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ACPアートエデュケーター一日入門講座レポート

こんにちは。「美術検定」実行委員会事務局です。
今回は、一般社団法人アーツアライブが主催するアートコミュニケーション・プロジェクト(以下、ACP)のアートエデュケーター一日入門講座をレポートします。


ACPは、主に認知症の方とその家族のためのアートコミュニケーションを普及するプロジェクトで、2012年よりアーツアライブによって実施されています。このプロジェクトのメソッドには、ニューヨーク近代美術館(以下、MoMA)が先駆けて開発した対話型アート鑑賞プログラムを認知症とその家族のために進化させた「Meet Me at MoMA」が参照されています。現在この「Meet Me」と同様のプログラムは、全米の美術館はじめ世界12ヶ国、約130ヶ所所で実施されています。

アーツアライブの代表理事を務める林容子さんは、1990年代から国内外でアートプロジェクトをプロデュースしていましたが、1999年にイギリスの病院を視察した際、アートが医療の現場を変える状況を目の当たりにし、衝撃を受けたそうです。日本でも同様に医療現場でアートが活かせないかと、その後老人ホームなど高齢者施設で、アーティストとの共同制作をはじめさまざまな活動を行なってきました。
その経験の中で、林さんはアートによって高齢者が生き生きとなる姿をみて、「創造性が発揮されれば、それは刺激となり脳は死ぬまで成長する」ことを実感しました。特に、美術鑑賞という知的好奇心としてのアートの創造性と、高齢者や介護者、そして医療従事者を結び付け、人々の生きる尊厳=クオリティ・オブ・ライフを向上させることはできないだろうかと模索していた時に出会ったのが、「Meet Me at MoMA」でした。そして、そして、MoMAの全面協力の元、同プログラムの日本版として2012年にACPを立ち上げました。

アーツアライブでは、ACPを普及するためにアートエデュケーターを養成しています。ACPの活動には、ただ作品の情報を伝えるのではなく、鑑賞者に寄り添いながら反応を引き出していく、いわば伴走者のようなアートエデュケーターの存在が欠かせないそうです。ACPアートエデュケーター養成講座では、MoMAで制作された「Meet Me」プログラム公式ガイドブックの日本語版をテキストとして使用しつつ、美術の基本的な見方およびMoMAが長年の研究と実践を重ねて開発した対話型鑑賞法理論と、認知症ケアの専門家による認知症に関する基礎知識を習得しながら、実施訓練を重ねていくとのことでした。
今回のACPアートエデュケーター一日入門講座では、その養成講座の一部が紹介されました。プロジェクターに映し出された絵画作品をみながら、「ここには何が描かれていますか」「どのような印象を持ちますか、それはどこからそう思いますか」と対話型鑑賞を体験しました。また、実際に美術館で実施されたACPの様子をビデオで鑑賞したり、すでにACPアートエデュケーターとして活動している方から、プログラムのテーマ設定や鑑賞作品の選出をはじめ、実際の鑑賞者の対応など経験談を伺いました。

林さんは、「ACPは治療のためのプログラムではありませんが、参加した方々が“楽しかった”という体験を作ることは、人々と社会のクオリティ・オブ・ライフを高めることにおいてとても重要です。ACPは、現在高齢者やその介護者のみを対象としていますが、どの年齢どの立場の鑑賞者にも有効なプログラムです。ACPでは、より多くの方々に、これまでに体験したことのないアートとの出会いを提供し、アートを自分のものにするという作品の見方をお手伝いできるよう活動していくと同時に、アートエデュケーターというクリエイティブな職業も構築していきたいと思っています」とおっしゃっていました。

次回は、2016年6月11日(土)に「ACPアートエデュケーター一日入門講座」が開催されます。
ご興味あります方は、下記のサイトにお問い合わせ下さい。
⇒ http://www.artsalivejp.org/2016_nyumon.html


取材・文=高橋紀子(「美術検定」実行委員会事務局)

| アート・エデュケーション | 10:39 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

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