東京都杉並区の美術鑑賞教育プロジェクト「アートわっか・すぎなみ」
アートナビゲーターの小幡です。
今回は、私の住んでいる東京都杉並区で始まった新しいアートプロジェクトをご紹介します。
今回は、私の住んでいる東京都杉並区で始まった新しいアートプロジェクトをご紹介します。
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東京都杉並区で、新しいアートプロジェクトが動き出しています。
2014年から始まったこのプロジェクトは、杉並区の小学校、区内のNPO、区民ボランティアとの協働による、小学生のための「対話による美術鑑賞」教育プロジェクトです。
杉並区では、『共に学び共に支え共に創る杉並の教育』という教育ビジョンを掲げています。子供たちに豊かな教育プログラムを提供していく取り組みとして、月に1~2回土曜授業が行われています。これは、平日のプログラムの中ではなかなか実現できない「かかわり」と「つながり」を重視し、地域と連携した体験的活動や、外部の人材を取り入れた学習を実施していこうとするものです。この教育ビジョンに、「対話による美術鑑賞」教育プロジェクトはふさわしい、と区内の小学校に採用され試行実施したことから、第一歩を踏み出しました。
「対話による美術鑑賞」を通じて、次世代を担う子供たちの「生きる力」を育んでいこうとする同様の活動は、すでに東京都西東京市や神奈川県大和市などで行われており、高い評価を得ています。
今回のプロジェクトを企画し、牽引している、杉並区の認定NPO法人芸術資源開発機構(以下、ARDA)は、「対話による美術鑑賞」事業を開発・実践・運営してきました。ARDAは、西東京市、大和市の教育プロジェクトにおいても、自治体と協働して活動を育ててきました。
2014年7月、このプロジェクトのボランティア募集の呼びかけに応じて集まったメンバーは16人。
土曜授業が主な活動の場になることから、フルタイムで仕事をしているメンバーも多く、年齢もさまざまです。メンバー同士の提案から、鑑賞ボランティアの名称は「アートわっか・すぎなみ」と決まり、カラフルなロゴマークや活動を紹介するリーフレットも、メンバーのデザイン・制作により出来上がりました。
2014年度は、9月から専門講師による6回の研修を経て、11月から6校の小学校での活動に臨みました。
ARDAが制作した「アートわっか・すぎなみ」のリーフレットより。デザイン・制作はメンバーが手がけた。
先行する二つの自治体同様に、杉並区にも公立の美術館はありません。
そのため、美術館で本物の作品と対峙して対話する鑑賞ではなく、このプロジェクトでは、実際の活動はアートカードを使って行われます。ゲーム形式でカードに印刷された美術作品を「意識的に見る」ことで、観察力・思考力が育まれます。また、思ったことを自由に発言し、友達の意見を聞くことで、自分の視野も広がっていきます。
今までにない形の土曜授業に、子供たちは興味しんしん。
机を囲んでボランティアの説明に耳を傾け、初めて手にするアートカードにもすんなりと馴染んでいる様子です。鑑賞用の教材として使用しているアートカード『SCOPE』(美術出版サービスセンター刊)の美しさに加えて、共通点を探したり、物語を作ったりするといった親しみやすい方法で、子供たちはアートをより身近なものとして感じているようでした。
2014年度の活動は、手探りながらも十分な手ごたえを感じられるものでした。体験した子供たちからの嬉しい感想も寄せられました。
美術館がない自治体においても、美術鑑賞教育の伝統的な枠組み「学校と美術館の連携」に捉われず、地域や自治体の特色を活かし、市民の力で新しい「対話による美術鑑賞」を展開していこうとする杉並区での試みは、現在進行形で試行錯誤の最中です。
今後のボランティア研修やプログラムの内容には、まだまだ課題も残されています。
「わっか」は、話・和・輪を掛け合わせた意味です。「対話による美術鑑賞」の活動が、和を持って、拡がる輪となっていくように。
杉並区での試みが、協働事業の良さを生かしながら柔軟に改良を重ねて、大きな「わっか」に成長していくことを願ってやみません。
【お知らせ】
アートわっか・すぎなみ2期生募集!
杉並区の小学校で美術鑑賞教室ボランティアとして活動するメンバーを募集中です。
応募の締め切りは2015年9月19日(金)必着。
詳細は認定NPO法人芸術資源開発機構ホームページにて告知中です。
http://www.arda.jp/suginami_img/memberboshu.pdf
プロフィール/もともとイラストレーターをしていたので、美術は大好き。美術館にもよく足を運んでいました。そこで見つけた美術検定のチラシのイラストに惹かれて受験。2008年に1級取得。現在は損保ジャパン東郷青児美術館でガイドスタッフとして活動しています。「美術検定」ブログでは、イラストつきで「アートでエクササイズ」を連載中。
東京都杉並区で、新しいアートプロジェクトが動き出しています。
2014年から始まったこのプロジェクトは、杉並区の小学校、区内のNPO、区民ボランティアとの協働による、小学生のための「対話による美術鑑賞」教育プロジェクトです。
杉並区では、『共に学び共に支え共に創る杉並の教育』という教育ビジョンを掲げています。子供たちに豊かな教育プログラムを提供していく取り組みとして、月に1~2回土曜授業が行われています。これは、平日のプログラムの中ではなかなか実現できない「かかわり」と「つながり」を重視し、地域と連携した体験的活動や、外部の人材を取り入れた学習を実施していこうとするものです。この教育ビジョンに、「対話による美術鑑賞」教育プロジェクトはふさわしい、と区内の小学校に採用され試行実施したことから、第一歩を踏み出しました。
「対話による美術鑑賞」を通じて、次世代を担う子供たちの「生きる力」を育んでいこうとする同様の活動は、すでに東京都西東京市や神奈川県大和市などで行われており、高い評価を得ています。
今回のプロジェクトを企画し、牽引している、杉並区の認定NPO法人芸術資源開発機構(以下、ARDA)は、「対話による美術鑑賞」事業を開発・実践・運営してきました。ARDAは、西東京市、大和市の教育プロジェクトにおいても、自治体と協働して活動を育ててきました。
2014年7月、このプロジェクトのボランティア募集の呼びかけに応じて集まったメンバーは16人。
土曜授業が主な活動の場になることから、フルタイムで仕事をしているメンバーも多く、年齢もさまざまです。メンバー同士の提案から、鑑賞ボランティアの名称は「アートわっか・すぎなみ」と決まり、カラフルなロゴマークや活動を紹介するリーフレットも、メンバーのデザイン・制作により出来上がりました。
2014年度は、9月から専門講師による6回の研修を経て、11月から6校の小学校での活動に臨みました。


先行する二つの自治体同様に、杉並区にも公立の美術館はありません。
そのため、美術館で本物の作品と対峙して対話する鑑賞ではなく、このプロジェクトでは、実際の活動はアートカードを使って行われます。ゲーム形式でカードに印刷された美術作品を「意識的に見る」ことで、観察力・思考力が育まれます。また、思ったことを自由に発言し、友達の意見を聞くことで、自分の視野も広がっていきます。
今までにない形の土曜授業に、子供たちは興味しんしん。
机を囲んでボランティアの説明に耳を傾け、初めて手にするアートカードにもすんなりと馴染んでいる様子です。鑑賞用の教材として使用しているアートカード『SCOPE』(美術出版サービスセンター刊)の美しさに加えて、共通点を探したり、物語を作ったりするといった親しみやすい方法で、子供たちはアートをより身近なものとして感じているようでした。
2014年度の活動は、手探りながらも十分な手ごたえを感じられるものでした。体験した子供たちからの嬉しい感想も寄せられました。
美術館がない自治体においても、美術鑑賞教育の伝統的な枠組み「学校と美術館の連携」に捉われず、地域や自治体の特色を活かし、市民の力で新しい「対話による美術鑑賞」を展開していこうとする杉並区での試みは、現在進行形で試行錯誤の最中です。
今後のボランティア研修やプログラムの内容には、まだまだ課題も残されています。
「わっか」は、話・和・輪を掛け合わせた意味です。「対話による美術鑑賞」の活動が、和を持って、拡がる輪となっていくように。
杉並区での試みが、協働事業の良さを生かしながら柔軟に改良を重ねて、大きな「わっか」に成長していくことを願ってやみません。
【お知らせ】
アートわっか・すぎなみ2期生募集!
杉並区の小学校で美術鑑賞教室ボランティアとして活動するメンバーを募集中です。
応募の締め切りは2015年9月19日(金)必着。
詳細は認定NPO法人芸術資源開発機構ホームページにて告知中です。
http://www.arda.jp/suginami_img/memberboshu.pdf

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