「まちなかアートギャラリー福岡2012」レポート
「世界で最も住みやすい25の都市ランキング」で今年12位に選ばれた福岡市は、ここ数年アートに関する大小さまざまな展示やイベントが増えてきています。
今年で3回目となる現代アートの公募展「まちなかアートギャラリー福岡2012(略称:MAG)」もその一つで、同市の二大商業地(博多駅・天神)の間に7組のアーティストによる作品が展示されています。
今回のテーマは「変化」、なかなか面白そうなテーマに惹かれて行ってきました。
今日はその中から2作品紹介します。
まずは「博多祇園山笠」で有名な川端にあるコンヴァージョンビルの冷泉荘へ。ここでは韓国出身の作家、カン・ヒランのインスタレーションが展示されています。
室内に展示された作品は全てキャンヴァスです。キャンヴァスを重ねたり破ったりして、キャンヴァスそのものを作品としています。
たまたま他に人がいなかったこともあり、静寂の中で作品と対面していると、破れ目や繊維それぞれに表情があることに気付きます。繊維の束がふわふわしていて暖かく包まれるような感覚になる作品もあり、今まで全く気付くことも考えることも無かったキャンヴァスの新たな表情に出会えたのです。

カン・ヒラン インスタレーション風景。右は作品のクローズアップ
普段は美術作品の裏方を担うキャンヴァスの意地を見たような瞬間でした。この感覚を忘れたくないなと思いながら次の作品へ。
今は廃校となっている小学校の靴箱に佇む古木のような作品は、古賀義浩による彫刻。自然に出来たもののように見えるこれらの彫刻は、セメントを静かに重ねて創られたものだそうです。
「今も時々作家が来て制作を続けているんですよ」と、会場にいた優しい目のお姉さんが教えてくれました。MAGが開幕してすぐに台風16号が九州に接近した際には、作品の一部が強風により折れてしまったそうなのですが、それも含めて作品は成長を続けています。学校としての役割を終えた一角で成長していく作品は、永遠に刻を止めた場所と時間を重ねて変化するものという時間の対比が、言葉では表現しがたい深さを確かに考えさせてくれるものでした。

古賀義浩 公開制作による彫刻。右は作品のクローズアップ
今日は2作品のみの紹介でしたが、MAGの期間中、街中ではほかの作品にも出会えますし、週末には公開制作やワークショップも開かれています。
*****
福岡は昨年から、九州新幹線の全面開通や福岡空港の新規路線就航、市内の商業ビルのオープンなど大きな出来事がたくさん起きています。そんな中、一見気付きにくい小さな変化も日々無数に起きているはずです。そういったささやかな変化にも気付くことができたら、ただでさえ楽しい街はもっと楽しい街になるでしょう。
この催し物は、現代アートに関心がない方でも変化に気付くきっかけになるような気がします。
歩きやすい靴とMAGの地図、そして一緒に「変化」を探したい誰かがいたらその人を誘ってお出かけしましょう。会期は10月8日までです。
プロフィール
小さい頃から好きだった美術を体系的に学びたくて美術検定を受験。検定の勉強のおかげで虫食い状態だった知識がなんとなく1本の線になりました。2009年1級取得。
普段は特別な活動をしていないペーパーナビゲーターですが、旅行に行く知人友人に「これを見ないと絶対損する!美術館・作品リスト」と勝手に作成&配布しています。
今年で3回目となる現代アートの公募展「まちなかアートギャラリー福岡2012(略称:MAG)」もその一つで、同市の二大商業地(博多駅・天神)の間に7組のアーティストによる作品が展示されています。
今回のテーマは「変化」、なかなか面白そうなテーマに惹かれて行ってきました。
今日はその中から2作品紹介します。

室内に展示された作品は全てキャンヴァスです。キャンヴァスを重ねたり破ったりして、キャンヴァスそのものを作品としています。
たまたま他に人がいなかったこともあり、静寂の中で作品と対面していると、破れ目や繊維それぞれに表情があることに気付きます。繊維の束がふわふわしていて暖かく包まれるような感覚になる作品もあり、今まで全く気付くことも考えることも無かったキャンヴァスの新たな表情に出会えたのです。


カン・ヒラン インスタレーション風景。右は作品のクローズアップ
普段は美術作品の裏方を担うキャンヴァスの意地を見たような瞬間でした。この感覚を忘れたくないなと思いながら次の作品へ。

「今も時々作家が来て制作を続けているんですよ」と、会場にいた優しい目のお姉さんが教えてくれました。MAGが開幕してすぐに台風16号が九州に接近した際には、作品の一部が強風により折れてしまったそうなのですが、それも含めて作品は成長を続けています。学校としての役割を終えた一角で成長していく作品は、永遠に刻を止めた場所と時間を重ねて変化するものという時間の対比が、言葉では表現しがたい深さを確かに考えさせてくれるものでした。


古賀義浩 公開制作による彫刻。右は作品のクローズアップ
今日は2作品のみの紹介でしたが、MAGの期間中、街中ではほかの作品にも出会えますし、週末には公開制作やワークショップも開かれています。
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この催し物は、現代アートに関心がない方でも変化に気付くきっかけになるような気がします。
歩きやすい靴とMAGの地図、そして一緒に「変化」を探したい誰かがいたらその人を誘ってお出かけしましょう。会期は10月8日までです。

小さい頃から好きだった美術を体系的に学びたくて美術検定を受験。検定の勉強のおかげで虫食い状態だった知識がなんとなく1本の線になりました。2009年1級取得。
普段は特別な活動をしていないペーパーナビゲーターですが、旅行に行く知人友人に「これを見ないと絶対損する!美術館・作品リスト」と勝手に作成&配布しています。