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美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

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アートナビゲーター・美術館コレクションレポート「山種美術館」

皆様こんにちは。東京在住のアートナビゲーター日下真美です。
今回はキラキラ輝く岩絵具、胡粉の柔らかな白、糸より細い繊細な線描、絹や和紙の素材感を目の前で鑑賞出来る、美術検定応援館でもある山種美術館をご紹介します。


■美術館の成り立ち

 山種美術館は、山崎種二(山種証券〔現SMBC日興証券〕創業者)氏が個人で集めたコレクションをもとに、1966 年に日本初の「日本画専門美術館」として東京・日本橋兜町に開館しました。その後、2009 年に現在の場所に新築移転しています。近代、現代の日本画を中心に、6点の重要文化財、古筆、近世絵画、浮世絵、洋画を含む約1800 点の作品が収蔵されています。

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山種美術館外観


■コレクションの特徴

 種二氏は、「絵は人柄である」という信念で、明治、大正、昭和の時代に活躍していた画家と直接交流を深めながら作品を蒐集しました。美術館を作るきっかけも、当時親交があった日本画家・横山大観からの「一つ世の中のためになることもやっておいたらどうですか」という言葉にあった、というエピソードもあります。
 また有名画家だけでなく、将来性のある画家達を公私にわたって支援したことも、美術館に画家の代表作が多く蒐集されてきた理由の一つになったのではないでしょうか。「美術を通じて社会、特に文化のために貢献する」という理念は、現在「Seed(種を意味する)山種美術館日本画アワード」という公募展での、若手画家の発掘と奨励にも引き継がれています。

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■おすすめコレクション

 国内外屈指の速水御舟コレクションの中には、重要文化財の《炎舞》《名樹散椿》も。

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速水御舟《名樹散椿》【重要文化財】1929(昭和4)年 紙本金地・彩色 山種美術館
〔企画展〕日本画の挑戦者たち」にて 2018年10月16日~11月11日展示


 川合玉堂や奥村土牛など作家との交流によって築かれた、質の高い近代日本画のコレクションの他、江戸時代のきわめて重要な作品も多く収蔵されていてワクワクします。俵屋宗達、本阿弥光悦、酒井抱一、といった琳派の作品や、浮世絵コレクションも展示の機会を見逃がせません。広重の≪東海道五拾三次≫は表紙や最初期の摺を含め、全56枚の希少な揃いが所蔵されています。色と摺の状態の素晴らしさは圧巻です。世界で数点しかないと言われる鈴木春信「梅の枝折り」の可憐な姿、写楽の大首絵等、貴重な作品の展示に出会える事もあります。


■美術館の素敵な取り組みと工夫

 日本画になじみがあまりない方にも少しでもその魅力を感じて欲しい、と様々な工夫がなされています。
 年間5、6回ある展覧会は親しみやすいテーマにし、講演会やギャラリートーク、花道や落語の専門家を招いたトークイベント、ミュージアムコンサートなども企画されています。また、美術ファン以外にも来館しやすい環境作りや、美術館にはおしゃれして行きたいとの女性心に応えて、ハイヒールの音を軽減する床材が使用されています。他にも、もっと着物を気楽に着て行ける場所作りにと、着物が映える壁や床の色と建築素材が使われ、夏のゆかた割引、年間通した着物割引などのサービスが提供されています。
 バリアフリーの展示室内では、日本画の繊細な色や質感を見やすいように、展覧会ごとに照明の専門家によるライティングを行っています。掛け軸は目の前で、屏風は少し引いて全体が見えるようにと展示空間にも気を配られていることが分かります。
 展覧会のお土産に人気の図録も、ハンディサイズながら充実した内容です。重さが軽減される事で、女性や年配の方に対する配慮を感じます。

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様々な工夫がなされた展示室


■日本画を語り合う場

 さて、展覧会の後は余韻も楽しみたいですね。そんな来館者には嬉しい、ロビーに併設のカフェもあります。

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美術館に併設するCafe椿

 展示室の暗い空間から街路樹を望む光溢れる空間で頂くヘルシーランチやお茶!
 特にお勧めは、展覧会出品作品から5点を選び制作されたオリジナル和菓子の美しさ。青山の老舗菓匠「菊家」の職人さんが美術館とのやり取りを重ねて作られています。展覧会期間中のみ美術館でしか入手できないオリジナル和菓子がお目当てというファンも多く、気楽に作品について語り合う場にもなっています。

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オリジナル和菓子のイメージ。内容は展覧会ごとに変更される


■日本画の魅力を世界に発信する

 日本画の素晴らしさをもっと世界へと、グローバルな取り組みにも工夫が見られます。
 会場内パネルやホームページの(日英)対応や、外国人向けに解説シートを無料で配布しています。毎日発信される館長の公式ツイッターフェイスブックは、海外から多くのフォローがあるそうです。女性館長率いる美術館ならではの、細やかな視点や日本画を身近にという心配りが伝わって来ます。
 コレクションを大切に継承し、その魅力を世界に発信し続ける美術館の姿勢こそ、また訪ねたくなる楽しさや新たな感動の場を生み出しているのだと感じます。たまには着物を着て、日本画を鑑賞後、和菓子を頂きながらアート談義などいかがでしょうか。


■山種美術館
〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日  毎週月曜日(祝日は開館、翌日火曜日は休館)、展示替え期間、年末年始
企画展入館料 大人1000円 大学生・高校生800円 中学生以下無料
※特別展は展覧会により異なる
※美術検定合格者は、合格認定証提示で一般のみ100円割引で入場可         
TEL ハローダイヤル03-5777-8600
http://www.yamatane-museum.jp/


プロフィール
美術館のチラシで美術検定を知り、ナビゲーターという言葉に惹かれて受験。2009年に美術検定1級取得。アートの楽しさを多くの人に伝えたいと、公、私立美術館を中心に、案内や作品ガイド、広報等活動中。特にガイドで心掛けているのは、来た時より帰りは笑顔で。展覧会だけでなく、アートイベントやシンポジウム等、興味のアンテナ張りは尽きません。

| 連載「アートナビゲーター・美術館コレクションレポート」 | 09:06 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

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