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美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

「美術検定」のオフィシャルブログです。

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検定にも役立つ!? 展覧会プレビュー「アルチンボルド展」@国立西洋美術館、「ゴッホ展」@北海道立近代美術館

このたびの九州地区の豪雨により被災された皆さまへ、お見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

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こんにちは、「美術検定」実行委員会事務局です。
7月に入り、季節も夏本番に突入ですね。
そして7月3日より、いよいよ2017年「美術検定」の申込受付を開始いたしました!
締切は10月5日まで。受付方法などの詳細は、公式HPにてご確認ください。

さて、今回のブログは「チケットプレゼント付き・検定にも役立つ!? 展覧会&プロジェクト・プレビュー」vol.2です。
作品と展示構成から美術史的な「時代の結節点」がわかる2つの展覧会、6月下旬にスタートした「アルチンボルド展」@国立西洋美術館、8月に北海道を皮切りに東京・京都へと巡回する「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」をご紹介いたします。
ブログの最後に、チケットの応募方法も記載しておりますので、お見逃しなく!


spring■アルチンボルド展@国立西洋美術館

まずは、6月下旬に国立西洋美術館で始まった「アルチンボルド」展。見どころは、なんといっても代表作である『四季』シリーズ4点と『四大元素』シリーズ4点すべてが見られることでしょう。これらは、複数のヴァージョンが組み合わさったものとはいえ、所蔵館(個人蔵も)が違いますから、なかなか一気に見るチャンスはありません。高さ約70〜90cmの画面を間近で一挙に鑑賞することで、アルチンボルドの驚異の自然描写とウィットあふれる寓意の世界がぐっと身近になります。
(右)四季を若者や老人という世代にたとえて表現した『四季』シリーズより。世界を統べる皇帝を称揚しているとも言われている(画像は全てクリックで拡大)
ジュゼッペ・アルチンボルド《春》1563年 油彩/板 マドリード、王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館蔵
ⓒ Museo de la Real Academia de Bellas Artes de San Fernando. Madrid


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ジュゼッペ・アルチンボルド『四季』シリーズ。左より
《夏》1572年 油彩/カンヴァス デンヴァー美術館蔵
 ⓒ Denver Art Museum Collection: Funds from Helen Dill bequest, 1961.56. Photo courtesy of the Denver Art Museum
《秋》1572年 油彩/カンヴァス デンヴァー美術館蔵
 ⓒ Denver Art Museum Collection: Gift of John Hardy Jones, 2009.729. Photo courtesy of the Denver Art Museum
《冬》1563年 油彩/板 ウィーン美術史美術館蔵
 ⓒ KHM-Museumsverband



hatikumaアルチンボルド(1526-93年)は、おもにウィーンとプラハの宮廷で活躍したミラノ出身の画家です。この展覧会では、アルチンボルドがエキセントリックな肖像画シリーズを構想し、描くことができた背景も、本人と同時代、前後の作家たちの作品で追うことができるよう構成されています。例えば、ルネサンスの特徴の1つでもある写実的な「自然描写」、バロック期に確立されるジャンル「静物画」、そしてイタリア・バロックの巨匠アンニバーレ・カラッチらが手がけた「カリカチュア(風刺画)」の源流など。作品を追ううちに、ルネサンスとバロックという美術史のつながりも見出すことができるのです。
(右)16世紀後半のウィーンやプラハの宮廷、ミラノやフィレンツェでは、自然研究が盛んで博物誌が多く編纂された。そこで重視されたのは、画像のような自然物の精緻な描写。アルチンボルドもミラノ時代から博物誌を分析してスケッチを重ねたという
ヤーコポ・リゴッツィ《ハチクマ》黒鉛、水彩、テンペラ/紙 フィレンツェ、ウフィツィ美術館 素描版画室蔵 Gabinetto Fotografico delle Gallerie degli Uffizi

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(左)カリカチュアの戯画性をもちあわせた、ユーモラスな図案の一例
ジュゼッペ・アルチンボルド《ルドルフ2世に献じられた馬上試合の装飾デザイン集〈コック〉》1585年
ペン、青の淡彩/紙 フィレンツェ、ウフィツィ美術館 素描版画室蔵
Gabinetto Fotografico delle Gallerie degli Uffizi


(中・右)逆さまにすると料理人の顔に見える“上下絵(逆さ絵)”の仕掛けを施した静物画。右の画像は同作を上下さかさまにしたもの。
展覧会では同様の作品が数点展示され、カラヴァッジョの《果物籠》への影響も指摘されている

ジュゼッペ・アルチンボルド《コック/肉》
油彩/板 ストックホルム国立美術館蔵 ⓒ Photo: Bodil Karlsson / Nationalmuseum



目玉作品の2シリーズは、皇帝の肖像画ですが、植物、生き物、武器などすべてのモチーフを静物として構成しているとも言える作品群です。美術史上、最初の「静物画」はカラヴァッジョの《果物籠》(1600年)とされますが、それよりも30年ほど早く、リアルな静物描写をしたのがアルチンボルドでした。また、背景はシンプルで暗く、描かれた人物が浮かび上がるようなドラマチックさを演出しています。ここにもバロックの静物画描写との共通性を見つけることができるかもしれません。

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ハプスブルク家や皇帝の権力を豊かなモチーフ、自然と宮廷などへの鋭い観察から表したシリーズ
『四大元素』シリーズ。左から
ジュゼッペ・アルチンボルド《水》1566年 油彩/板 ウィーン美術史美術館蔵
ⓒ KHM-Museumsverband
ジュゼッペ・アルチンボルド(?)《大気》1566年頃(?) 油彩/カンヴァス スイス、個人蔵
ジュゼッペ・アルチンボルド(?)《火》 油彩/カンヴァス スイス、個人蔵
ジュゼッペ・アルチンボルド《大地》1566年(?) 油彩/板 リヒテンシュタイン侯爵家コレクション蔵 ⓒ LICHTENSTEIN, The Princely Collections, Vaduz- Vienna


[アルチンボルド展]概要
会期 2017年6月20日〜9月24日
会場 国立西洋美術館
開館時間 9:30〜17:30(金・土曜日は〜21:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜、7月18日(火)※7/17、8/14、9/18の月曜は開館



oiran_gogh■ゴッホ展@北海道立近代美術館

次に紹介するのは、8月26日から北海道立近代美術館で開催される「ファン・ゴッホ美術館 国際共同プロジェクト[ゴッホ展 巡りゆく日本の夢]」です。こちらは今年10月から東京、来年1月には京都へ巡回します。

この展覧会は、「ファン・ゴッホのジャポニスム」「日本人のファン・ゴッホ巡礼」と2部構成がとられています。最大の見どころは、1部のジャポニスムの影響を受けたゴッホ作品(日本初公開を含む)約40点が一堂に会することでしょう。また、日本美術がゴッホに与えた影響を、例えば「日本をユートピアとしてとらえていたゴッホ」というような視点を含め、パリ時代から晩年までの画業を通して、さまざまな角度から検証していることも見逃せません。
(上)ゴッホのジャポニスムへの傾倒が顕著な代表作。中央の女性は、江戸時代後期の絵師、渓斎英泉による花魁図を下敷きにしたもの。カエルや鶴はそれぞれ異なる浮世絵にあるモチーフを組み合わせているそう
フィンセント・ファン・ゴッホ《花魁》(渓斎英泉による)1887年
油彩・綿布 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵
ⓒVan Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)


日本の美術品がヨーロッパに広まるのは、1867年のパリ万博以降です。オランダ出身のゴッホがパリに出た1866年頃は、同地でのジャポニスムが全盛期を迎えていました。この状況はゴッホに大きな影響を与えたのです。本展覧会では、当時パリで日本美術熱を仕掛けたサミュエル(ジークフリート)・ビングや林忠正の活動も取り上げられます。「美術検定」の受験勉強中の方には、ここも注目してほしいポイントです。

oiran_eisen hakubutsu展覧会では、ゴッホの作品とともに、彼にインスピレーションを与えた浮世絵版画作品も公開される

(左渓斎英泉《雲龍打掛の花魁》1820〜30年代
錦絵 千葉市美術館蔵
東京展後期展示、他の会期では個人蔵作品を展示
(右)二代 歌川芳丸《新版虫尽》(部分)1883年
錦絵 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵
ⓒVan Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)



アルル時代のゴッホは浮世絵の影響から、それまでの3次元をいかに2次元のキャンヴァスへ“本物らしく”落とし込むかという西洋の伝統的な遠近法からの脱却と明るい色彩による色面構成に取り組みます。そして、晩年のうねるようなタッチの作品を創造していきました。ゴッホのこうした試みは、20世紀初頭のフォーヴィスムなど、三次元的な再現性よりも自由な色彩表現を重視した絵画表現を模索する芸術運動につながっていくのです。

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(左)フィンセント・ファン・ゴッホ《寝室》1888年
油彩・カンヴァス ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵
ⓒVan Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

(右)フィンセント・ファン・ゴッホ《夾竹桃と本のある静物》1888年
油彩・カンヴァス メトロポリタン美術館
ⓒ The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource, NY

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フィンセント・ファン・ゴッホ《ポプラ林の中の二人》1890年
油彩・カンヴァス シンシナティ美術館(メアリー E.ジョンストン遺贈)
ⓒ Cincinnati Art Museum, Bequest of Mary E. Johnston, 1967.1430



2部では、1890年にオーヴェールで悲運の死を遂げたゴッホに憧れ、同地へ赴いた日本人芸術家たちの記録が辿られます。この巡礼は1914年からその足跡が残っているそうです。巡礼者には、日本のフォーヴィスムを主導した[一九三〇年協会]の佐伯祐三や前田寛治ら、日本画の[国画制作協会]の土田麦僊や小野竹喬らもいたそうです。まさに、当時の日本のアートシーンを牽引していた作家たちでした。

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(左)佐伯祐三《オーヴェールの教会》1924年
油彩・カンヴァス 鳥取県立博物館蔵

(右)前田寛治《ゴッホの墓》1923年
油彩・カンヴァス 個人蔵(鳥取県立博物館寄託)


日本人の作家たちにゴッホが与えた影響の大きさは、今の私たちが想像するよりも大きかったのかもしれません。また、現代の日本でもゴッホ人気は高く、その伝説的な扱いの源泉はこの巡礼にあったのかも、と思いを巡らすことができる展示になっています。

[ゴッホ展 巡りゆく日本の夢]概要
会期 2017年8月26日〜10月15日
会場 北海道立近代美術館
開館時間 9:30〜17:00(金曜日は〜19:30)
休館日 月曜、9月19日(火)、10月10日(火)※9/18、10/9の月曜は開館

東京展@東京都美術館    2017年10月24日〜2018年1月8日
★京都展@京都国立近代美術館 2018年1月20日〜3月4日


※「美術検定」関連書籍の読者のみなさまへ
作品キャプションの一部表記(例:キャンヴァス)につきまして、書籍とは異なる表記(例:カンヴァス、綿布など)があります。この記事の作品クレジットは各展覧会事務局指定のコピーライトに基づくものです。なお、記事本文では、書籍と同じ表記を採用しております。

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「アルチンボルド展」・「ゴッホ展(北海道展)」招待券プレゼント
各5組10名様に同展の招待券をプレゼントいたします。
ご希望の方は、メールの件名を[美術検定ブログチケットプレゼント]とし、
 ・ご希望の展覧会名
 ・Q1~Q3のアンケート回答
 ・チケット送付先の住所と氏名
を明記の上、info@bijutsukentei.jpまでご送付ください。

<アンケート>
Q1. 美術(史)を勉強したことはありますか?
Q2. よく読む美術の雑誌や書籍、サイトはなんですか?
Q3. 美術館にはどの位行きますか?

<応募締め切り>
2017年7月13日(木)
※当選は発送をもって代えさせていただきます。

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取材・文=染谷ヒロコ(本ブログ編集)


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