美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

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受験の合間に息抜きアートBOOKS

こんにちは、アートナビゲーターの杉山です。
今回は気軽に好きなところ・気になるところを拾い読みしながら楽しめる、しかも美術検定にも役に立つ!(かもしれない)本をご紹介させていただきます。


では、早速、本の紹介に移りましょう。

◆『深読みアート美術館』 ロバート・カミング著/六曜社

15年くらい前に流行った『新解さんの謎』(赤瀬川源平著/文春文庫)という本をご存知でしょうか? あまりに人間的すぎて、時には迷走気味な語釈や用例が満載な『新明解国語辞典』を、一部のファンは 愛着を込めて “新解さん”と呼ぶらしいのですが、その魅力を初めて紹介した本で、当時ベストセラーになりました。
ご存じない方は、試しにWebで「新解さん 恋愛」「新解さん 動物園」などで検索してみてください。きっと呆気にとられます。

…さて前置きが長くなりましたが、アート版「新解さん」といっても過言ではないのが、この『深読みアート美術館』。いちおう事典なのですが、あらゆる解説が徹底して「オレ様目線」なのです。

たとえばセザンヌについては「彼の絵画は並外れた力を持っているので、見るものは、まるで彼自身の目で絵を見ているような気持ちになる」、ティツィアーノについては「人物のいる空間には、無言のメッセージが満ち溢れている」など、著者の気に入ったアーティストは褒めちぎりまくり。
一方で、ラウシェンバーグのことを「この時期の作品は大げさで独創性に乏しく、人間味がない」だの、喜多川歌麿は「自堕落な生活のせいで、作品の質は悪化していった」だの言いたい放題。デミアン・ハーストに至っては「芸術家として、人格として、彼はおそらく自己破壊型の人間なのだろう」と人格攻撃です。ひどい。

印象が薄くてどーしても覚えられない! というあのアーティストも、ひとたびこの事典でひけば、一生忘れられない人物になるかもしれません。


◆『巨匠に学ぶ 構図の基本』『巨匠に学ぶ 配色の基本
内田広由紀著/視覚デザイン研究所

今夏、12年ぶりに来日したフェルメールの 「真珠の耳飾りの少女」、またの名を「青いターバンの少女」とも呼ばれていますが。もしこの絵が「黄色いターバンの少女」だったら、果たして作品の印象はどう変わるでしょうか?

答を言ってしまいますと、全体的にのっぺりした感じの絵になっちゃいます。

衣服も髪飾りも黄系で、さらには顔の肌色も黄系ですので、ターバンまで黄色にすると、背景以外は真っ黄色な画面になってしまうんです。逆に言えば、静かでクールな「ターバンの青」で少女の表情を引き締め、眼差しを印象づけるために、周囲を青の補色にちかい黄色で固めていると言えます。

本書では、巨匠の作品をちょっといじって、いじる前の元の作品と見比べることによって、様々な構図や配色のテクニックとその効果を体験的に学べるようになっています。先ほどの例についても、ターバン青バージョン/黄バージョンを掲載していますので、実際にどのように見え方が変わるか、気になる方は確認してみてはいかがでしょうか。

ところで1級の論述試験、一昨年までは「ワークショップなどの企画力」を問うような問題が比較的多かったのですが、昨年はがらりと傾向が変わり、「作品の鑑賞のポイントをわかりやすく論理的に伝える能力」を問うような問題が出ました。本書をさらっと読んで絵の鑑賞のしかたを訓練しておけば、論述にちょっとは役に立つ……かも知れないです (今年もまた傾向が変わってしまったら、ごめんなさい)。

あと、これは個人的な経験ですが。友達とかと美術館に行ったとき、コマゴマした美術史のウンチクを垂れるよりも、むしろ構図や配色でなんちゃって解説をしてケムに巻くほうが感心されたりもしますので、そういう使い方もお勧めです(それでいいのかアートナビゲーター!)。


【おまけ】
美術検定には全く役に立ちませんが、気晴らしとしてこんな本もいかがでしょうか。
駄美術ギャラリー』 現代美術二等兵 著/マガジンハウス

これはWebサイトの「駄美術手帖」のコーナー、「月刊駄美術図鑑」で紹介されてる作品の傑作選?です。
サイト見るだけで、十分お腹いっぱいかも知れませんが……。


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プロフィール
絵が好きだったことから「美術検定」に興味を持ち、2011年に1級合格、アートナビゲーターへ。
1級の記述問題のコツをたまに聞かれるのですが、まず「わかりやすく書く」というのが大切だと思います。昨年の採点ポイントにも「2)過剰な修飾語を使用していないか。」と書かれていますので。また、いきなり思いつくままに書き始めるのはNGで、5分ほどかけて全体構成をメモにまとめると良いです。書くべきことを最初に決めておけば、迷いなく筆をすすめられますし、文章ボリュームの調整もしやすいと思います。

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