ちょっとためになる美術鑑賞会〜高齢者との美術鑑賞〜
こんにちは、アートナビゲーターの長谷部です。
私は「高齢者の美術鑑賞」というテーマでシニアの美術鑑賞会を定期的に主催しています。
今回は7月24日に実施した東京・京橋にあるブリヂストン美術館「ドビュッシー、音楽と美術~印象派と象徴派のあいだで~」展の鑑賞会をレポートします。
私は「高齢者の美術鑑賞」というテーマでシニアの美術鑑賞会を定期的に主催しています。
今回は7月24日に実施した東京・京橋にあるブリヂストン美術館「ドビュッシー、音楽と美術~印象派と象徴派のあいだで~」展の鑑賞会をレポートします。

会場に到着後、入り口前で独自に用意した資料(右図)を参照しながら展覧会の概要や見所を簡単に解説し、各自での自由鑑賞後に、事前に美術館学芸員の方にお願いをしておいたスライド解説も実施いたしました。
今回の企画展は、ドビュッシー生誕150年を記念し、オルセー美術館、オランジェリー美術館との共同企画で、絵画と音楽、文学等の芸術家同士がジャンルを超えて互いに響き合えた時代だからこそ生まれた叙情豊かな芸術作品を、楽譜やオペラの舞台写真等と見比べながら鑑賞するちょっと贅沢な企画でした。逆に鑑賞範囲等が美術作品以外にも広がり、ちょっと戸惑われた方もおられたようですが、ご自身がドビュッシーになったつもりで作品を鑑賞したり、音声ガイドでドビュッシーの音楽を聴きながらお楽しみいただくなど日頃見慣れた美術展とは違う見方もできたようで、最後にはほぼ全員の方から時間の過ぎることを忘れるほど楽しかったとのご感想をいただきました。
最近ご高齢者の美術愛好熱は高まる一方で、美術館側もシニア割引を導入する等、美術館来館者に占めるシニアの割合は急増しているようです。TV番組でも美術展を取り上げた番組は高視聴率らしく、団塊世代にも人気があるようです。ただ学習意欲旺盛なシニアの方の場合、作品を「観る」よりも解説を「読むこと、聞く」こと、すなわち「学ぶ」鑑賞に偏りがちで、情報を受け取るだけの鑑賞に終始してしまうことが懸念されます。私個人としては、絵画と向き合った時に生まれる様々な想い、各自の感性を大切にしたいと考えますので、鑑賞会での解説は、必要最低限にし、旬な話題を1つだけ盛り込むように工夫しています。今回の企画のように絵画を「音楽家ドビュッシー」で魅せるちょっとひねったテーマでしたが、「感じる」ことの楽しさを再認識していただけたようでした。
また、ご高齢の方には、体力面でのハンディがあり、さほど広くない会場でも途中で休憩をとらないと見学しきれない方や周囲への注意力が緩慢な方もおられます。途中の休憩所やベンチが設置されていても、場所が分かりにくい場合や、展示を鑑賞する順序が複雑で迷ってしまう場合もあります。今回の展示会場も美術館の配布資料に記載されている部屋の番号と実際の部屋番号とが一部一致せず迷われた方や、最後の頁に会場案内図が掲載されていて残念に感じたとの指摘もありました。アンリー=エドモン・クロスの「黄金の島」は「パリ展で一番人気だったので、特別に演出して展示」したそうでしたが、会場が混雑時にはわかりにくく、見逃ししてしまった方もおられたようでした。
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美術館が用意する解説も用語が難しかったり、文章が長すぎたりすると、美術史的には当たり前でもご高齢者には伝わりにくい場合も散見されます。私自身は説明に際しては、日常使い慣れている言葉で必要最低限のポイントに絞った解説をと心がけています。例えば「象徴主義」の画家を説明するなら、目に見えるモノを信じないで創造力を駆使し、精神世界を描いたとか、物質社会への反動から生まれた神秘性や装飾性等を日本の時代背景と比較する等、まずご自身でイメージしていただける程度のより具体的な言葉に置き換えて説明しています。もちろん、私見であることを前提にお話しさせていただきますが……。


現在はシニアのグループの方との美術鑑賞会を企画し、月1回程度の割合で、都内の美術館をご案内しています。美術作品を通して、色々な世代の方と過ごす貴重な、しかも楽しい時間を過ごさせていただいております。
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