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アートナビゲーター・美術館コレクションレポート「周南市美術博物館」

山口県周南市のNodezaroと申します。今回は私の地元、周南市の周南市美術博物館についてご紹介いたします。


周南市美術博物館、略して「美博」は、1990年代以降のいわゆる第二次美術館建設ブームに建設されました。
美博の展示の柱の一つは、周南市で生まれた戦後日本の写真界を代表する写真家の一人、林忠彦です。美博の誇る林忠彦写真オリジナルプリントのコンプリート・コレクションは、館内の記念室で順次観られます。また館では、本年で26年目を迎える写真公募展、林忠彦賞を開催しています。この記念賞の作品募集のキャッチコピーは“社会は心を撃つ写真を探しています”で、林忠彦が報道写真家と言われるように、写真の持つ報道性を一つ柱としています。今年の受賞作品、有元伸也氏の『TOKYO CIRCULATION』は、現在の東京に生きる人々を街とともに切り取った作品で、スクエアな画面に切り取られた人物像は、背景に取り込まれた街=新宿と協奏しつつ、反発しつつ、生々しいコラボレーションを生み出しています。

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今年の林忠彦記念賞の受賞者、有元伸也氏による作品解説

既に東京、周南市での受賞記念写真展は終了しましたが、2017年11月27日から12月12日までは北海道の東川町文化ギャラリーで写真展が開催されますので、機会のある方は是非ご覧ください。
また美博では、林忠彦賞終了の翌週から7月30日まで「“夢の世界”のデザイナー シンジカトウ・ワールド」展を開催していました。8月には「超世代 仮面ライダー プレミアムアート展」、2018年1月には「武井武雄展(仮称)」を予定しています。
林忠彦賞とのギャップが激しいですが、近年の企画展の傾向としては、絵本原画展やサブカルチャー系が多いです。「シンジカトウ・ワールド」展では、僕らには懐かしい70、80年代の商業デザイナーとして活動開始の頃の作品から、ディズニーやポケモン、ウルトラマンなどとコラボを展開する中で次第にスタイルを確立されてきた流れが展望できました。近作のアクリルによる絵画作品は、ちょっとサヴィニャックのポスター風ですが、“赤ずきんちゃん”のシリーズは独自の解釈が見られて作家オリジナルの作品世界が出来上がっているように感じました。やはり、原画から感じられる作家のパワーというのは、現物を観ないと分からないもので、地元でこうしたものに触れられるというのは、ありがたいことです。

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(左)「シンジカトウ・ワールド展」赤ずきんちゃんシリーズの展示風景
(右)シンジカトウ氏による作品解説には大勢の来館者が集まった


原画から感じられる作家のパワー、このことは2000年に「岸田劉生」展をここで観た時に実感しました。「岸田劉生展、田舎にしちゃ頑張ったね。」って感じですが、「そうか!劉生の亡くなった山口県徳山市か!」と思われた方は、さすが美術検定を勉強されている方です!そうなんです、周南市(旧徳山市)は岸田劉生の亡くなった街です。そのことは知識として知ってましたが、実際に地元で作品の展覧を観た時に、あー、そうなのか!と名状し難い感慨を受けたのを覚えています。フィレンツェ・ルネサンスの名画はウフィツィ美術館で観てこそ価値がある、青木や坂本、明治洋画の九州出身作家の作品は久留米の石橋美術館で観てこそ価値がある。地方都市の小っちゃな美術館ですが、岸田劉生が亡くなった地で劉生の作品を観られる、これこそ意義のあることだと思います。美博の隣の文化会館の前庭には川端康成、梅原龍三郎、武者小路実篤が揮毫し、本郷新が設計した記念の石碑も建っています。
周南市は林忠彦や岸田劉生以外にも、童謡「ぞうさん」で知られるまど・みちおや、『坂の上の雲』で有名な児玉源太郎の生誕の地でもあります。今年も源太郎が手植えしたタイワンゴヨウ(松)の老木が青々と針葉を繁らせてます。劉生が見上げたかも知れないタイワンゴヨウを見上げに、ぜひ周南市にお越しください。


■周南市美術博物館
〒745-0006 山口県周南市花畠町10-16
9:30~17:00(月曜休館) ※入館は16:30まで
Tel. 0834-22-8880 Fax. 0834-22-8886
URL: http://s-bunka.jp/bihaku/


プロフィール
出身地の山口県周南市で、美術とはほぼ無縁の公務員をしてる50過ぎのおじさんです。
学生の頃は、美術部で油絵を描いてました。100号サイズを描いたこともあります。日本の美術教育の賜物で、美術鑑賞に関心が移るのはようやく社会人になってから、美術検定もその里程標として受けてみました。2010年、2度目の受験で美術検定1級取得、その後の7年間、自分も含め”アート”を取り巻く世の中の環境は随分変わったなー、と感じます。かく言う爺も@Nodezaroでインスタグラムなんてものもやってますので、ご興味のある方、是非覗いてみてください。

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