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CINEMAウォッチ「オラファー・エリアソン 視覚と知覚」

こんにちは。アートナビゲーターの深津優希です。突然ですが、オラファー・エリアソンをご存じですか?デンマークに生まれ、ベルリンとコペンハーゲンを拠点として活動する現代アーティストで、以前日本の美術館でも個展が開催されました。今回はそのエリアソンのドキュメンタリー映画、「オラファー・エリアソン 視覚と知覚」をご紹介します。



オラファー・エリアソンとは
オラファー・エリアソンは、1990年代後半から数々の個展やプロジェクトで注目を集めてきました。2003年にはヴェネツィア・ビエンナーレにおいてデンマーク代表となっており、また同年テート・モダンのタービンホール(元発電所の、大型発電機がおかれていた部屋)で発表された「ウェザー・プロジェクト」では、沈まない夕日が大変話題となりました。
日本では、2005年から2006年にかけて原美術館で、2009年から2010年にかけては金沢21世紀美術館で個展を開催、また2007年から2008年には東京都現代美術館の企画展「SPACE FOR YOUR FUTURE - アートとデザインの遺伝子を組み替える」、2016年の瀬戸内国際芸術祭への出展もありました。
光や水を使った展示が印象的なエリアソン作品ですが、ちょうど本日2017年8月4日に開幕する横浜トリエンナーレにも参加しています。今なら映画とあわせて展示を併せて楽しめるので、エリアソンに親しむ良い機会ですね!

人工の滝をつくるプロジェクトを追う
映画で主に紹介される作品「ザ・ニューヨークシティ・ウォーターフォールズ」(2008)は、制作費約17億円をかけ、75億円超の経済効果を生んだという、巨大な滝のインスタレーションです。クリスト&ジャンヌ=クロードの壮大なプロジェクトを思い起こすような大掛かりな作品で、映像を通してその実現までの紆余曲折を垣間見ることができます。川にやぐらを建て、ポンプで汲み上げた川の水を一気に放流することで人工の滝が出現するのですが、この滝がいくつもあるのですから、近くで暮らし働く人々にとって、“いつもの光景”が“いつもと圧倒的に違う光景”となって見えたことでしょう。この、いつもと違って見えるというのが、作品の意味を考える際にポイントとなりそうです。

光や水、空間を使って表現したいものとは?
これまで見たエリアソンの作品はどれも光や水、空間の使い方が印象的でした。エリアソンは光の屈折など科学的な現象に関心があるのかという質問をよくうけるそうですが、たまたま表現したいことにぴったり合う素材が光だったそうです。また、彼の作品に共通する点として、人工的な滝や霧や虹や夕日のようなものを空間に生み出す際に、その仕掛け(光源、ケーブル、やぐら、ポンプ、その他)を一切隠さない、という特徴があります。自然現象等をそっくりに再現するのが目的ではないからです。それでは、こうした仕掛けによって、彼は何を表現し、観る人に何を感じてほしいのでしょうか?

エリアソンは、「街」というのはその空間だけを指すのではなく、人々を受け入れて包み込んでこそ「街」であり、人々を除外したり排他的であったりしてはならない、というような発言をしています。空間(世界、社会と言い換えても良いかもしれません)をみる私たちの視点を変えさせるような仕掛けとして、滝や、その他の作品は作られているのではないでしょうか。エリアソンは作品を通して社会をより良いものに変えられると信じ、責任ある一個人として世界に向き合っています。滝を背景に記念撮影をする市民や観光客を見ながら、作品を体験する私たちも、責任ある一個人として世界で起きている問題に目を向けなければと感じました。

なお、同時進行で複数のプロジェクトが進み、金沢での展示作品の制作風景も記録されていますので、個展を見た方はこちらも懐かしく楽しめると思います。

こんなところにも、エリアソン!
さて、エリアソンの作品がちらりと出てくる映画を以前紹介していました。「グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状」です。ウィーン美術史美術館のとある展示室の照明を、実は、エリアソンが手掛けています。しかしウィーンまで気軽に飛んでは行けないので、こちらは発売になったばかりのDVDで確認するとしましょうか。

さあ、あなたも、オラファー・エリアソンの作品に触れて、新しい視点で世界に向き合ってみませんか?

◆映画オフィシャルサイト
「オラファー・エリアソン 視覚と知覚」 
http://www.ficka.jp/olafur/

◆《ザ・ニューヨークシティ・ウォーターフォールズ》(2008)
http://olafureliasson.net/archive/artwork/WEK100345/the-new-york-city-waterfalls#slideshow

◆CINEMAウォッチ「グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状」
http://bijutsukentei.blog40.fc2.com/blog-entry-225.html

◆横浜トリエンナーレ
オラファー・エリアソン アーティスト紹介ページ 
http://www.yokohamatriennale.jp/archive/2017/artist/index.html#OlafurELIASSON


プロフィール
美術館ガイド、ワークショップ企画、美術講座講師、執筆などを通して、アートと観る人をつなぐ活動をしています。このブログでは、アートが題材となった映画をご紹介しています。

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