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「都市で楽しむアートとは?」アートナビゲーター・トークセッションレポート

こんにちは。岡山市在住の新米アートナビゲーター有田純子です。
2015年3月14日(土)に大阪の江之子島文化芸術創造センター(enoco)で開催された、「都市で楽しむアートとは?」をテーマにしたトークセッションに、アートナビゲーターの先輩である東孝彦さんと高島美恵さんが登壇されたのでレポートします。


主催のKAMO(Konohana Arts Meeting for Osaka)は、多岐にわたるアートの分野とその現場を知ることを目的に、様々なアートシーンで活躍されている方を招いてトークイベントを行っているグループです。4人の運営メンバーが持ち回りで企画を行っており、今回は、関西アートカレンダーというwebサイト代表の森崎幸一さんが企画と司会を行われました。通常、トークイベントは平日の夜に開催されているようですが、今回のトークセッションはなんと11時から19時まで、約1時間ずつ5組7名の方のお話を聴くという、大胆な企画でした。プログラムの構成は、次の通りです。

11:00 – 12:00  登壇者: 今田徹也・藤岡宇央
13:00 – 14:00   登壇者: 藤堂千代子
14:30 – 15:30  登壇者: 東孝彦・高島美恵
16:00 – 17:00   登壇者: DJ MIZUTA
18:00 – 19:00   登壇者: 宮本初音

※登壇者のプロフィールは、下記サイトをご覧ください。
http://www.enokojima-art.jp/e/event/2015/02/24/402

3番目に登壇された東さんと高島さんのトークセッションは約1時間、それぞれこれまでのボランティア活動を、プロジェクターを見ながら紹介しつつ、森崎さんがインタビューをする形で進行しました。

まず東さんは、2001年に開催された第1回目の横浜トリエンナーレ2001と、同年ワタリウム美術館で行われた「バックミンスター・フラー展」でのワークショップに参加され、その時に芹沢高志さんというディレクターとの出会いがあったそうです。芹沢さんは、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)を立ち上げたり、2002年に帯広競馬場で開かれたとかち国際現代アート展『デメーテル』でもディレクターを務められた方でした。そのとかち国際現代アート展で、東さんはギャラリーガイドを体験し、楽しさを知った、と言われていました。
そして、芹沢さんがディレクターを務められた2005年の横浜トリエンナーレ2005に初めてボランティアガイドとして参加され、以降、2006年から東京都現代美術館でのボランティア、東京都写真美術館でのボランティア、「美術検定」実行委員会主催の「展覧会カタログってどう使うの?」というトークセッション(本ブログにそのレポートがあります)、アートフェア東京のナビゲーターなどの活動をされているそうです。インターネットで検索をかけてみたところ、お話に出たもの以外でも、様々な企画に携わっておられることが分かります。高島さんは、「本当に、どこでボランティアをやっても、いつも東さんがいる」と言って、笑っていらっしゃいました。

一方の高島さんは、社会人になって初めの頃は、ただ好きで美術館へ鑑賞に行っていただけだったそうですが、地元の美術館を盛り上げたい、という想いから、兵庫県立美術館のボランティアを始められたそうです。通常は45分間のギャラリーガイドや、美術館の建物ガイドをしておられたそうですが、年に1回、県立美術館の企画で作品に触れる美術展があって、そこで作品の触り方や素材の説明をしたり、触ってみた感想を聞いたりするうち、「大勢に話をするのもいいけれど、こうして個人的な対話ができる活動の方が楽しい」と思われたと言います。
その後自主企画で、参加者と一緒に展覧会を観覧し、それぞれが好きな作品を2点ずつ選び、他の参加者になぜそれが好きかを紹介し、作品について語り合う会を開いたそうです。さらに、今は残念ながら閉鎖されてしまった「中之島_4117」の企画で、希望者10人がそれぞれワークショップを企画運営するという試みがあり、企画者として参加されたそうです。高島さんの企画は、当時国立国際美術館で開催された「オン・ザ・ロード 森山大道写真展」をワークショップ参加者が観に行き、気に入った写真をスケッチして帰り、大きな模造紙にスケッチを貼りつけてそれを展示するというものです。プロジェクター上でその模造紙を見た東さんも、「これは楽しそうだなあ」と感心されていました。

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自身が企画したワークショップについて語る高島さん(左)と、東さん(右)

高島さんは2年前、東京へ引っ越すことになり、兵庫県立美術館のボランティアはお休みすることになったそうですが、2014年は「オルセー美術館展」キヤノン・ミュージアム・キャンパス(学生に美術館を無料で開放するイベント)にガイドとして参加し、オルセーの作品が観られたことに感激している学生に触れ、ご自身も感動されたそうです(こちらも本ブログにレポートがあります)。また、同年森美術館で開催の「リー・ミンウェイ展」ワークショップにホスト役として参加し、普段は人と話すことが苦手だという人が、今日はちゃんと話が出来てよかった、と言ってくれたりしたのが嬉しかった、と言われていました。

司会の森崎さんもやはり美術に造詣の深い方で、東さん、高島さんそれぞれのお話の途中で、軽妙に質問を挟みながら進められました。時に3人で話が盛り上がる場面もあり、お二人のこれまでの活動を紹介し終わった時には、ほとんど時間がなくなりかけていました。
森崎さんが、「時間がないから最後に一つ」と言ってされた質問は、「ガイドを行う際に気にかけていること」でした。東さんは、「作品の前に滞在する時間で、見えるものも違うと思うので、少しでも長く鑑賞し、いろんな発見をしてほしい。その助けをするのがガイドだと思う」と語られました。高島さんは、「ガイドをする際、参加者が本当に少ないときもあるが、それは参加する側にとっては貴重な体験ではないかと思う。ボランティアは参加者数を上げることを目指さなくてもいいので、そういう個人的な対話を大事にすることもできる。」とおっしゃっておられました。

プロとして美術に携わっている方から、「報酬なしでそこまでできる理由は?」という質問へのお二人の回答は興味深いものでした。それぞれ、ボランティアのよいところは、「活動する美術館には無料で入れること」「学芸員から作品の説明を受けることで作品の理解が深まること」などを挙げられ、どちらも心から楽しんで活動されている様子が伝わってきました。

お二人の活動の幅広さに驚きましたが、生き生きとお話されている様子から、人とのかかわりを大切にしながら相手の興味を引き出そうとする姿勢が、次の活動を呼んでいるのだなということを感じました。私は未だに何をするべきか模索中ですが、お二人の姿勢は見習っていきたいと思いました。


プロフィール
大学生の時に学芸員の資格を取りましたが、今まではただの鑑賞者として美術館やアートフェスティバルなどを楽しんできました。2014年美術検定で1級に合格し、これから先、自分に何ができるのかを考えているところです。

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