美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

「美術検定」のオフィシャルブログです。

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ビジネスパーソンにアートの持つ様々な可能性を紹介する

皆さんこんにちは。アートナビゲーターの臼井です。
突然ですが、皆さんは仕事(ビジネス)の場面でアートを意識することはありますか?



恐らく、美術業界の関係者以外で、仕事に「アート」を結びつけて考える方は少ないのではないでしょうか。アートと言うと、教養の高い人の高尚な趣味といった印象がまだまだあり、これまでビジネスパーソンが熱心に関心を寄せる対象にはなっていませんでした。

最近、その様子が変化してきています。例えば、AI(人工知能)時代の「教育」は、これまでのSTEM(S=Science科学、T=Technology技術、E=Engineering工学、M=Mathematics数学)に加え、A=Art(美術)を含めたSTEAMが重要だという議論が出てきたり、ユニコーン(巨大ベンチャー)企業の代表格であるAirbnbの創業チームのアーティスト出身者が話題になったり、アートがビジネスパーソンの気になるトピックスになってきました。
背景には、問題を解決するためのロジック(≒数字や計算)一辺倒だったこれまでのビジネスのやり方だけでは、人々の心を動かす商品やサービスが生み出しにくくなってきたことがあるでしょう。不祥事を起こすような企業は論外として、社会に対して良き影響を出しているというメッセージを強く打ち出せるかどうかが、ビジネスの優劣を決めるようになってきたのです。多くの人に「いいね!」と共感してもらえる、新しい「価値」をいかにデザインするかが、ビジネスの世界で重要な関心事となり、それがアートへの興味につながってきていると思います。

実は、私の専門はマーケティング。情報機器のメーカーで新規商品・サービスの開発を担当していました。ヒット商品を手掛けたこともありますが、ほとんどが失敗ばかり。人の心は「計算」通りには動かないことを、仕事を通じて嫌と言うほど学んできました。一方、趣味のアート鑑賞で様々な作品と出会い、心が振るわされる体験も何度もしてきました。仕事と趣味の間で生じるこんなギャップを抱えているうちに、いつしか、人の心を前向きに動かす場面をデザインすることができたら楽しいだろうなと思うようになりました。2014年に、「学び」をプロデュースする会社、志事創業社を起業したのは、そんな背景からです。現在は、主にシニア・プレシニア世代向けに研修やセミナーのイベント企画や教育プログラムの開発、企業や地域行政のマーケティングのサポートなどをしています。勿論、その際の共通のキーワードは「心が前向きになる学び」。人の心を動かすアートの視点、要素を取り込むように努めています。

こうした理解のもとに、さる4月22日、デザイン学校の方と一緒に、「アートシンキング」をテーマにしたイベントを東京のビジネス街・大手町で実施しました。デザイナーやアーティストが、日常の生活場面でどんな視点で対象を見ているのか、作品の製作過程で何を考えているのか等々を、簡単なワークショップも交えて共有するセミナーです。想定を上回る40名以上のビジネスパーソンを中心に参加いただき(興味ありは100名以上!)、次回開催を要望されるなど、非常に好反響をいただきました。

「日頃使っていない頭の部分を動かして、脳みそが汗をかいた感じ」
「商品開発を担当してモヤモヤとしていた部分が、別の視点からすっきりしてきた」
「アート制作には閃きだけでなく、緻密なプロセスがあることにびっくり」

普段、アートとの接点があまりない参加者の方から、こんなコメントを沢山いただきました。アートへの関心を、この機会に高めていただいたようです。

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多くのビジネスパーソンが参加した「アートシンキング」をテーマにしたイベントは大盛況だった

このブログをご覧になっている方は、既にアートに強い関心をお持ちの方だと思います。また、ご自身の知識を美術検定などで確認し、美術に関わる仕事で活かしたいといった意志をお持ちの方も多いでしょう。しかし、美術を学ぶ、アートに関心を寄せるという事は、自身の専門領域を創るということだけにとどまるものではありません。好き嫌いから始まり、作者の意図や時代背景などと深く向き合う事は、自分を含めた人の「心」と触れ合う貴重な機会です。人生を豊かにし、心を前向きに動かすための道筋を探る体験でもあります。

イベントを通じて改めて感じたのは、アートの魅力や可能性を伝える場所や方法は様々だということです。アートナビゲーターとしての活動は、やはり作品や作家の魅力をダイレクトに伝えられる場所、美術館などが中心になるのでしょうが、こうしたセミナーなどを通じて、新たな「出会い」の機会を提供することも大切なことだと思いました。仕事に活かしたいからと、これまでアートとは無縁だったビジネスパーソンが、教養や趣味とは別の意図でアートと出会う。美術ファンから見ると「え?何それ」という感じもあるかもしれませんが、アートへの関心層を増やすということだけでも意味があります。さらに、ビジネスシーンで「アート」の活用が進むとしたら、それはアートに備わっている、色々な人を惹きつける様々な要素、可能性が具体化して広がっていくことでもあります。近い将来、大手町のようなオフィス街で名刺交換した際に、心が前向きになるような商品やサービスの開発を担当するビジネスパーソンの肩書として、「○○会社アーティスト」といったものが見られるようになったら、面白いと思いませんか?そんなことを妄想しながら、アートナビゲーターとしてこれからも様々なアートとの「出会い」を作っていきたいと考えています。

さて、続編の要望をいただいたセミナーですが、東京・大手町にある「3×3Lab Future」で開催の「丸の内プラチナ大学」の一講座「アートフルライフ・デザインコース」として7月より開講することになりました。オークションゲームや、閉館後の美術館にお邪魔してのフィールドワークなど、アートとの様々な「出会い」を気軽に楽しみながら体感するプログラムとして企画しています。ご興味ご関心のある方は、ぜひぜひご参加ご検討下さい。

「丸の内プラチナ大学」開講案内
http://www.ecozzeria.jp/events/platinum/3.html


プロフィール
2013年に、認知症の患者やご家族向けの絵画鑑賞プログラムを体感する機会があり、アートの持つ魅力と可能性を強く実感しました。現在は、美術館での各種プログラムの運営サポートや、アートナビゲーターとしての知見なども踏まえ、ビジネスパーソン向けの研修企画などを行っています。大好きな作家はターナー♪

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