アートナビゲーター勉強会ツアー「観梅と日本美術におけるオリジナリティを考える」
こんにちは。アートナビゲーターの坂井です。
雛祭りの3月3日に開催された、アートナビゲーター・落合信一さんが企画された勉強会ツアー「観梅と日本美術におけるオリジナリティを考える」をレポートします。
雛祭りの3月3日に開催された、アートナビゲーター・落合信一さんが企画された勉強会ツアー「観梅と日本美術におけるオリジナリティを考える」をレポートします。
勉強会ツアーの舞台となった場所は、東京都大田区の池上梅園と池上本門寺でした。このツアーを企画された落合さんは、美術検定1級だけでなく江戸文化歴史検定1級の合格者でもあり、両検定取得者とSNSへの呼びかけで、今回のツアーには約30名のアート・文化ファンが集まりました。
まずは池上梅園へと向かいます。ここは、1930年から戦時まで、画家の伊東深水が自宅と画室を構えた場所でした。私の好きな埼玉県立近代美術館の《宵》もここで描かれたのか、と感慨もひとしおです。この地が梅園になったのは、1978年に大田区に管轄が移ってから。以降、植樹を進め現在は約30種370本の梅があるそうです。当日は3月でも寒く、園内は二種を除いて開花しており、丘陵地いっぱいに紅白ピンクの梅が咲き誇っていました。

ここでは落合さんから約300種あるという梅の見分け方と品種の分類法を教えてもらい、観梅の実践に挑戦しました。聞いたばかりの知識では名前も由来も分からないものの、花を見比べてみて初めて違いに気が付き、見るポイントがなんとなく分かってきて、だんだん楽しくなっていきます。見方が分かると楽しくなるのは、アートも花も同じなんだな、と感じました。
お隣の池上本門寺には、探幽や常信など江戸狩野派53人の墓所があります。狩野派といえば、「型」を学び模倣し継承した粉本主義の絵師集団。それにちなみ、梅園にある和室内で、日本美術におけるオリジナリティというテーマで落合さんによるレクチャーが行われました。
落合さんの考察は、日本と西洋との神話における創造の違いから始まり、弥生、万葉、律令、平安へと駆け巡ります。近世でも、家元制度により創り出すことより倣うことのほうが尊ばれてきたそうです。香しいもの、清らかなものを「美」としてきた日本人にとって、美とは共有認識であり、突出した個性はきっと必要ではなかったのでしょう。明治維新により初めて日本は西洋と対峙し、さらに現代では本当のオリジナルすらない時代になりました。本物と偽物、オリジナルとコピー、個性とパターン、創造と模倣……後者に分類されるものは果たして美術なのか、あるいは美術ではないのか?
作品に既存のイメージを使用することでも知られる現代美術家ジェフ・クーンズが、400年前の日本の狩野派を見たらどんなインスピレーションを沸かせるのでしょうか。それは新たなオリジナルとなっていくのでしょうか。落合さんのレクチャーを聞きながらそんなことを考えました。

落合さんのレクチャー/ガイドに熱心に耳を傾ける参加者
思考と知識の間を往き来したレクチャーの後は、考えるきっかけとなった狩野派絵師のお墓参りと本門寺境内を参拝しました。アートファン同士のお墓フィールドワークは大賑わい(お墓なのに)。
ナビゲートとは、人に「あ、楽しそう」と思ってもらうこと。そのためには十分な勉強と準備、そして何より自分が楽しいと思うことが大切だと実感しました。今回のツアーはまさにそんな内容でした。
プロフィール/2007年度美術検定1級取得。食品会社に勤務。
大学時代に見たピカソの闘牛のドローイングに感銘し、美術館通いを始めました。絵画、彫刻、仏像、建築が好きで、自分の力試しで美術検定を受験。おかげで食わず嫌いだったジャンルも勉強でき、新しい「好き」ができるきっかけになりました。
アーティストは自分の感情の揺れをそのままに、しかし冷静に作品に結集せねばならないが、それは見る側にも強いられるべきで、その対峙した緊張感が好き。twitter:@Kenichiro_Sakaiでもつぶやいています。
まずは池上梅園へと向かいます。ここは、1930年から戦時まで、画家の伊東深水が自宅と画室を構えた場所でした。私の好きな埼玉県立近代美術館の《宵》もここで描かれたのか、と感慨もひとしおです。この地が梅園になったのは、1978年に大田区に管轄が移ってから。以降、植樹を進め現在は約30種370本の梅があるそうです。当日は3月でも寒く、園内は二種を除いて開花しており、丘陵地いっぱいに紅白ピンクの梅が咲き誇っていました。

ここでは落合さんから約300種あるという梅の見分け方と品種の分類法を教えてもらい、観梅の実践に挑戦しました。聞いたばかりの知識では名前も由来も分からないものの、花を見比べてみて初めて違いに気が付き、見るポイントがなんとなく分かってきて、だんだん楽しくなっていきます。見方が分かると楽しくなるのは、アートも花も同じなんだな、と感じました。
お隣の池上本門寺には、探幽や常信など江戸狩野派53人の墓所があります。狩野派といえば、「型」を学び模倣し継承した粉本主義の絵師集団。それにちなみ、梅園にある和室内で、日本美術におけるオリジナリティというテーマで落合さんによるレクチャーが行われました。
落合さんの考察は、日本と西洋との神話における創造の違いから始まり、弥生、万葉、律令、平安へと駆け巡ります。近世でも、家元制度により創り出すことより倣うことのほうが尊ばれてきたそうです。香しいもの、清らかなものを「美」としてきた日本人にとって、美とは共有認識であり、突出した個性はきっと必要ではなかったのでしょう。明治維新により初めて日本は西洋と対峙し、さらに現代では本当のオリジナルすらない時代になりました。本物と偽物、オリジナルとコピー、個性とパターン、創造と模倣……後者に分類されるものは果たして美術なのか、あるいは美術ではないのか?
作品に既存のイメージを使用することでも知られる現代美術家ジェフ・クーンズが、400年前の日本の狩野派を見たらどんなインスピレーションを沸かせるのでしょうか。それは新たなオリジナルとなっていくのでしょうか。落合さんのレクチャーを聞きながらそんなことを考えました。


落合さんのレクチャー/ガイドに熱心に耳を傾ける参加者
思考と知識の間を往き来したレクチャーの後は、考えるきっかけとなった狩野派絵師のお墓参りと本門寺境内を参拝しました。アートファン同士のお墓フィールドワークは大賑わい(お墓なのに)。
ナビゲートとは、人に「あ、楽しそう」と思ってもらうこと。そのためには十分な勉強と準備、そして何より自分が楽しいと思うことが大切だと実感しました。今回のツアーはまさにそんな内容でした。

大学時代に見たピカソの闘牛のドローイングに感銘し、美術館通いを始めました。絵画、彫刻、仏像、建築が好きで、自分の力試しで美術検定を受験。おかげで食わず嫌いだったジャンルも勉強でき、新しい「好き」ができるきっかけになりました。
アーティストは自分の感情の揺れをそのままに、しかし冷静に作品に結集せねばならないが、それは見る側にも強いられるべきで、その対峙した緊張感が好き。twitter:@Kenichiro_Sakaiでもつぶやいています。
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