勉強の合間に読みたい息抜きアートBOOKS vol.2
こんにちは。アートナビゲーターの杉山と申します。
「美術検定」もいよいよ来週末が本番です。受験のみなさんはラストスパートをかけていらっしゃることでしょう。
というわけで、前回に引き続き、今回も「美術検定」の勉強の合間の気分転換になりそうな本(でもためになる?)をご紹介いたします。
「美術検定」もいよいよ来週末が本番です。受験のみなさんはラストスパートをかけていらっしゃることでしょう。
というわけで、前回に引き続き、今回も「美術検定」の勉強の合間の気分転換になりそうな本(でもためになる?)をご紹介いたします。
◆『おかしな建築の歴史』
五十嵐風太郎著(エクスナレッジ、2013年)2,310円
「パラパラポコポコ」「こたつ問題」「沖縄記号主義」「ドコモモ、そしてドコノモン」……
冒頭からページをパラパラとめくっていくと、“ナニコレ? 本当に建築の話なの?!”と思ってしまうようなキーワードが次から次へと出てきます。しかし中身は至ってマジメ、「建築のいま」をいろいろな角度から少しずつのぞき見させてくれます。
実は本書、世界と日本の建築の歴史を現代から過去へ遡りながら紹介していくといくことにより、現代の身近な話題・馴染みのある景観から建築史を学んでいこう!というのがコンセプト。
ですので、「美術検定」でもおなじみの「ロマネスク」「禅宗様(ぜんしゅうよう)」「バウハウス」などといったキーワードも、後のほうにちゃんと出てきます。ひとつひとつのテーマは見開き単位で完結していて、様々な建築様式を大きなカラー写真でビジュアルに楽しく学べます。「寝殿造」とか「デ・ステイル」と言われても、一体どんな建物なのかピンとこないなあ……なんて思っていた方にもお勧めの1冊。
◆『クイズで学ぶデザイン・レイアウトの基本』
田中クミコ・ハラヒロシ・ハヤシアキコ・ヤマダジュンヤ共著(翔泳社、2013年)1,890円
【Q12】 企業の広告誌、インパクトがあるのはどちらですか?
【Q35】 イタリアンレストラン開店チラシ、どちらがおいしそうに見えますか?
【Q46】 ネイルサロンのサイト。アクセスした瞬間、どちらが目を引きますか?
(上から、p33、p81、p107より抜粋)
ポスター、雑誌、Webサイト……様々なコマーシャルデザインの良い例・悪い例を見比べて、どっちがキレイか? カッコイイか? を当てるクイズ本です。問題は全部で55問! 解説を読めば、デザイナーが普段どんなことを考えながらモノづくりをしているのかが、よく解かるようになっています。
ところで、ジュエリーショップのパンフのレイアウトの問題(p9-10)で、沢山の商品を単純に等間隔で並べるよりも、商品をいくつかの種類に分け、種類ごとにグルーピングして配置するほうがスッキリしますよ、という解説があります。
これ、当たり前のように聴こえますが、絵の構図でもよく使われる大事な手法でなんです。モノや人をたくさん描くときには、画面に秩序やリズムを持たせるためにモチーフをグループ化してレイアウトするのが基本で、たとえば、レオナルドの『最後の晩餐』では十二使徒たちは3人ずつのグループで描かれていますし、尾形光琳の『燕子花図屏風』も、燕子花はまるで幾つもの花束が並んでいるかのように描かれています。
右上/レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』1495-98年
壁画、油性テンペラ 460×880cm
サンタ・マリア・デッレ・グラツェエ教会、ミラノ
画像出典=Wikipedia ※画像は全てクリックで拡大

尾形光琳『燕子花図屏風』(右隻)18世紀前半
金本金地著色 六曲一双 各150.9×338.8cm
根津美術館、東京(国宝)
画像出典=Wikipedia
一方、不安や混乱を表現したいときなどには、逆にモチーフをグループ化せず、あえて無秩序な画面をつくることもあります。アンソールの『仮面の中の自画像』みたいに。
というわけで、この本で学べる配色や構成の考え方は、美術やアートを楽しむときにも、きっと活かせるはずです。(ついでに、通勤電車で中吊り広告を眺めるのも、ちょっとだけ楽しくなります)。
◆『ヘンな日本美術史』
山口晃 著(祥伝社、2012年)1,890円
なんていうかこれ、見ることと描くことの愉悦にあふれた本です。
内容的には、画家の山口晃さんの独断と偏見による「日本美術の楽しみ方ガイド」といったところなのですが。
破綻をきたすことなく自由に、技巧的でありながらもさりげなく、そして真を実を画面に宿す——オレはそんな絵を描きたいんだ! そしてそんな絵を描けてる先人が妬ましいぞ!
そんな山口さんの心の叫びが、行間から漏れ聴こえてくるような内容になっています(^^;
雪舟はどうしてあんなにもヘタウマなのか? 舟木本の都市空間がスパーンと突き抜けて気持ちいいのは何故なのか? 近代日本画には「余白」がなくて、何となくぎこちなく感じられてしまうのは何故なのか?
右/雪舟『慧可断臂図』1496年
紙本墨画淡彩 183.8×112.8cm
京都国立博物館寄託(国宝)
画像出典=Wikipedia
絵を愛してやまない絵描きの眼と筆だけが語ることのできる、「ヘンな日本美術」の世界へようこそ。
※ここで紹介した本のナカミは、amazonでもチラ見できます。
*****
プロフィール/2011年に1級に合格してアートナビゲーターになりました。
でも単に美術好きなだけで、このブログ以外では「ナビゲーター」らしい活動はしておりません……恐縮です;
美術検定のコツですが、『公式テキスト』や『速習ブック』を読んでいて知らないアーティストや作品が出てきたら、面倒でも図書館で画集を探したり、ネットで画像検索したりして、出来るだけたくさん図版を見ることをお勧めします。
絵で見るほうが印象に残りやすいのもありますが、何より字ばっかり追いかけていても眠くて楽しくないと思いますので。
五十嵐風太郎著(エクスナレッジ、2013年)2,310円
「パラパラポコポコ」「こたつ問題」「沖縄記号主義」「ドコモモ、そしてドコノモン」……
冒頭からページをパラパラとめくっていくと、“ナニコレ? 本当に建築の話なの?!”と思ってしまうようなキーワードが次から次へと出てきます。しかし中身は至ってマジメ、「建築のいま」をいろいろな角度から少しずつのぞき見させてくれます。
実は本書、世界と日本の建築の歴史を現代から過去へ遡りながら紹介していくといくことにより、現代の身近な話題・馴染みのある景観から建築史を学んでいこう!というのがコンセプト。
ですので、「美術検定」でもおなじみの「ロマネスク」「禅宗様(ぜんしゅうよう)」「バウハウス」などといったキーワードも、後のほうにちゃんと出てきます。ひとつひとつのテーマは見開き単位で完結していて、様々な建築様式を大きなカラー写真でビジュアルに楽しく学べます。「寝殿造」とか「デ・ステイル」と言われても、一体どんな建物なのかピンとこないなあ……なんて思っていた方にもお勧めの1冊。
◆『クイズで学ぶデザイン・レイアウトの基本』
田中クミコ・ハラヒロシ・ハヤシアキコ・ヤマダジュンヤ共著(翔泳社、2013年)1,890円
【Q12】 企業の広告誌、インパクトがあるのはどちらですか?
【Q35】 イタリアンレストラン開店チラシ、どちらがおいしそうに見えますか?
【Q46】 ネイルサロンのサイト。アクセスした瞬間、どちらが目を引きますか?
(上から、p33、p81、p107より抜粋)
ポスター、雑誌、Webサイト……様々なコマーシャルデザインの良い例・悪い例を見比べて、どっちがキレイか? カッコイイか? を当てるクイズ本です。問題は全部で55問! 解説を読めば、デザイナーが普段どんなことを考えながらモノづくりをしているのかが、よく解かるようになっています。
ところで、ジュエリーショップのパンフのレイアウトの問題(p9-10)で、沢山の商品を単純に等間隔で並べるよりも、商品をいくつかの種類に分け、種類ごとにグルーピングして配置するほうがスッキリしますよ、という解説があります。

右上/レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』1495-98年
壁画、油性テンペラ 460×880cm
サンタ・マリア・デッレ・グラツェエ教会、ミラノ
画像出典=Wikipedia ※画像は全てクリックで拡大

尾形光琳『燕子花図屏風』(右隻)18世紀前半
金本金地著色 六曲一双 各150.9×338.8cm
根津美術館、東京(国宝)
画像出典=Wikipedia
一方、不安や混乱を表現したいときなどには、逆にモチーフをグループ化せず、あえて無秩序な画面をつくることもあります。アンソールの『仮面の中の自画像』みたいに。
というわけで、この本で学べる配色や構成の考え方は、美術やアートを楽しむときにも、きっと活かせるはずです。(ついでに、通勤電車で中吊り広告を眺めるのも、ちょっとだけ楽しくなります)。
◆『ヘンな日本美術史』
山口晃 著(祥伝社、2012年)1,890円
なんていうかこれ、見ることと描くことの愉悦にあふれた本です。
内容的には、画家の山口晃さんの独断と偏見による「日本美術の楽しみ方ガイド」といったところなのですが。
破綻をきたすことなく自由に、技巧的でありながらもさりげなく、そして真を実を画面に宿す——オレはそんな絵を描きたいんだ! そしてそんな絵を描けてる先人が妬ましいぞ!
そんな山口さんの心の叫びが、行間から漏れ聴こえてくるような内容になっています(^^;

右/雪舟『慧可断臂図』1496年
紙本墨画淡彩 183.8×112.8cm
京都国立博物館寄託(国宝)
画像出典=Wikipedia
絵を愛してやまない絵描きの眼と筆だけが語ることのできる、「ヘンな日本美術」の世界へようこそ。
※ここで紹介した本のナカミは、amazonでもチラ見できます。
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でも単に美術好きなだけで、このブログ以外では「ナビゲーター」らしい活動はしておりません……恐縮です;
美術検定のコツですが、『公式テキスト』や『速習ブック』を読んでいて知らないアーティストや作品が出てきたら、面倒でも図書館で画集を探したり、ネットで画像検索したりして、出来るだけたくさん図版を見ることをお勧めします。
絵で見るほうが印象に残りやすいのもありますが、何より字ばっかり追いかけていても眠くて楽しくないと思いますので。
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