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アートナビゲーター・美術館コレクションレポート「大阪市立東洋陶磁美術館」

皆様はじめまして。大阪府高槻市在住の菅野美智子です。今回は、大阪が誇る陶磁専門の美術館、大阪市立東洋陶磁美術館を紹介します。


大阪市北区中之島に位置するこの美術館は、水都大阪らしい川の景観を生かして整備された中之島公園内にあります。西側には大阪市中央公会堂大阪府立中之島図書館、更に西へと足を延ばせば中之島フェスティバルタワー国立国際美術館など、大阪の文化・芸術を代表する建物と近代洋風建築群を周辺に臨むこの地で、美術館は2017年の今年開館35周年を迎えました。
パリ・セーヌ河岸や、ベルリンのシュプレー川中洲の博物館島を連想させるこの公園地区は、河岸の遊歩道を散策して四季折々の眺めに興じる楽しみもあります。美術館は、赤味を含んだ茶の濃淡の、陶磁器をイメージさせる磁器タイル張りの壁が美しい四角い形で、周囲の歴史的な建物ともよく調和しています。

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磁器タイルの壁面に覆われた美術館。川沿いの景観とも調和している

収蔵品は、住友グループの寄贈で、約1000点に上る中国・韓国磁器の名品が揃う「安宅コレクション」、韓国陶磁の個人コレクションとしては世界的な質と量の「李秉昌(イ・ビョンチャン)コレクション」を始め、その他11の個人コレクションの寄贈から成り、2点の国宝と13点の重要文化財を含む所蔵品の素晴らしさは、世界的にも高く評価されています。
展示の仕方にも工夫が凝らされ、展示ケースの上部に天窓を設け、自然光で鑑賞できる自然採光や回転台の採用で、作品の魅力を余すところなく鑑賞できるように配慮されています。
宝石箱を覗くような喜びを覚える所蔵作品の中から、私のお気に入りを幾つか紹介しましょう。

↓作品名をクリックすると、作品写真がみられます

《飛青磁 花生(とびせいじ はないけ)》
この元時代(14世紀)の龍泉窯の花生は、国宝に指定されています。ほっそりと長い首からなだらかに胴部へと降りる線が優雅で、ロココ時代に描かれた貴婦人の美しい首元を思わせます。釉薬の上に散らした鉄班の間隔のバランスも巧みで、空を飛ぶ雲のようです。この作品は自然光で観ることができ、青磁の美しい色合いが陽光に映えます。2014年に東京国立博物館で開催された「日本国宝展」に出展された時、照明の色が黄色みを帯びていたため魅力は半減。やはり“ホーム”で見るべきと痛感しました。

《青花 蓮池魚藻文 壺(せいか れんちぎょそうもん つぼ)》
元時代(14世紀)の景徳鎮窯の作で重要文化財指定。存在感に満ちた大ぶりの壺で、丸く張り出した豊かな胴部に、コバルト顔料の発色も鮮やかに魚や蓮の精緻な文様が描き込まれており、成形と絵付けの確かな技に圧倒されます。展示ケースのガラスに顔を寄せて文様の細部を眺めていると、時間を忘れます。

《白磁刻花 蓮花文 洗(はくじこっか れんかもん せん)》
北宋時代(11~12世紀)定窯。重要文化財指定。口径24,5㎝。底部が広く深い大きな器は「洗」と呼ばれます。象牙色の肌に繊細に彫られた蓮花文が匂やかで、器自体が大きく開いた花のようです。薄く作られているため光が透けて見えるほどですから、ゆがみが出ないように焼成するには並々ならぬ技術や工夫があったことと思われます。こういう白磁を見ていると、寡黙であることが最も多くを語るときがある、と思わされ、品格の高さを感じます。

以上3点の所蔵品を紹介しましたが、他にも多くの素晴らしい作品が皆様を待っています。美術館のサイトで所蔵品紹介ページを検索すれば、その多様さに驚かれることでしょう。大阪に立ち寄られたら、是非ご自身の目でこれら先人が大切に守ってきた宝をご覧になって下さい。
鑑賞の後は館内の喫茶サロン(館外からも入店可)でくつろぐもよし、季節によっては(春は5月中旬~下旬、秋は10月上旬~下旬)中之島公園バラ園で約310種ものバラを眺めながら大川河岸を散策するもよし、一日たっぷり楽しめる文化ゾーンです。


■大阪市立東洋陶磁美術館
〒530-0005 大阪市北区中之島1-1-26
開館時間 9:30~17:00 (入館は16:30まで)
休館日 月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始と展示替え期間
入場料 常設展 一般500円(400円)、高校生・大学生300円(250円) ( )内は団体料金
企画展・特別展は一般1200円の場合が多い
TEL 06-6223-0055 FAX 06-6223-0057
URL http://www.moco.or.jp/


プロフィール/美術検定は2013年に3級から始めて、2016年に1級を取得しました。日頃は音楽関係の仕事をしています(神戸市室内合奏団ミュージック・アドヴァイザー)。音楽や美術に限らずこの世は素晴らしい芸術の数々で彩られているのに、もっとジャンルごとの垣根を超えて関心を持つべきだと常に考えていますので、関わっている演奏団体の定期演奏会プレトークでも、可能な限り美術の話題も取り入れるようにしています。ドイツ人音楽家だった亡き夫との、音楽や美術にまつわる思い出を書いた本を来年上梓します。今後は、例えばドイツ表現主義についてもっと知ってもらえるようなエッセイなどを書いていきたいと考えています。美術検定を目指す人は、とにかくマメに美術展に足を運び、美術関係の本を読むのが大切だと思います。検定試験に挑戦して一番良かったのは、「能動的に観る」ようになったことでしょうか。






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