五輪の街にアートをたずねて
まいど、あづまでございます。
みなさま、今年の夏はいかがお過ごしでしたか、とあと今年も1ヶ月あまりとなったこの時期に夏休みを振り返るのもなんですが、今回のお題は『五輪でわいたロンドンのアート旅行のレポート』。
オリンピックの熱狂も記憶に新しいロンドンの夏、都市型といわれた今回の五輪、その影響下にあった街のアートシーンはどんな風だったか、が伝われば幸いです。
みなさま、今年の夏はいかがお過ごしでしたか、とあと今年も1ヶ月あまりとなったこの時期に夏休みを振り返るのもなんですが、今回のお題は『五輪でわいたロンドンのアート旅行のレポート』。
オリンピックの熱狂も記憶に新しいロンドンの夏、都市型といわれた今回の五輪、その影響下にあった街のアートシーンはどんな風だったか、が伝われば幸いです。
今夏のロンドンは、London2012というキーワードで、街をあげてのさまざまなイベントが行われていました。オペラや演劇、コンサート、もちろんアートもその重要なひとつ。
今回この旅での一番の驚きは、ターナー賞の受賞アーティストが街にあふれていたことです。いってみればロンドン・アートシーンのフロントランナーたちの作品が、ロンドン中心部の美術館から街角までアート・オランピアのように彩った状況でした。
※ターナー賞=イギリス現代美術の重要な賞で、50歳未満のアーティストに贈られる。詳しくは「ターナー賞」のリンクをご参照ください。
ロンドン・ナショナルギャラリーではクリス・オフィリやマーク・ウォリンジャーが参加した「Metamorphosis: Titian 2012」、ヴィクトリア&アルバート博物館と自然史博物館の間を通るエキシビション・ロードでのトニー・クラッグの彫刻展示(「Tony Cragg at Exhibition Road」)、トレイシー・エミンは地下鉄で配布されている「路線図の表紙」を飾り、そして開会式などオリンピック中継で競技場そばにたつアニッシュ・カプーアによる《オービット》などなど。彼らをはじめ多くのターナー賞作家たちが展示を行っていました。

左/目抜き通りで観光客を魅了する巨大なトニー・クラッグの彫刻たち
右/多くの競技を見守ったアニッシュ・カプーアの《オービット》
今回の旅の目的の一つは、テート・モダンで開催していた、90年代イギリスのアートシーンを牽引したYBAs(Young Brithish Artists)のひとり、「デミアン・ハースト回顧展」を鑑賞することでした。2008年森美術館「英国美術の現代史:ターナー賞のあゆみ」に出品されていた、ホルマリン漬けの牛の作品《母と子、分断されて》を覚えてらっしゃる方もいらっしゃるでしょう。
展覧会はオリンピックを挟んで4/4-9/9の開催で個展としてはテート・モダン始まって以来の動員数「46万人」だったとのことです。
写真/テート・モダンを背にダミアン・ハーストの彫刻
渡英前から美術雑誌などで展覧会レビューなど見てはいましたが、いざ訪れてみるとその迫力に圧倒されました。特に植物園かと思うような熱気のこもった展示室ですぐ目の前をひらひらと舞う多くの蝶たちに、普段は意識しないあふれんばかりの『生』を感じました。一方で蝶を使った作品が美術館らしい温度・湿度で展示されていることとのギャップ、ふだんアートをみるときには使わない感覚で『生と死』を感じられたのが印象的でした。
YBAsが集うなか、日本のアーティストの存在感もなかなか。繁華街のショーウィンドウを水玉で満たした草間彌生や、ケンジントン公園内のサーペンタイン・ギャラリーでコンパクトながら近年の作品を一堂に集めたオノ・ヨーコ「TO THE LIGHT」。
写真/10以上のショーウィンドーがクサマワールドに
サーペンタイン・ギャラリーでは、息子がほえられて半べそになった縁から、犬の散歩中の親子とご一緒しました。彼ら曰く「そこのギャラリーでとてもいい展示をしているからのぞいていくといい、知っているかいヨーコ・オノ? 私は何度も散歩中に見たよ」とジャージ姿のままギャラリーへ。自然体でアートとふれあう姿には驚きました。ちなみに4歳児は、微笑の写真を撮る《Smile》や《Play It By Trust》の大きなチェスの駒、「ヨコハマトリエンナーレ2011」で彼自身も体験した迷路の新作《AMAZE》に夢中、《wish tree》にも一生懸命描いた絵をつるしていました。
写真/巨大なチェスは庭に。背景の建物はサーペンタイン・ギャラリー
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もちろん、大英博物館をはじめとした多くのミュージアムは、いつもと変わらぬ圧倒的な古今東西の名作コレクションを展示しています。一方で、この年に人目につくように作品を展示すること――この街を訪れる世界中の多くの人の目に触れること――が持つ意味やその効果を想像するに、五輪が及ぼす影響の大きさを改めて思い知らされます。
例えばトレイシー・エミンの地下鉄路線図は、旅行者が手にとることでロンドンから様々な街や国へ、便利アイテムとしてだけではなく手軽なおみやげとして、彼らの手元に(うちはスクラップブックに)2012年夏の記録として残っていくでしょう。
写真/トレイシー・エミンのドローイングが地下鉄路線図の表紙に!
日本の都市で次回オリンピックが行われたとしたら、どんな展示が美術館・博物館で開催され、どういったアーティストが街に飛び出していくのか、自分なりに想像してみるのも面白いな、と感じました。
プロフィール/美術検定は2003年の3級からスタート、2005-2008年の1級にチャレンジ、4回目にしてアートナビゲーターに。美術館でのガイドやワークショップのお手伝い、4歳児&1歳児とのギャラリー巡りで、いろいろなアートにふれるのを休日の楽しみとしている会社員。そんな日常をtwitter:@az_takahikoでアート情報とあわせて発信しています。
今回この旅での一番の驚きは、ターナー賞の受賞アーティストが街にあふれていたことです。いってみればロンドン・アートシーンのフロントランナーたちの作品が、ロンドン中心部の美術館から街角までアート・オランピアのように彩った状況でした。
※ターナー賞=イギリス現代美術の重要な賞で、50歳未満のアーティストに贈られる。詳しくは「ターナー賞」のリンクをご参照ください。
ロンドン・ナショナルギャラリーではクリス・オフィリやマーク・ウォリンジャーが参加した「Metamorphosis: Titian 2012」、ヴィクトリア&アルバート博物館と自然史博物館の間を通るエキシビション・ロードでのトニー・クラッグの彫刻展示(「Tony Cragg at Exhibition Road」)、トレイシー・エミンは地下鉄で配布されている「路線図の表紙」を飾り、そして開会式などオリンピック中継で競技場そばにたつアニッシュ・カプーアによる《オービット》などなど。彼らをはじめ多くのターナー賞作家たちが展示を行っていました。


左/目抜き通りで観光客を魅了する巨大なトニー・クラッグの彫刻たち
右/多くの競技を見守ったアニッシュ・カプーアの《オービット》

展覧会はオリンピックを挟んで4/4-9/9の開催で個展としてはテート・モダン始まって以来の動員数「46万人」だったとのことです。
写真/テート・モダンを背にダミアン・ハーストの彫刻
渡英前から美術雑誌などで展覧会レビューなど見てはいましたが、いざ訪れてみるとその迫力に圧倒されました。特に植物園かと思うような熱気のこもった展示室ですぐ目の前をひらひらと舞う多くの蝶たちに、普段は意識しないあふれんばかりの『生』を感じました。一方で蝶を使った作品が美術館らしい温度・湿度で展示されていることとのギャップ、ふだんアートをみるときには使わない感覚で『生と死』を感じられたのが印象的でした。

写真/10以上のショーウィンドーがクサマワールドに

写真/巨大なチェスは庭に。背景の建物はサーペンタイン・ギャラリー
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例えばトレイシー・エミンの地下鉄路線図は、旅行者が手にとることでロンドンから様々な街や国へ、便利アイテムとしてだけではなく手軽なおみやげとして、彼らの手元に(うちはスクラップブックに)2012年夏の記録として残っていくでしょう。
写真/トレイシー・エミンのドローイングが地下鉄路線図の表紙に!
日本の都市で次回オリンピックが行われたとしたら、どんな展示が美術館・博物館で開催され、どういったアーティストが街に飛び出していくのか、自分なりに想像してみるのも面白いな、と感じました。
