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「発見!美術館の楽しみ方」~札幌編~

こんにちは、札幌在住アートナビゲーターの高橋です。
今回は、4月12日に実施しました北海道のニッセイセミナーでの活動を報告します。


0520_seminer今回は主催者(日本生命)との打ち合わせで「発見!美術館の楽しみ方」と題し、日頃、美術館とはあまり縁のない方を対象とした内容とすることになりました。50名募集のところ、140名の応募者があり、予定していた倍の広さの会議室でパワーポイントを使ってお話させていただいたのです。
セミナーでは、参加者の皆さんが美術館を楽しめるようになる方法を7つの章立てにして紹介しました。



第1章「なぜ美術館は敷居が高いのか?」

監視員さんの目が厳しいのは、実はコレクション(美術館の収蔵品のこと)のほとんどに保険は掛けられていないから・・・これだけでも参加者は『へぇ~~』。北海道立近代美術館での最高価格を誇るのはシャガールの《パリの空に花》。この作品はなんと3億5千万円もするのです。だから汚されたり破られてはたまりません。でも、「北海道民の財産です。大威張りで預けている絵を見に、いつでも美術館へ行きましょう。」と呼びかけました。



第2章「どっちが見たい?」

この章では、作品のテーマにまつわるちょっとしたエピソードを知ることで、作品に興味が湧くきっかけになることを体験してもらいました。

たとえば、ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》と《聖ヒエロニムス》、あるいはゴッホの《ひまわり》と《花咲くアーモンドの木》。

さて、あなたならどちらが見たいですか?

誰でも知っている有名な絵を見たいと思うのは当然でしょう。しかし、聖ヒエロニムスが助けたライオンと常に一緒にいることや、ゴッホに甥が生まれた時のお祝いに描いたのがこのアーモンドの花というエピソードをご紹介すると、参加者にその絵を見てみたいという気持ちが生まれたようです。美術館に行くときは少しだけ予習をしていくことが楽しみにもつながる証拠です。



第3章「超簡単西洋美術史」
第4章「日本画豆知識」


この二つの章は第2章の「少しでも絵のことを知っていると美術館に行くのが楽しくなる」を前提に、美術館に行くための予習時間としました。
聖ヒエロニムスの描かれた宗教画を何枚かお見せすると参加者はすかさず《聖ヒエロニムス》と覚えたての名前を言ってくれます。このように印象派以前の絵画では、図像学と呼ばれる絵の中でのお約束事を知っているのといないのとでは大違いです。日本画では、屏風の数え方など豆知識から興味を持っていただくのが良いと、私の好きな速水御舟の《翠苔緑芝》を例に挙げてみました。4曲1双のこの作品は右隻の1匹の黒猫と左隻の2匹の白ウサギなど対比も面白く、日本画ならではの余白の美しさを説明するにもうってつけの作品です。

0520_gyoshu 速水御舟《翠苔緑芝》
(山種美術館蔵。セミナーのチラシより転載)




第5章「美術館のすみわけについて」

北海道内には道立美術館が5か所ありますが、それぞれに札幌(北海道立近代美術館)=エコール・ド・パリ、旭川(道立旭川美術館)=木彫、函館(道立函館美術館)=書道作品、帯広(道立帯広美術館)=プリントアート、釧路(道立釧路芸術館)=写真とコレクションに特徴を持たせていることを例に挙げ、ひとくちに美術館といってもすべて同じではないというお話をしました。

また、三岸好太郎美術館のような一人の作家の作品を集めた「個人美術館」の楽しみ方もご紹介。個人美術館を夫婦それぞれに持つのは三岸好太郎・節子夫妻だけというのも道民として誇らしいことです。

全国各地にある個人美術館の中で私のおすすめ、丸亀市猪熊玄一郎現代美術館 ―140名の参加者で知っている人はさすがにあまりいないけれど― を紹介。「猪熊玄一郎の作品を絶対に皆さんは見たことがあります。そうあの三越の包装紙です。」と前置きして《華ひらく》という題名をご紹介するとこの日一番の「へぇ~~」が聞けました。


第6章「オマケで楽しむ美術館」

ここでは、ミュージアムショップでのショッピングの楽しみもまた、美術館に行く楽しみの1つとして紹介しました。私が買うのを楽しみしているのがバッグと図録。ほんの一部ですが参加者にお見せしました。図録も、持ち帰るときは重くても、中に詰まった情報はあとできっと役に立つもの、画集を買うよりは安上がりです。

0520_bags 私の美術館バッグ・コレクションの一部。
左からミロ、モディリアニ、《翠苔緑芝》の黒猫、長谷川等伯展の《猿猴図》。


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また、北海道立近代美術館で5月14日に開催予定のワークショップをお知らせしました。このように、美術館は作品を見る以外にもオマケがたくさんで、いろいろな楽しみ方があることを発見してもらいました。



今回はもの作りのワークショップを企画してみました。
美術館で展覧会を見る以外の楽しみも見つけてもらえると嬉しいですね。



第7章「黄金の都 シカン展の見どころ」

昨夏より、国立科学博物館を皮切りに全国を巡回中の展覧会「インカ帝国のルーツ 黄金の都シカン」が最後に札幌に来ました。7章では日本人の考古学者・島田泉氏の功績を作品と共にご紹介。展示の目玉は黄金製の大仮面です。アーモンド形の眼は磨き上げられた琥珀とエメラルドが使われています。近代美術館で、30年にわたる発掘の足跡を映像と共に見られるのは大きな博物館の無い札幌ならではのことです。

0520_ex1 0520_ex2
右は見どころの1つ、《大仮面》。ぜひ近くで本物を見て欲しい作品。


*****


セミナーでは、学芸員さんのような専門家とは違うアートナビゲーターの目で、美術館を楽しんでいただこうと大胆にも1時間半、大汗かきながら、参加者の「へぇ~~」を引き出すために四苦八苦でした。
お陰様で次回6月28日に第2弾開催が決定しました。新たな「へぇ~~」を目的に、構想を練っている最中です。


プロフィール/1998年より北海道立近代美術館を拠点とする(社)北海道美術館協会にてボランティア活動に参加。腕試しとスキルアップを目指して「美術検定」(当時のアートナビゲーター検定)を受験。現在では、アートナビゲーターとして、定期的な美術サロンの開催、美術館連絡協議会主催の展覧会での解説、美術に関するシンポジウムの司会など活動の幅を広げている。

| アートナビゲーター活動記 | 10:59 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

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