、「世界遺産検定」は、登録物件は今年の時点で962件しかありません。範囲が限られているので、美術検定より楽勝です。

ただ、世界遺産はその大半が海外にあるので、本物を見ようと思うと大変ですが、アートの世界はけっこう身近なところで楽しめます。それを思うと、「世界遺産検定」よりは楽勝です。

そして、受験経験から確実に言えることは、「美術検定受験に、年齢はまったく関係ありません」ということです。
私は学校で体系的に美術の勉強をしていたわけでもなく、美術の仕事についていたわけでもない。体系的に美術の勉強を始めたのは41才。「美術検定」の受験勉強がその始まりです。つまりそれまでは、客として美術展に行くことはあっても、お勉強として美術に接することはなく、よくまあ1級までたどり着けたと思います。ただ、客としては美術展に行っていた、ということが、今日の私の強みになったかもしれません。そう、受験に年齢を気にする必要はまったくない。むしろ、年齢を重ねることで分かるようになることが、美術の世界には多いかもしれない、と私などは思うのです。

私が2つの検定でいちばん上の級を極められたのは、最初に受けた「世界遺産検定」の3級と2級の受験以外は、はなからいちばん上の級狙いだった、ということではないか、と振り返ります。途中の級は、あくまで頂上への通過点だと思って受けたのがよかったのかもしれません。オリンピックでいうなら、まだ自分の実力が伴わないころから金メダル狙いだったわけです。

「美術検定」と「世界遺産検定」は、文化財保護とか、美術史、建築史とかで共通する箇所があります。両方受験すると相乗効果が期待できるのではないか、というのが、実際この2つの試験で頂点を極めた私の実感です。掛け持ち受験は、意外におすすめです。

最後に当たり前のことかもしれませんが、美術展の類には、機会と時間の許す限りジャンルを問わず足を運ぼうと申し上げたく。ジャンルを問わず、というのが特に重要ではないでしょうか。それに、どんな駄作でも、美術の世界は本物を見てなんぼ、だと思うのです。


世界遺産検定
第12回試験日 2012年12月9日(日)
お申し込み期間 11月7日(水)18:00まで


プロフィール/尾崎一史
2008年に「世界遺産検定」「美術検定」2級・3級を受験。前者はどちらも合格し、翌年最高峰のマイスター資格に合格。後者は3級のみ合格し、翌年2級合格、2010年に1級合格、アートナビゲーターへ。この2つの資格を足場に、文化ジャーナリスト・ペンネーム尾崎圭として現在自身のブログを中心に活動中。「美術検定」は2008年7月に国立新美術館で開催していた展覧会の折に手にしたチラシで知りました。たまたま「世界遺産検定」で高得点を得られたので、もしかしたら、と1ヵ月間の猛勉強。この時の3級合格は奇跡的だと思っています。

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