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美術館の当事者としての私たち- 「NO MUSEUM, NO LIFE? これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」

こんにちは。アートナビゲーターの深津優希です。私がガイドスタッフとして関わっている東京国立近代美術館では、現在「NO MUSEUM, NO LIFE? これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」という、なが~いタイトルの展覧会が開催中です。今日は、この展覧会を通して見えてくる「美術館」について、特に「美術館への関わり方」にポイントをおいて考えてみたいと思います。


◆美術館事典の形をとった展覧会
会場である竹橋の東京国立近代美術館のコレクションはもとより、京都国立近代美術館国立西洋美術館国立国際美術館国立新美術館の五つの館が所蔵するコレクションから、約170点の作品を使った贅沢な展覧会です。時代も地域もバラエティに富んだこれらの作品をどのように見せているのか、美術館・展覧会好きには気になるところですよね。実は、美術館にまつわるAからZまで36個のキーワードと解説、関連した作品を事典のように並べ、「美術館」そのものの存在について考えさせる展覧会となっているのです。一人でぶらぶら見ても楽しいし、お友達と「これってどういう意味かしら」なんて話し合いながら見ても良さそうです。

◆「AtoZ」 36のキーワード
この展覧会のために用意されたキーワードは以下の通り。ちょっと眺めてみてください。

Architecture 【建築】
Archive 【アーカイヴ】
Artist 【アーティスト】
Art Museum 【美術館】
Beholder 【観者】
Catalogue 【カタログ】
Collection 【収集】
Conservation 【保存修復】
Curation 【キュレーション】
Discussion 【議論】
Earthquake 【地震】
Education 【教育】
Event 【イベント】
Exhibition 【展示】
Frame 【額/枠】
Guard 【保護/警備】
Handling 【取り扱い】
Hanging 【吊ること】
Haptic 【触覚的】
Internet 【インターネット】
Journalism 【ジャーナリズム】
Light 【光/照明】
Money 【お金】
Naked/Nude 【裸体/ヌード】
Original 【オリジナル】
Plinth 【台座】
Provenance 【来歴】
Record 【記録】
Research 【調査/研究】
Storage 【収蔵庫】
Tear 【裂け目】
Temperature 【温度】
Wrap 【梱包】
X-ray 【エックス線】
You 【あなた】
Zero 【ゼロ】

いかがですか?聞いたことはあるけど説明はできない用語や、美術館とどう関係するのかわからない用語もあったのではないでしょうか?そこは行ってみてのお楽しみにして、ここでは「美術館への関わり方」という観点からキーワードをピックアップしてみます。

◆あなたも当事者!
Artist 【アーティスト】がいくら素晴らしい作品を制作しても、Beholder 【観者】の存在がなければ、アートは成立しません。両者をつなぐ役割をもつ存在のひとつが美術館やそこで開かれる展覧会であり、展覧会をつくることを含めた学芸員の仕事のことをCuration 【キュレーション】と言います。

美術館は展覧会以外にも、アーティスト(の作品)と観者をつなぐEducation 【教育】のプログラムを企画、提供しています。対象は未就学児から大人まで、内容は専門家による講演会、アーティストトーク、展示室での作品解説や対話による鑑賞、ワークショップ、など様々です。私はいくつかの美術館で教育普及活動に関わってきた中で、観者が沢山並んでいる作品の前をすっと素通りするのではなく、これと思った作品にじっくり向き合い充実した時間を過ごし晴れやかな顔で帰られるのを幾度となく見てきました。一人で作品と対峙する時間は、忙しい毎日の中で立ち止まって考える良い機会となりますし、何人かで視点を共有しながら鑑賞する時間もまた、私たち観者がアーティストの投げた問いに対する自分なりの答えをさぐる良い体験となります。あなたは何かこうしたプログラムに参加されたことはありますか?美術館との新しい関わり方を見つけられるかもしれません。

さて、Event 【イベント】という言葉は一般的に催しものという意味で使います。上にあげた教育プログラムのひとつひとつについてをイベントと呼ぶことも多いです。美術ではパフォーマンスのような作品のこともイベントと呼ぶことがあります。1960年代以降、美術館やギャラリーといった既成の枠組みから抜け出す方法のひとつでもありました。イベントは、そこに居合わせて見届けた人の記憶にしか残りません。またしても、観者の存在がなければ成り立たないアートというものを認識させられます。一方で、美術館の役割はというと、映像や資料を使ってこれをアーカイヴすることが重要になります。

最後に、この展覧会を通して最も印象に残ったのが、You 【あなた】という項目。これを美術館事典に載せてしまうほど、あなた=観者の存在はなくてはならないものなのです。通りすがりのお客さんの気分でいたあなたも、実はアート、そして美術館の当事者なのです。これって、胸にずんと響きませんか?次にどこかの美術館・展覧会に行くときは、このことを思い出してみてくださいね。

東京国立近代美術館のガイドスタッフは、アーティスト(の作品)と観者(来館者)のかけはしになる活動です。アートナビゲーターがそれぞれに行なっている活動も、基本は同じだと思います。自分自身も観者でありながら、他の観者どうしをつないだり、観者が作品との関係を深めるきっかけをつくったりする立場にあります。まじめに考えると責任重大ですが、そのぶん素敵な瞬間に立ち会える特権も!これからもアート、そして美術館の当事者として、美術館を愛していきたいな、と思った展覧会でした。


●展覧会情報
「No Museum, No Life?―これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」
開催期間:2015年6月16日(火) ~2015年9月13日(日)
会場:東京国立近代美術館
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/no-museum-no-life/

※2015年7月31日(金)から2015年8月2日(日)までの3日間は「MOMATサマーフェス」開催。展覧会を見る以外の楽しみも!
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/summer_festival2015/


プロフィール/
美術館ガイド、ワークショップ企画、美術講座講師など、色々なかたちでアートに関わっています。このブログにはアートナビゲーターの活動記録のほか、アートが題材となった映画紹介を寄稿しています。

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