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美術の知識と鑑賞〜番外編「美術検定直前!新傾向問題とは何か?(1)」

こんにちは。美術検定事務局です。
今回は、受験されるみなさん必読!の内容をお送りします。
今年の「美術検定」から出題されることになった「新傾向問題」について、検定監修のお一人、奥村高明先生(聖徳大学教授)が解説をしてくださいました。


新傾向問題が今年から加わる。受験予定者のみなさんは、すでに問題集などで見ていることと思う。戸惑われているのではないかとも思う。そこで、今年から加わる新傾向問題とは何かについて検討したい。それは同時に、美術の知識と美術鑑賞について考えることにもなるだろう。

具体的に話を進めたいので、これまでの問題と新傾向問題を比較してみよう。用いるのは『4級美術検定速習ブック&練習問題』(美術出版社刊)である。p90のQ88と、p104のQ4を取り上げる。


p90ではQ88番は、「燕子花図屏風」を示したうえで次のように問う。

Q 右の図は、『伊勢物語』に基づいた「燕子花図屏風」です。この屏風の作者はだれでしょうか。

1. 尾形乾山
2. 尾形光琳
3. 俵屋宗達
4. 円山応挙

1005_88画像はクリックで拡大

正解は「尾形光琳」だから、作品=作家名という1対1対応である。回答者は、その人の頭の中の「作品名の箱」と「作家名の箱」を照らし合わせればいい。また、図が出ずに「燕子花図屏風」という作品名だけでもこの問題は成り立っている。受験者はともかく作品と作品名を覚える、描いた作家を覚える。この単純記憶によって成り立っている問題である。実のところ、これまでのほとんどの問題は1対1対応であった。もちろん、この1対1は知識にとって大事な仕組みで、まず欠かせないし、そもそも覚えることは面白いことだ。昨年受けた本学の学生がそうだった。知識が増えていく気持ち、頭の中がつながっていく感覚は楽しいと言っていた。


ところが、新傾向問題はそうはいかない。次にp104のQ4を見てみよう。

Q 屏風絵を特集した展覧会を訪れたAさんは、作品をみて、気が付いたことや解説パネルの内容の一部をメモに取りました。下のメモは次のどの作品について書いたものでしょうか。

語群は
A) 江戸時代につくられた
B) 背景は金1色で平面的になっている
C) ものの形を縁取る輪郭線はほとんど目立たない
D) 型紙を使って同じ形を繰り返しているようにみえるところがある

そして、1.「風神雷神図屏風」 2.「燕子花図屏風」 3.「夏秋草図屏風」という作者や時代の違う屏風作品が3つならんでいる。ただし作品名は示されていない。

1005_4画像はクリックで拡大

すると、回答者は、この4つの条件と、3つの絵を照合する必要がでる。1対1ではない。複数の知識を組み合わせて検討することが要求される。これが特徴的である。

次に、先ほどの問題のように、作品を見なくてもすむということは絶対ない。絵を見ないと答えられない。例えば、「Aは3つの絵に全て当てはまる…、Bについては…」というわけだ。これは同時に、元の絵にあたっておかねばならないことも要求する。なぜならB「背景は金1色で平面的になっている」という問題では、画像の色の記憶が必要である。問題文は白黒で分からなくなっているが、「夏秋草図屏風」の背景は銀だ。Cの輪郭線についての知識もそうだ。小さい画像ではほとんど分からない。文章的知識としては知っていても画像として理解しておく必要がある。

さらに、Dについては「燕子花図屏風」がそうだと言われているし、現物をみてもそうだなと思えるところも見つかるが、では他の作品が絶対型紙を使ってないかというとそれは分からない。現在はそうかもしれないが、これから新しい研究成果が出るかもしれない。先日も以前から「モナ・リザ」と同じ構図の絵で、レオナルド・ダ・ヴィンチ作ではないとされていた絵が、若いダ・ヴィンチが描いたものだという研究成果が発表された。「絶対そう」ではなく、「現在、比較的そう」言われているというのが知識の性質だ。この問題の場合、あくまでAさんのメモであり、仮の状況である。その仮の状況の中で、もっとも適切だといえることを問うている。その中で示された複数の知識を活用して問題をとくことになる。

*****

比較した結果をまとめると、新傾向問題には次のような特徴が浮かび上がる。

・ 1対1ではなく、複数の知識を組み合わせて検討することを要求する
・ 単純記憶ではなく、問題文や絵を見ることによって答える仕組みになっている
・ 問題集だけでなく、元の絵にあたっておく、展覧会にいくなど美術的な活動が必要になる
・ 仮の状況下に回答者は投げ込まれ、そこで示された複数の知識を活用して問題をとくことになる


このような作業の結果、総合すれば、「燕子花図屏風」が最も妥当という解答を導き出せることになる。逆に言えば、新傾向問題は、時代、社会背景、作家、作品、関連的な知識などを総合して問題が作成されているといえよう。今回、回答者に求められているのは、単純な1対1知識ではない。知識を状況に応じて活用することが求められているといいえるかもしれない。

次回は、ここで取り上げなかった問題をもとに、もう少し、詳しくみていこうと思う。


奥村高明(おくむら・たかあき)
聖徳大学 児童学部 児童学科教授 芸術学博士(筑波大学)
小中学校教諭、宮崎県立美術館学芸員、文部科学省教科調査官を経て2011年4月より現職に着任。
近著は『子どもの絵の見方―子どもの世界を鑑賞するまなざし』(東洋館出版社)、翻訳監修に『美術館活用術 鑑賞教育の手引き ロンドン・テートギャラリー編』(美術出版社)など。




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