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「美術検定」応援館訪問記〜永青文庫

こんにちは。アートナビゲーターの高谷(たかたに)です。
今回は「美術検定」応援館の1つ、東京にある永青文庫を紹介します。


爽やかな五月晴れとなったゴールデンウィークの1日、東京・目白台にある永青文庫にうかがいました。この美術館のある界隈は江戸時代には武家屋敷が立ち並んでいた地域で、昭和に入っても邸宅街として閑静な趣を残していました。江戸時代初期、神田上水の水役として出府した松尾芭蕉が深川芭蕉庵に移るまでの4年間住んだ龍隠庵(りゅうげあん。後の関口芭蕉庵)と明治時代の政治家・山縣有朋の邸宅だった椿山荘(現在のホテル椿山荘東京)が隣り合う、そこここに歴史が根付いたエリアです。故・田中角栄元首相私邸(現、真紀子氏邸)の“目白御殿”や、胸突坂・幽霊坂といった急坂が多くあることでも有名かもしれませんね。

arrey今回私は、比較的坂道が緩やかな東京メトロ有楽町線の護国寺駅から大塚警察署の前の坂を上るルートでアプローチしました。高台まで上り切り、細い道を抜けて目白通りに出てから少し進んだところを右に入ると、大通りからすぐの場所とは思えないような緑に包まれた道が続きます。

muse1男子学生寮「和敬塾」を右手に見ながら進むと、その先が永青文庫の敷地です。

昭和初期に建てられた旧細川侯爵家の家政所(事務所)が現在の美術館の建物になっています。



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永青文庫は、室町幕府管領家の家門を継いだ戦国武将で歌人の細川藤孝(幽斎)を祖とし、江戸時代の肥後熊本藩の大名家を経て現当主細川護煕(もりひろ)氏(元首相、陶芸家)へと続く細川家に代々伝わる、約4万8,000点の歴史資料や国宝・重要文化財を含む約6,000点の美術工芸品を保存・研究し、一般に公開しています。「美術検定」の関連書籍で目にする国宝《時雨螺鈿鞍》(しぐれらでんくら。鎌倉時代)も同館のコレクションです。

私が訪れた時には、春季特別展「細川三斎の茶」として、藤孝の子で千利休の高弟である二代忠興(三斎。正室は明智光秀の娘の玉、ガラシャ夫人)にゆかりの茶道具が展示されていました。

展示室では茶道具の作者や書状の筆者として、一休宗純、千利休、長次郎、古田織部、小堀遠州、高山右近、伊達政宗、澤庵宗彭(たくあん そうほう)など歴史上の有名人物の名がズラリと並ぶ壮観さを目の当たりにしました。茶の湯に詳しくない私ですが、細川家に貴重な文化財が守り受け継がれてきたことを改めて知ることができました。

茶道具の展示のほかに、春季コレクション展として、細川家当主らが着用した三斎流の具足、雪舟様式を忠実に継承した熊本藩御用絵師・矢野派などの屏風や掛軸、第16代当主で永青文庫の創立者である細川護立(もりたつ)氏が収集した中国の石仏や金属工芸、それに白隠慧鶴(はくいん えかく)の禅画10点が展示され、細川家の収集品の幅の広さと層の厚さを示していました。

なお、この時期には展示されていませんでしたが、永青文庫は古美術品以外にも、菱田春草《黒き猫》や《落葉》、小林古径《》(いずれも重要文化財。熊本県立美術館に寄託)など、護立氏が収集した近代日本画の名品も所蔵しています。

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muse2永青文庫の質の高い収蔵品を鑑賞した後、目白通りに戻り、近くにある講談社野間記念館を訪れました。

ここには講談社の創業者・野間清治氏による大正期から昭和初期にかけての収集品を主体とした野間コレクションがあり、横山大観・速水御舟・土田麦僊・上村松園など「美術検定」頻出作家たちの作品が所蔵されています。訪問時には「近代日本の歴史画展」として、下村観山・松岡映丘・小林古径・前田青邨ら、「美術検定」公式テキストに名を連ねる画家たちが歴史や神話を題材として描いた端正な日本画が展示されていました。


cathedral陽が西に傾きかける頃、目白通りをまたぐ歩道橋の上から丹下健三設計の東京カテドラル聖マリア大聖堂を眺めつつ、目白台の坂を往路とは反対方向に下り、有楽町線江戸川橋駅から帰路につきました。



プロフィール/小学校時代から図工・美術が苦手科目だったのですが、歴史好きもあり古今東西の美術史に足を突っ込み始めました。腕試しとて2009年に美術検定2級を受験、2010年には1級に合格。現在は休日を中心に足繁く美術展に通い、古代から現代まで美術作品を通じてそれぞれの時代への理解を深めています。美術検定を受験して一番良かったと思うことは、自分の好みや得意な分野以外の作品についてもその価値を認め、偏狭な美術マニアやアートオタクとは違った、アートに対する公正でしなやかな姿勢を持ったアートナビゲーターの方々と出会えたこと。アートへのバランスのとれた広い視野を養えることが美術検定受験の最大のメリットだと思います。

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