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トークセッション「本物の美術をみること、カタログから学ぶこと」レポート

アートナビゲーターのいけだまさのりです。今回は、6月4日にトーキョーワンダーサイト青山で開催された、美術検定関連イベント・トークセッション「本物の美術をみること、カタログから学ぶこと」をレポートします。


 梅雨の晴れ間が覗く当日、4名のパネラーを迎え、参加者60名余りが聞き入る中、
「美術検定」実行委員会事務局の司会進行で、熱のこもった話し合いが行われました。

<パネラー>
 成相肇(府中市美術館学芸員)
 鏑木あづさ(東京藝術大学大学院映像研究科助手、図書館員)
 押金純士(美術出版デザインセンター・元「美術手帖」「デザインの現場」編集長)
 名塚雅絵(美術出版デザインセンター)

 トークセッションは、パネラーの方々の発表から始まりました。

 まず鏑木さんから、カタログの原点ともいえるようなヨーロッパ中世の王侯貴族の財産競売リストから、現代に至るまでのカタログの歴史・変遷について説明がありました。日本については、1950年代以降の流れを追って、1980年代にカタログのひとつの完成型が出来上がり、現代のカタログはまさに何でもありの時代を迎えている、とのことでした。その一例として、鏑木さんが東京都現代美術館で編集に関わった2008年の「川俣正/通路」展のカタログは、川俣さんの頭の中を覗くというコンセプトブックとして作られたことなどがトピックスとして披露されました。

 次に成相さんからは、学芸員の「展覧会の企画実施」という仕事の中の一工程としてのカタログ制作の話がありました。美術館・博物館の大切な使命として作品・資料の記録があり、博物館法でも図録の作成・頒布が事業として明記されていることや、図録の制作に至っては読み手を意識し、例えば成相さんが企画された2009年の「純粋なる形象」展はデザイン展だったので、製品カタログになってしまわないよう、スケッチや全視覚から載せるなど工夫を重ねたことが語られました。

 名塚さんからは、1週間前に行われたアートナビゲーター20名余りによる、カタログをめぐるワークショップの報告がありました。鑑賞者がカタログを求める理由として、展覧会を追体験できる、資料性が高い、同じ作品でも展覧会のコンセプトにより見え方が変わってくるなどが挙げられ、逆に敬遠する理由としては、重たい、かさばる、図書館でこと足りる、などが出されました。

 最後に押金さんから、雑誌制作の場合は読み手にどう見せるか、どこをどう見てもらいたいか、など常に考えながら編集にあたっている、との話がなされて前半が終了しました。

 セッションの後半では、パネラー同士のディスカッションに入り、カタログにおける図版などのデザイン性、目録などの資料性などが話し合われました。さらに、メディアの技術進歩による、電子書籍やグーグル・アート・プロジェクトなどとのこれからの関わりが話題に上がりました。一方で、地域の美術館が、これまで取り上げられなかった美術家の作品・資料を地道に調査・収集し、良質な展覧会やカタログ作成に取り組んでいることなども触れられました。

 質疑応答では、会場の参加者より「カタログのサイズは統一された方がいい」「誰のためのカタログか」「安価なダイジェスト版の販売を」といった、カタログに寄せる期待からの声が上がりました。
 セッション最後は、カタログにも目を向ける機会を増やして、それをきっかけにより多くの人が美術館に本物を見に行くようになれば素晴らしい、と締め括られました。

 今回の展覧会カタログをめぐるワークショップそしてトークセッションに参加し、改めて展覧会とその記録としての図録・カタログは、美術の記憶・継承に欠かせないものと感じました。個人的には、最近の展覧会で、東京都現代美術館コレクション「クロニクル1947-1963 / アンデパンダンの時代」展と板橋区立美術館「福沢一郎絵画研究所」展でカタログが作られなかったのが惜しかったこと、目黒区美術館「‘文化’資源としての<炭坑>」展ではカタログが売切れで買えず残念だったことが思い起こされました。 

なお、当日参加された方々のツイッター上の感想は、こちらでもご覧いただけます。
http://togetter.com/li/145015

プロフィール/2005年に第1回目のアートナビゲーター検定試験1級(「美術検定」1級の前身)に合格。会社員の傍ら週末は美術館に通っていたので検定にチャレンジ。合格後は、都内の私立美術館で現代美術のボランティアガイドなどにも就く一方で、アートを通して現在の仕事(社内研修関係)にも違った目で取り組み中です。

| 美術検定関連イベント告知&レポート | 17:14 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

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