「六本木アートナイト2015」ガイドレポート
初めまして!横浜在住の沖田紀子です。
4月25日(土)の夜から26日(日)にかけて開催された「六本木アートナイト2015」に、ボランティアガイドとして参加しました。
今回は、その研修から当日のガイドまでをレポートさせていただきます。
4月25日(土)の夜から26日(日)にかけて開催された「六本木アートナイト2015」に、ボランティアガイドとして参加しました。
今回は、その研修から当日のガイドまでをレポートさせていただきます。
「六本木アートナイト」とは、2009年に始まり今回で6回目を迎えた、六本木の街を舞台とする一夜限りのアートの饗宴です。美術館を始めとする六本木の全域にわたり、現代アートの展示、音楽やパフォーマンス、トークなどのイベントが開催されるというものです。アーティスティック・ディレクターは日比野克彦氏、メディアアート・ディレクターはライゾマティクス斎藤精一氏。2015年のテーマは「ハルはアケボノ ひかルつながルさんかすル」でした。
さて今回、アートナイト史上初めてのプログラムとして「六本木アートナイトをもっと楽しむガイドツアー」が企画されました。ボランティアガイドを募集していることを知ったのは、なんと応募締切の前日。「私は行けないので、参加して話を聞かせてほしい」という知人に背中を押され、思い切って応募してみました。応募した理由はもう一つあります。それは、ガイドツアーの主旨が一般的な作品の知識を説明する「解説型」ではなく、参加者と共に対話を楽しみながら展示作品や六本木の街の魅力に迫るという「対話型鑑賞」で、そのための事前ワークショップを「京都造形芸術大学による鑑賞教育プログラム(ACOP)で学ぶ」という内容だったからです。以前から対話型鑑賞に興味があった私には、とても魅力的な企画でした。そして抽選の結果、見事当選したのでした。
研修を兼ねた全5回のワークショップは3月19日から始まりました。講師は京都造形芸術大学ACOP 嘱託研究員の平野智紀さん。1~2回目は、ACOPのトレーニング方法を幾つか体験しました。2人一組になり、目隠しした相方にスライドに映っている作品を言葉で説明する「ブラインド・トーク」や、「ミュゼオバトル」などです。「ミュゼオバトル」とは、プリントされた作品画像を宿題として持ち帰り、次回その作品を他のメンバーに伝えられるように、そこに何が写っているかじっくり見て、自分はどんなことを感じるのかをあらかじめ考えておきます。そしてグループ内で、画像は見せずトークだけで5分間作品のプレゼンテーションを行います。その後、作品を観てみたいという票を一番多く勝ち取った人がチャンピオンになる、というものです。これらのトレーニング方法は、正に「みる、考える、話す、聴く」の4つを基本としたACOPの美術鑑賞教育プログラムの実践でした。3回目には、それぞれが考えてきたガイドツアーのプラン内容が近い者同士で構成された5つのチームが誕生しました。4回目は、ゲストの地理人研究所の今和泉隆行さんや六本木商店街会長さんから、六本木の歴史や地図の読み解き方などの貴重なお話を伺い、ツアー時のトークの参考にしました。そして、実際に自分たちの決めたコースを歩いてみるフィールドワークも行いました。最終回の5回目には、他のチームに随行し互いに良い点をシェアしたり、目玉となる作品を選びチーム内で対話型鑑賞の練習を行いました。これも「美術史等の知識だけに偏らず、鑑賞者同士のコミュニケーションを通してアート作品を読み解いていく鑑賞方法」というACOPの提唱する理念です。しかし、実際に作品はまだ展示されていない中での“エアー”のガイドですから、練習するにもなかなか厳しいものがありました。中には、ワークショップ以外の日にも自主練に励んだチームもあったとか。
いよいよ当日。日も暮れかかった頃、ツアーの出発地点である本部へ行ってみると、沢山の事務局スタッフの皆さん、アルバイトさんがキビキビと受付準備を整える中、なんと!予想を超える参加希望者が列をなして待っているではありませんか!正直驚きました。私達もエンジン始動です。
最終的に5つのチームで、初心者向けからアート上級者向け、路地裏を巡るディープなコースなど、様々な個性的なコースを用意して準備万端。18時から23時までの1時間に1回のスタートで、およそ45分間のガイドツアーを計12回催行しましたが、どれも満員御礼で参加出来なかった方も多数いらしたようでした。また、コースを変えて何度も参加して下さった方もいらっしゃいました。このアートナイト自体お祭り色が濃いイベントですから、ガイドツアーにも参加しやすかったのでしょうか。デジタルメディア中心なので、じっくり腰をすえて見る平面作品などはほとんど無く、イベントやパフォーマンスの方がどうしても目立ちますし、見るものがあまりに沢山あるので、どれをみたら良いかの指針が欲しいという方もいらしたかもしれません。

趣向を凝らしたガイドツアーには、多くの参加者がつめかけた。
特に私のチームは六本木もアートも初心者!というビギナーズ向けに、“東京ミッドタウンを中心に六本木の夜をアート鑑賞しながらゆる~く楽しんでいただく”というのがコンセプトでしたので、通り道で遭遇する瞬間芸(芝居)のようなパフォーマンスや、ハリウッド製のゴジラの咆哮姿、数台のデジタルカメラによる参加型の連写自撮りに、チームごと参加したりしました。また、電動振り子の軌跡がアートになるロボット、ミッドタウン内のステージでの賑やかな光と音楽など、参加者の方々はとても素直に喜んで下さいました。最後に、館外の芝生広場を見下ろす場所で、夜空に赤く輝く東京タワーを見つけて歓声をあげる皆さんの顔を見て、喜んで頂けたかな?と、こちらもほっと胸をなでおろしました。


ツアーの参加者もガイドも、共に六本木の夜を楽しんだ。
せっかく学んだACOPの対話型鑑賞の理念を活かせたとはあまり言えませんが、つかの間でもお客様と感動を共有出来たことや、ワークショップを通して普段知り合うことの無い職業や年齢の方と知り合えたこと、考え方や物事の対処の仕方に刺激を受けたことは、私にとって大きな収穫でした。私達の活動に評価が出るとすれば、来年再びこのボランティアガイドツアーが開催決定された時でしょうか!?さて結果はいかに!?
プロフィール
2012年3級、2013年2級、2014年1級と、最短で合格してしまったので、逆に勉強が全く足りていないと感じている今日この頃です。2014年に横浜トリエンナーレのサポーターとして事前ガイダンスやギャラリー・ツアーを担当、現代アートを解説する難しさに悶絶しました。2015年は横浜美術館のボランティアのお仲間に入れていただき、楽しく活動中です。
さて今回、アートナイト史上初めてのプログラムとして「六本木アートナイトをもっと楽しむガイドツアー」が企画されました。ボランティアガイドを募集していることを知ったのは、なんと応募締切の前日。「私は行けないので、参加して話を聞かせてほしい」という知人に背中を押され、思い切って応募してみました。応募した理由はもう一つあります。それは、ガイドツアーの主旨が一般的な作品の知識を説明する「解説型」ではなく、参加者と共に対話を楽しみながら展示作品や六本木の街の魅力に迫るという「対話型鑑賞」で、そのための事前ワークショップを「京都造形芸術大学による鑑賞教育プログラム(ACOP)で学ぶ」という内容だったからです。以前から対話型鑑賞に興味があった私には、とても魅力的な企画でした。そして抽選の結果、見事当選したのでした。
研修を兼ねた全5回のワークショップは3月19日から始まりました。講師は京都造形芸術大学ACOP 嘱託研究員の平野智紀さん。1~2回目は、ACOPのトレーニング方法を幾つか体験しました。2人一組になり、目隠しした相方にスライドに映っている作品を言葉で説明する「ブラインド・トーク」や、「ミュゼオバトル」などです。「ミュゼオバトル」とは、プリントされた作品画像を宿題として持ち帰り、次回その作品を他のメンバーに伝えられるように、そこに何が写っているかじっくり見て、自分はどんなことを感じるのかをあらかじめ考えておきます。そしてグループ内で、画像は見せずトークだけで5分間作品のプレゼンテーションを行います。その後、作品を観てみたいという票を一番多く勝ち取った人がチャンピオンになる、というものです。これらのトレーニング方法は、正に「みる、考える、話す、聴く」の4つを基本としたACOPの美術鑑賞教育プログラムの実践でした。3回目には、それぞれが考えてきたガイドツアーのプラン内容が近い者同士で構成された5つのチームが誕生しました。4回目は、ゲストの地理人研究所の今和泉隆行さんや六本木商店街会長さんから、六本木の歴史や地図の読み解き方などの貴重なお話を伺い、ツアー時のトークの参考にしました。そして、実際に自分たちの決めたコースを歩いてみるフィールドワークも行いました。最終回の5回目には、他のチームに随行し互いに良い点をシェアしたり、目玉となる作品を選びチーム内で対話型鑑賞の練習を行いました。これも「美術史等の知識だけに偏らず、鑑賞者同士のコミュニケーションを通してアート作品を読み解いていく鑑賞方法」というACOPの提唱する理念です。しかし、実際に作品はまだ展示されていない中での“エアー”のガイドですから、練習するにもなかなか厳しいものがありました。中には、ワークショップ以外の日にも自主練に励んだチームもあったとか。
いよいよ当日。日も暮れかかった頃、ツアーの出発地点である本部へ行ってみると、沢山の事務局スタッフの皆さん、アルバイトさんがキビキビと受付準備を整える中、なんと!予想を超える参加希望者が列をなして待っているではありませんか!正直驚きました。私達もエンジン始動です。
最終的に5つのチームで、初心者向けからアート上級者向け、路地裏を巡るディープなコースなど、様々な個性的なコースを用意して準備万端。18時から23時までの1時間に1回のスタートで、およそ45分間のガイドツアーを計12回催行しましたが、どれも満員御礼で参加出来なかった方も多数いらしたようでした。また、コースを変えて何度も参加して下さった方もいらっしゃいました。このアートナイト自体お祭り色が濃いイベントですから、ガイドツアーにも参加しやすかったのでしょうか。デジタルメディア中心なので、じっくり腰をすえて見る平面作品などはほとんど無く、イベントやパフォーマンスの方がどうしても目立ちますし、見るものがあまりに沢山あるので、どれをみたら良いかの指針が欲しいという方もいらしたかもしれません。

趣向を凝らしたガイドツアーには、多くの参加者がつめかけた。
特に私のチームは六本木もアートも初心者!というビギナーズ向けに、“東京ミッドタウンを中心に六本木の夜をアート鑑賞しながらゆる~く楽しんでいただく”というのがコンセプトでしたので、通り道で遭遇する瞬間芸(芝居)のようなパフォーマンスや、ハリウッド製のゴジラの咆哮姿、数台のデジタルカメラによる参加型の連写自撮りに、チームごと参加したりしました。また、電動振り子の軌跡がアートになるロボット、ミッドタウン内のステージでの賑やかな光と音楽など、参加者の方々はとても素直に喜んで下さいました。最後に、館外の芝生広場を見下ろす場所で、夜空に赤く輝く東京タワーを見つけて歓声をあげる皆さんの顔を見て、喜んで頂けたかな?と、こちらもほっと胸をなでおろしました。


ツアーの参加者もガイドも、共に六本木の夜を楽しんだ。
せっかく学んだACOPの対話型鑑賞の理念を活かせたとはあまり言えませんが、つかの間でもお客様と感動を共有出来たことや、ワークショップを通して普段知り合うことの無い職業や年齢の方と知り合えたこと、考え方や物事の対処の仕方に刺激を受けたことは、私にとって大きな収穫でした。私達の活動に評価が出るとすれば、来年再びこのボランティアガイドツアーが開催決定された時でしょうか!?さて結果はいかに!?

2012年3級、2013年2級、2014年1級と、最短で合格してしまったので、逆に勉強が全く足りていないと感じている今日この頃です。2014年に横浜トリエンナーレのサポーターとして事前ガイダンスやギャラリー・ツアーを担当、現代アートを解説する難しさに悶絶しました。2015年は横浜美術館のボランティアのお仲間に入れていただき、楽しく活動中です。
| アートナビゲーター活動記 | 16:49 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑