大和市「対話による美術鑑賞」教育プロジェクト vol.2 〜実践見学レポート〜
こんにちは。「美術検定」事務局です。
今回は、昨年6月にレポートした神奈川県大和市の「対話による美術鑑賞」教育プロジェクトの追っかけ報告です。
このプロジェクトは、美術館を持たない大和市が教育委員会、学校、NPO、そして市民ボランティアとの協働事業です。約8ヵ月間の研修を受けたボランティア「やまとアートシャベル」10名が、2012 年11月29日に学校現場での「対話による美術鑑賞」実践デビューをしました。
今回は、昨年6月にレポートした神奈川県大和市の「対話による美術鑑賞」教育プロジェクトの追っかけ報告です。
このプロジェクトは、美術館を持たない大和市が教育委員会、学校、NPO、そして市民ボランティアとの協働事業です。約8ヵ月間の研修を受けたボランティア「やまとアートシャベル」10名が、2012 年11月29日に学校現場での「対話による美術鑑賞」実践デビューをしました。
教室と美術館で行う鑑賞授業
レポートする鑑賞授業は大和市立渋谷小学校の5年生3クラスの児童を対象としたものです。事前にプロジェクトの講師兼学校とのコーディネーターであるARDA(認定NPO法人 芸術資源開発機構)学校側との調整で、今回の授業は2日間、1日目はクラス毎に教室での鑑賞授業(45分×2時限)、2日目は美術館での鑑賞活動(移動を含め45分×4時限)となっていました。美術館での作品鑑賞は教育委員会と学校からの希望だったそうです。
1日目1時限目:アートカードで遊ぼう!
〜積極的な鑑賞姿勢を生むために
まず先生からの授業スタートの合図から始まり、「やまとアートシャベル」メンバー(鑑賞ボランティア)の自己紹介が行われました。ここでは、メンバーは「シャベラーさん」と呼ばれます。シャベラーは2人1組で1グループ5〜6名の児童を担当し、1人が進行役、1人が補佐役で授業を進めていました。
子どもたちは作品が印刷されたアートカードを使って3つの鑑賞活動をします。ここでは、アートに正解や間違いがないことに気付き、考えたことや感じたことを自由に発言しながら積極的な鑑賞姿勢を育むことが目的とされていました。そのために行われたゲームは次の3種類です。
・「なっとくゲーム」
色や形、モチーフの特徴をとらえ、分類する力を養うゲーム。ルールは、場にあるアートカードと手札のカードをみくらべて共通点を探し、グループ全員が共通点に納得するとそのカードを場に並べ、手札が早くなくなった人が勝つ。
・「物語つくりゲーム」
描かれたものの特徴をとらえ、組み合わせて物語をつくることで想像力や構成力を養う。進行は、1人ずつ3枚のカードをランダムに選び、そこからストーリーを作り、グループメンバーに話す。
・「好きな絵・気になる絵を選ぼう」
カードの中から好きな作品やよくみたい作品を選び、その理由をグループメンバーに説明する(今回は、訪問予定の美術館の収蔵品から18作品のカードを使用)。
→美術館訪問時に作品をみる動機や姿勢をつくるために導入。

左/なっとくゲームで作品の共通点を探している風景 右/物語つくりの風景
シャベラーはゲームの進行のほか、子どもたちが言葉に詰まった時の助け合いや気付きを促す役割を果たします。始めのうちは、こわごわと共通点を探していた子どもたちは、次第に「どんな視点でも大丈夫」「何を言ってもよい」「決まった答えがない」ということに気付きます。さらに、ゲームが進むにつれて、子どもたち同士でヒントを出し合ったり、助け合ったりする光景が見受けられるようになりました。
この授業の最後は先生にバトンタッチ。1枚の作品が電子黒板に投影され、子どもたちはその作品をみて気付いたことをワークシートに記入していました。

左/先生からこの作品についてワークシートへの記入を促される子どもたち 右/ワークシートはクラスごとに異なる仕様。担任の先生がARDA講師と相談して制作したもの ※クリックで拡大
1日目2時限目:みんなで同じ作品をみてお話ししよう
2時限目は、クラス全員またはクラスを半分に分けての作品鑑賞でした。シャベラー1人が鑑賞ファシリテーターとして前に立ち、2作品をVTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)手法で子どもたちとみていきます。
1時限目の最後にみた作品が電子黒板に投影されています。
「この絵を1時間目の終わりに見て、気付いたことをワークシートに書いたよね。今度はみんなで気付いたことを話して行きたいと思います。まずは、この作品をもう1度、よーくみてみよう」というファシリテーターの声掛けから鑑賞が始まりました。しばらく作品を観察した子どもたちに声がかかります(作品はグランマ・モーゼス《古い台所》)。
「この絵の中で何が起こっているかな?気付いたことを言ってみて」
「パーティをしているんだと思う」
「この絵のどこからそう思ったのかな?」
「たくさん人がいるし、テーブルのまわりに椅子がたくさんあって、料理がたくさん並んでるから」
「絵のここと、ここを見てくれたんだね。ほかに気付いたことがある人は?」
「半袖の人がいるから夏じゃないかな」
「この人? 本当だ、半袖の洋服を着ているね。ほかに何か気付いた?」
「家の外だと思う。キャンプかも」
「どこからキャンプだと思ったの?」
といったやりとりが子どもたちとファシリテーターとの間に交わされて行きます。友だちの発言から新たな発見もし始めると、ファシリテーターが声をかけなくとも子どもたちが「私はこう思う」と声を挙げるシーンもたびたびありました。
この日ファシリテーターを務めたシャベラーの1人、守屋さんは、「本当によく絵をみてくれます。最初は目に入った事柄とか人物の特徴を言うんですが、徐々に描かれた人物の人間関係や季節にまで気付きが広がって行きました。子どもによって発見や考えるスピードが早い遅いという差、クラスによって発言の多少の差はありますが、それは気づきや鑑賞の深さにはあまり関係ないと感じます。それよりも、発言しやすい雰囲気作りや発言の誘導の仕方にもっと工夫がいるかなと思いました。多くの実践をして、経験を積んでいきたいです。話を聞くこちらが楽しくなる鑑賞でした」と話してくれました。
子どもたちはグループでの鑑賞後、再び同じ作品についてワークシートに気付いたことや自分が考えた絵の説明などを記入し、この授業は終了となりました。
別のクラスのワークシート ※クリックで拡大
2日目:美術館訪問!作品をみてたくさん話そう!
〜本物をみることで培う鑑賞への積極性
このプロジェクトでは、美術館での作品鑑賞を前提としていません。今回の渋谷小学校では学校からのリクエスト――「子どもたちに本物の作品をみる体験をさせたい、美術館でのマナーを知る機会としたい」――に沿い、美術館での鑑賞をプログラムの中に組み入れたそうです。この時間は、学校側からの希望に加え、鑑賞への積極的主体的な取り組み、本物の作品をみて考え感じたことを言葉などで表現する、作品から自分なりの意味を見いだして言葉にする、ほかの人の意見を聞いて自分の考えを重ねていくといった、1日目からさらに深い鑑賞姿勢を育むことを目的に授業が行われました。
会場となったのは、西新宿にある損保ジャパン東郷青児美術館。電車の遅れもあり、子どもたちの同館滞在時間は約45分程でした。シャベラーからクラスごとにガイダンスを受けた子どもたちは、「なんでもシート」という言葉やスケッチが自由に記入できるワークシートをもって、まずは15分間の自由鑑賞のため、アートカードで決めた好きな作品やよくみたい作品を探して展示室に散りました。2〜3人の友だち同士で作品について話しながらみている子もいます。カードでみた作品を発見するたびに「これみたよね!」「こんな色だったんだ」「ここはみえなかったよね」、と自分たちがカードでみた作品との違いや確認の会話も交わされていました。

左/クラス毎のガイダンス 右/自由鑑賞中の子どもたち
続いて、20分のグループ鑑賞です。1グループにつき1人のシャベラーが付き、子どもたちと2つの作品をみていました。1日目と同様、VTS手法を中心とした対話的な鑑賞です。学校でみたモーゼスの作品を前にした子どもたちは、「本物の方がにぎやかだね」「思ったより絵が小さい」「床部分には木が貼ってある」といった本物から得た発見を話していました。また、初めてみた作品に関しても、描かれた人物の表情や使われている色などから気持ちや時間を読む、抽象的な表現から想像力を使って自分なりに考えたストーリーを話す子どもたちもいました。VTSでは鑑賞者の発言の中立性を守り、誘導的な質問はしないのですが、この時期の展示作品がほとんど美術作品を鑑賞経験のない小学校5年生が読み解くには難しい作品だったため、シャベラーさんは子どもたちの様子を注意深く観察しながら、視点を絞った質問を投げかけたり、いろんな位置から見ることを促すなど工夫をこらしていました。
グループ鑑賞後は、再び10分間の自由鑑賞です。子どもたちは見逃した作品がないかと再び会場へ。子どもたちはこの後、学校へと帰って行きました。

左/美術館訪問用に準備された「なんでもシート」※クリックで拡大
右/記入例。スケッチや感想など、子どもたちは思い思いに記入
シャベラーの長谷部さんは「子どもたちは学校での方が活発に発言していたように思いました。長距離の移動をしてきているので、最初に落ち着かせる時間が大切だと思います。最初から作品に集中できる子どもは少ないですし。今日は電車の遅れで予定よりさらに時間的ゆとりがなくてもったいなかった」と感想をもらしていました。ほかのシャベラーからは「子どもたちの成長段階に合う作品、合わない作品の基準は本当に難しい。ゴッホの《ひまわり》は子どもは興味をもつのだがVTSをやりにくい作品だった」といった感想もありました。
鑑賞授業の準備で大切なこと
今回は、鑑賞用の教材として使用されたアートカードは『SCOPE ART CARDS vol.2』(美術出版サービスセンター刊)に損保ジャパン東郷青児美術館の展示作品を加えたものだ。研修中にシャベラー同士でアートカードゲームを実践、あるいは家庭に持ち帰って子どもと一緒に遊んだ体験から、工芸や建築、抽象作品などの一部カードを抜き、展示作品カードを加えている。また、VTSの視点からARDAの三ツ木さんがアートカードに加える展示作品と鑑賞作品を選んだという。
鑑賞の専門家たちは、子どもたちにみせる作品選びには注意を払う。本物なら何でもよいではなく、「この学年(年齢)の子どもたちなら、この作品からどんなストーリーを生み出せるか」「この作品のなかに、どれだけ発話につながる要素があるか」「発見された要素から、どれだけ子どもたちが鑑賞を深めていける可能性が作品中にあるのか」といった点をはじめ、さまざまな視点で考慮して対象作品を選ぶ。また、発言の多さ=鑑賞の深さとは一概に言えず、その点をフォローするためにもワークシートなど補助教材が不可欠になる。このプロジェクトでも数種類のワークシートが準備されていた。
学校との協働においては、先生の考える授業方針との擦り合わせをはじめ、授業の目的を明確にし、授業時間内で子どもたちが消化できるプログラム作りなど、「対話による鑑賞」を超えた部分での工夫が求められる。大和市のプロジェクトでは、専門性をもったアートNPOがプログラムの基礎づくりと、実施後の検証も行いながら進行中である。
※注記/今回、美術館訪問先となった損保ジャパン東郷青児美術館は、大和市鑑賞教育プロジェクトとの長期間の事前協議を経て連携授業への協力をされています。
(取材・文=染谷ヒロコ 本ブログ編集)
【お知らせ】
やまとアートシャベル2期生募集!
この記事でも紹介したシャベラーの募集です。
募集開始は2013年4月1日〜、詳細は大和市と認定NPO法人芸術資源開発機構のHPにて告知。
美術検定ツイッターでもお知らせします。
※ファシリテーター活動はボランティアですが、VTS研修受講、また、ファシリテーターのなかから一部、有償コーディネーターも育成されるそうです。
レポートする鑑賞授業は大和市立渋谷小学校の5年生3クラスの児童を対象としたものです。事前にプロジェクトの講師兼学校とのコーディネーターであるARDA(認定NPO法人 芸術資源開発機構)学校側との調整で、今回の授業は2日間、1日目はクラス毎に教室での鑑賞授業(45分×2時限)、2日目は美術館での鑑賞活動(移動を含め45分×4時限)となっていました。美術館での作品鑑賞は教育委員会と学校からの希望だったそうです。
1日目1時限目:アートカードで遊ぼう!
〜積極的な鑑賞姿勢を生むために
まず先生からの授業スタートの合図から始まり、「やまとアートシャベル」メンバー(鑑賞ボランティア)の自己紹介が行われました。ここでは、メンバーは「シャベラーさん」と呼ばれます。シャベラーは2人1組で1グループ5〜6名の児童を担当し、1人が進行役、1人が補佐役で授業を進めていました。
子どもたちは作品が印刷されたアートカードを使って3つの鑑賞活動をします。ここでは、アートに正解や間違いがないことに気付き、考えたことや感じたことを自由に発言しながら積極的な鑑賞姿勢を育むことが目的とされていました。そのために行われたゲームは次の3種類です。
・「なっとくゲーム」
色や形、モチーフの特徴をとらえ、分類する力を養うゲーム。ルールは、場にあるアートカードと手札のカードをみくらべて共通点を探し、グループ全員が共通点に納得するとそのカードを場に並べ、手札が早くなくなった人が勝つ。
・「物語つくりゲーム」
描かれたものの特徴をとらえ、組み合わせて物語をつくることで想像力や構成力を養う。進行は、1人ずつ3枚のカードをランダムに選び、そこからストーリーを作り、グループメンバーに話す。
・「好きな絵・気になる絵を選ぼう」
カードの中から好きな作品やよくみたい作品を選び、その理由をグループメンバーに説明する(今回は、訪問予定の美術館の収蔵品から18作品のカードを使用)。
→美術館訪問時に作品をみる動機や姿勢をつくるために導入。


左/なっとくゲームで作品の共通点を探している風景 右/物語つくりの風景
シャベラーはゲームの進行のほか、子どもたちが言葉に詰まった時の助け合いや気付きを促す役割を果たします。始めのうちは、こわごわと共通点を探していた子どもたちは、次第に「どんな視点でも大丈夫」「何を言ってもよい」「決まった答えがない」ということに気付きます。さらに、ゲームが進むにつれて、子どもたち同士でヒントを出し合ったり、助け合ったりする光景が見受けられるようになりました。
この授業の最後は先生にバトンタッチ。1枚の作品が電子黒板に投影され、子どもたちはその作品をみて気付いたことをワークシートに記入していました。


左/先生からこの作品についてワークシートへの記入を促される子どもたち 右/ワークシートはクラスごとに異なる仕様。担任の先生がARDA講師と相談して制作したもの ※クリックで拡大
1日目2時限目:みんなで同じ作品をみてお話ししよう
2時限目は、クラス全員またはクラスを半分に分けての作品鑑賞でした。シャベラー1人が鑑賞ファシリテーターとして前に立ち、2作品をVTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)手法で子どもたちとみていきます。

「この絵を1時間目の終わりに見て、気付いたことをワークシートに書いたよね。今度はみんなで気付いたことを話して行きたいと思います。まずは、この作品をもう1度、よーくみてみよう」というファシリテーターの声掛けから鑑賞が始まりました。しばらく作品を観察した子どもたちに声がかかります(作品はグランマ・モーゼス《古い台所》)。
「この絵の中で何が起こっているかな?気付いたことを言ってみて」
「パーティをしているんだと思う」
「この絵のどこからそう思ったのかな?」
「たくさん人がいるし、テーブルのまわりに椅子がたくさんあって、料理がたくさん並んでるから」
「絵のここと、ここを見てくれたんだね。ほかに気付いたことがある人は?」
「半袖の人がいるから夏じゃないかな」
「この人? 本当だ、半袖の洋服を着ているね。ほかに何か気付いた?」
「家の外だと思う。キャンプかも」
「どこからキャンプだと思ったの?」
といったやりとりが子どもたちとファシリテーターとの間に交わされて行きます。友だちの発言から新たな発見もし始めると、ファシリテーターが声をかけなくとも子どもたちが「私はこう思う」と声を挙げるシーンもたびたびありました。


別のクラスのワークシート ※クリックで拡大
2日目:美術館訪問!作品をみてたくさん話そう!
〜本物をみることで培う鑑賞への積極性
このプロジェクトでは、美術館での作品鑑賞を前提としていません。今回の渋谷小学校では学校からのリクエスト――「子どもたちに本物の作品をみる体験をさせたい、美術館でのマナーを知る機会としたい」――に沿い、美術館での鑑賞をプログラムの中に組み入れたそうです。この時間は、学校側からの希望に加え、鑑賞への積極的主体的な取り組み、本物の作品をみて考え感じたことを言葉などで表現する、作品から自分なりの意味を見いだして言葉にする、ほかの人の意見を聞いて自分の考えを重ねていくといった、1日目からさらに深い鑑賞姿勢を育むことを目的に授業が行われました。
会場となったのは、西新宿にある損保ジャパン東郷青児美術館。電車の遅れもあり、子どもたちの同館滞在時間は約45分程でした。シャベラーからクラスごとにガイダンスを受けた子どもたちは、「なんでもシート」という言葉やスケッチが自由に記入できるワークシートをもって、まずは15分間の自由鑑賞のため、アートカードで決めた好きな作品やよくみたい作品を探して展示室に散りました。2〜3人の友だち同士で作品について話しながらみている子もいます。カードでみた作品を発見するたびに「これみたよね!」「こんな色だったんだ」「ここはみえなかったよね」、と自分たちがカードでみた作品との違いや確認の会話も交わされていました。


左/クラス毎のガイダンス 右/自由鑑賞中の子どもたち

グループ鑑賞後は、再び10分間の自由鑑賞です。子どもたちは見逃した作品がないかと再び会場へ。子どもたちはこの後、学校へと帰って行きました。


左/美術館訪問用に準備された「なんでもシート」※クリックで拡大
右/記入例。スケッチや感想など、子どもたちは思い思いに記入
シャベラーの長谷部さんは「子どもたちは学校での方が活発に発言していたように思いました。長距離の移動をしてきているので、最初に落ち着かせる時間が大切だと思います。最初から作品に集中できる子どもは少ないですし。今日は電車の遅れで予定よりさらに時間的ゆとりがなくてもったいなかった」と感想をもらしていました。ほかのシャベラーからは「子どもたちの成長段階に合う作品、合わない作品の基準は本当に難しい。ゴッホの《ひまわり》は子どもは興味をもつのだがVTSをやりにくい作品だった」といった感想もありました。
鑑賞授業の準備で大切なこと
今回は、鑑賞用の教材として使用されたアートカードは『SCOPE ART CARDS vol.2』(美術出版サービスセンター刊)に損保ジャパン東郷青児美術館の展示作品を加えたものだ。研修中にシャベラー同士でアートカードゲームを実践、あるいは家庭に持ち帰って子どもと一緒に遊んだ体験から、工芸や建築、抽象作品などの一部カードを抜き、展示作品カードを加えている。また、VTSの視点からARDAの三ツ木さんがアートカードに加える展示作品と鑑賞作品を選んだという。
鑑賞の専門家たちは、子どもたちにみせる作品選びには注意を払う。本物なら何でもよいではなく、「この学年(年齢)の子どもたちなら、この作品からどんなストーリーを生み出せるか」「この作品のなかに、どれだけ発話につながる要素があるか」「発見された要素から、どれだけ子どもたちが鑑賞を深めていける可能性が作品中にあるのか」といった点をはじめ、さまざまな視点で考慮して対象作品を選ぶ。また、発言の多さ=鑑賞の深さとは一概に言えず、その点をフォローするためにもワークシートなど補助教材が不可欠になる。このプロジェクトでも数種類のワークシートが準備されていた。
学校との協働においては、先生の考える授業方針との擦り合わせをはじめ、授業の目的を明確にし、授業時間内で子どもたちが消化できるプログラム作りなど、「対話による鑑賞」を超えた部分での工夫が求められる。大和市のプロジェクトでは、専門性をもったアートNPOがプログラムの基礎づくりと、実施後の検証も行いながら進行中である。
※注記/今回、美術館訪問先となった損保ジャパン東郷青児美術館は、大和市鑑賞教育プロジェクトとの長期間の事前協議を経て連携授業への協力をされています。
(取材・文=染谷ヒロコ 本ブログ編集)
【お知らせ】
やまとアートシャベル2期生募集!
この記事でも紹介したシャベラーの募集です。
募集開始は2013年4月1日〜、詳細は大和市と認定NPO法人芸術資源開発機構のHPにて告知。
美術検定ツイッターでもお知らせします。
※ファシリテーター活動はボランティアですが、VTS研修受講、また、ファシリテーターのなかから一部、有償コーディネーターも育成されるそうです。
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