「オルセースクールミュージアム」レポート
こんにちは。「美術検定」実行委員会事務局です。
2016年3月19日(土)から3月27日(日)まで、東京の田園調布学園中等部・高等部で行なわれた「オルセースクールミュージアム」をレポートします。
2016年3月19日(土)から3月27日(日)まで、東京の田園調布学園中等部・高等部で行なわれた「オルセースクールミュージアム」をレポートします。
田園調布学園中等部・高等部(以下、学園)の創立90周年の記念事業として開催された「オルセースクールミュージアム」は、フランスのオルセー美術館が公認した、本物の作品と見紛うような、最新のデジタル技術とコンピュータ技術を駆使した超精彩画像作品=リマスターアートを使っての展覧会です。今回は、ルノワール《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》やマネ《草上の昼食》、ゴッホ《自画像》といった、オルセー美術館に所蔵されている名画のリマスターアート36点が学園のエントランスホールに展示されました。作品展示のための壁やライティングも本格的に施工され、学園は見事に美術館と化していました。

リマスターアートが、裸眼で立体的に見える3D画像処理技術により、絵の具の凹凸や筆致を忠実に再現していることもあり、作品に近づいて拡大して見たり光を当てたりすることができるよう、虫眼鏡やペンライトが貸し出されていました。
この「オルセースクールミュージアム」の何よりの注目点は、生徒の皆さんがこの展覧会の企画運営に参画されていることです。会期中には、生徒が作品を解説する「アート・コンシェルジュ」や、生徒がナビゲーターとなって参加者が作品を通して対話する「アートーク」が開催され、また学園の卒業生で美術大学出身のアーティストと一緒にデジタル技術を用いて制作した鑑賞ツール「アート・クエスト」や絵画を自由に模写できるコーナーなどもありました。こうしたプログラムやツールは、すべて生徒がプランナーとなって企画したものだそうです。

「アート・コンシェルジュ」の風景。来場した子どもたちにも作品解説を行なった。
展覧会の準備は、半年以上前から進められました。希望者を募り集まった生徒を中心に、月一回のミーティングや外部の講師を招いてのワークショップを重ね、企画力を磨いていったそうです。

生徒の企画プロセスも会場の展示の一部に。中には先生を巻き込んだ企画も!
今回の目玉の企画でもある、対話を通じて鑑賞する「アートーク」では、ナビゲーター役の生徒が参加者数人を相手に見事に意見を引き出していました。例えばマネの《草上の昼食》では、参加者の一人が「中央の女性の服はどこにあるのかしら?」と話すと、「それはどこからそう思いましたか?」とその意見の動機を聞き出していました。よく知っている見慣れた作品と思っていても、他の人の意見をきくことでまた違った印象が生まれ、作品の新たな一面を発見できました。

「アートーク」では、生徒が見事に参加者を対話に導いていた。
生徒を指導された学園司書の野村先生は、「生徒たちはこの展覧会の企画運営を通して、自主性や主体性が培われただけでなく、アートークなどの実践を通して、人の話をよく聞き伝えるコミュニケーション力が向上できたと思います。この経験をこれからの人生に活かしてもらえたらと願っています。」とおっしゃっていました。
たった9日間の展覧会でしたが、学園の生徒にとっては、日常空間である学校が美術館という非日常と化した劇的な変化を楽しめただけでなく、展覧会を企画運営するといういつもとは違う能動的な美術鑑賞を通し、通常の授業では得られない貴重な経験ができたことでしょう。何より、生徒の皆さんが美術館と化したその空間でとても活き活きと活動し、来場者の方々と美術を楽しんでいる光景が印象的でした。この経験が今後どのように活かされていくのかが楽しみです。
取材・文=高橋紀子(「美術検定」実行委員会事務局)
写真提供=田園調布学園中等部・高等部


リマスターアートが、裸眼で立体的に見える3D画像処理技術により、絵の具の凹凸や筆致を忠実に再現していることもあり、作品に近づいて拡大して見たり光を当てたりすることができるよう、虫眼鏡やペンライトが貸し出されていました。
この「オルセースクールミュージアム」の何よりの注目点は、生徒の皆さんがこの展覧会の企画運営に参画されていることです。会期中には、生徒が作品を解説する「アート・コンシェルジュ」や、生徒がナビゲーターとなって参加者が作品を通して対話する「アートーク」が開催され、また学園の卒業生で美術大学出身のアーティストと一緒にデジタル技術を用いて制作した鑑賞ツール「アート・クエスト」や絵画を自由に模写できるコーナーなどもありました。こうしたプログラムやツールは、すべて生徒がプランナーとなって企画したものだそうです。

「アート・コンシェルジュ」の風景。来場した子どもたちにも作品解説を行なった。
展覧会の準備は、半年以上前から進められました。希望者を募り集まった生徒を中心に、月一回のミーティングや外部の講師を招いてのワークショップを重ね、企画力を磨いていったそうです。


生徒の企画プロセスも会場の展示の一部に。中には先生を巻き込んだ企画も!
今回の目玉の企画でもある、対話を通じて鑑賞する「アートーク」では、ナビゲーター役の生徒が参加者数人を相手に見事に意見を引き出していました。例えばマネの《草上の昼食》では、参加者の一人が「中央の女性の服はどこにあるのかしら?」と話すと、「それはどこからそう思いましたか?」とその意見の動機を聞き出していました。よく知っている見慣れた作品と思っていても、他の人の意見をきくことでまた違った印象が生まれ、作品の新たな一面を発見できました。

「アートーク」では、生徒が見事に参加者を対話に導いていた。
生徒を指導された学園司書の野村先生は、「生徒たちはこの展覧会の企画運営を通して、自主性や主体性が培われただけでなく、アートークなどの実践を通して、人の話をよく聞き伝えるコミュニケーション力が向上できたと思います。この経験をこれからの人生に活かしてもらえたらと願っています。」とおっしゃっていました。
たった9日間の展覧会でしたが、学園の生徒にとっては、日常空間である学校が美術館という非日常と化した劇的な変化を楽しめただけでなく、展覧会を企画運営するといういつもとは違う能動的な美術鑑賞を通し、通常の授業では得られない貴重な経験ができたことでしょう。何より、生徒の皆さんが美術館と化したその空間でとても活き活きと活動し、来場者の方々と美術を楽しんでいる光景が印象的でした。この経験が今後どのように活かされていくのかが楽しみです。
取材・文=高橋紀子(「美術検定」実行委員会事務局)
写真提供=田園調布学園中等部・高等部
| アート・エデュケーション | 10:28 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑