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美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

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検定直前! 「ルーベンス展」と「フィリップス・コレクション展」から学ぶアートの文脈

こんにちは。「美術検定」実行委員会事務局です。
いよいよ検定本番までカウントダウンも始まりました。朝晩めっきり冷えるようになってきましたが、受験者のみなさんは、くれぐれも風邪などをお召にならないようお気をつけください。
さて、今回は、気分転換にも検定の準備にもなる開催中の展覧会2つをご紹介します。


「国王の画家にして、画家の王」と呼ばれたルーベンスとイタリアの関わりに着目した「ルーベンス展」と、19世紀から20世紀に至る近代美術の系譜がわかる「フィリップス・コレクション展」。この2展について、美術史を学ぶならチェックしておきたい見どころをピックアップしてご紹介します。
※展覧会概要は、上記展覧会名にリンクした公式サイトからご確認ください。


目次
「ルーベンス展―バロックの誕生」
1 バロックはどこから生まれた?
2 後世とのコネクション

「フィリップス・コレクション展 A MODERN VISION」
3 19世紀後半〜20世紀美術の文脈を実作品でたどる
4 芸術家と作品を語る「ことば」



ルーベンス展―バロックの誕生
(〜2019年1月20日@国立西洋美術館

1 バロックはどこから生まれた?


「美術検定」の勉強をしている方なら、バロックの語源が「歪んだ真珠」を指すポルトガル語に由来することや、「規則から外れた」といった後世の美術批評家たちのとまどいを含んだ言葉だったことを学ばれたと思います。
では、批評家たちは何と比べていたのか、という疑問が湧きますよね。彼らが規範としたのは、イタリアのルネサンスでした。ルネサンスなしには「バロック」という様式はなかったのです。

今回のイタリアとの関係に焦点を当てた「ルーベンス展」では、Ⅱ〜Ⅴ室で古代ギリシア・ローマの彫刻、ルネサンスの3大巨匠、ヴェネツィア派の画家たちなどに学んだルーベンスのことが、作品を通じて理解できる展示になっています。
例えば、ルーベンスのダイナミックな運動感やこってりとした色彩の源を、《ベルヴェデーレのトルソ(石膏像)》、ミケランジェロやティツィアーノの模写に探すことができるでしょう。

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ペーテル・パウル・ルーベンス《パエトンの墜落》
1604/05年頃、おそらく1606-08年ごろに再制作 油彩・カンヴァス
ワシントン、ナショナル・ギャラリー
National Gallery of Art, Washington, Patron’s Permanent Fund. 1990.1.1


Ⅲ室ではキリスト教を主題としたルーベンスと、同時代の画家たちの作品がみられます。ルネサンス期の宗教画とはどんな点に違いがあるか、比べながらみていくとバロック期のキリスト教絵画の特徴がみえてきます。

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左/ペーテル・パウル・ルーベンスと工房《セネカの死》1615/16年 油彩・カンヴァス
マドリード、プラド美術館 ©Madrid, Museo Nacional del Prado
右/ペーテル・パウル・ルーベンス《聖アンデレの殉教》1638-39年 油彩・カンヴァス
マドリード、カルロス・デ・アンベレス財団 ©Madrid, Museo Nacional del Prado


ルーベンスが活躍した時代は、カトリックとプロテスタントが分裂した後です。バロックの中心となったローマはもちろん、そしてルーベンスの故郷フランドルはカトリックを信仰する地域でした。『フランダースの犬』で有名なアントウェルペン(アントワープ)の聖母大聖堂も、偶像崇拝を禁じたプロテスタントの信者たちによってがらんどうとなった教会の1つです。その教会にルーベンスの祭壇画が飾られたことを考えると、その絵画に与えられた役割が想像できます。

キリスト教や神話の物語は内容を知らなければ、作品にどれだけヒントが隠されていても読み解けません。作品をじっくりみた後に、キャプションにあるストーリーも読んでみてください。

2 後世とのコネクション


ルーベンスが巨匠といわれる理由は、過去にひもづく点だけではありません。
Ⅲ・Ⅵ・Ⅶ室の展示から、ルーベンスの動感や劇的な表現が、少し後に出てきたイタリアのベルニーニやダ・コルトーナにも影響を及ぼしたことが、展示を通じてわかるようになっています。
例えば、Ⅲ室に展示された巨大な《法悦のマグダラのマリア》にみられる人物の表情や体の動きは、ベルニーニの彫刻《聖テレサの法悦》に重なってみえてくるでしょう。

ルーベンスはヨーロッパ中の宮廷からその作品を熱望された画家であり、各国の後の画家たちがルーベンスの影響を少なからず受けたことが想像できます。17世紀後半から美術アカデミーが創設されたフランスでも、最初に規範とされたのはローマを本拠としたニコラ・プッサンですが、18世紀にはルーベンスの色彩表現を支持する画家たちの勢力が強くなり、ロココ絵画を拓いていきました。そうした影響が、なんと19世紀の印象主義の画家、ルノワールにも及んでいたことを、この展覧会は教えてくれます。

Ⅶ室では「寓意」「説話」をテーマに展示されているのも、美術史を学ぶ身には助かります。当時、絵画を注文した人々は自分たちの教養にふさわしい主題を求めたのです。ここでも作品をじっくりみてからキャプションを読み、ルーベンスが解釈して表現した図像を再確認することで、深い鑑賞につながると思います。

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上/ペーテル・パウル・ルーベンス《マルスとレア・シルウィア》1616-17年
油彩・カンヴァス ファドーツ/ウィーン、リヒテンシュタイン侯爵家コレクション
©LIECHTENSTEIN. The Princely Collections, Vaduz-Vienna
下/ペーテル・パウル・ルーベンス《ローマの慈愛(キモンとペロ)》1610-12年
油彩・カンヴァス サンクトペテルブルク、エルミタージュ美術館
Photograph © The State Hermitage Museum, 2018



フィリップス・コレクション展 A MODERN VISION
(〜2019年2月11日@三菱一号館美術館

3 19世後半〜20世紀美術の文脈を実作品でたどる


Phillips_1 ワシントンDCに、1918年創設、1921年に開館されたアメリカ初の近代美術館「フィリップス・コレクション」から、75点が展示されている展覧会です。同展では、ニューヨーク近代美術館の創設時の理事にもなったダンカン・フィリップスの作品蒐集の手法に着目し、彼の蒐集年代ごとに作品が展示されています。

近代美術とそれ以前の美術を結ぶシャルダンやゴヤの作品を2つの展示室のポイントに置き、マネやピカソらとの接点を実作品から読み取りできる展示は、美術史を学ぶ受験者にはしっかりみてほしいポイントです。

展示の順番は、制作年代や様式という美術史的な区分ではありませんが、アメリカ社会で同時代の美術が当時の人々にどのように受け入れられてきたのかという軌跡も明らかになっています。例えば、私たちに馴染み深いモネのコレクションが案外遅い時期からということは、アメリカでのモネの人気が「後追い」だったことがわかりますね。

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上/フランシスコ・デ・ゴヤ《ペテロの悔恨》1820-24年頃 油彩・カンヴァス
フィリップス・コレクション蔵 The Phillips Collection

下/エドワール・マネ《スペイン舞踊》1862年 油彩・カンヴァス
フィリップス・コレクション蔵 The Phillips Collection


巨匠だらけの展覧会だけに、見どころは多いですが、フィリップスが好んだブラック、ボナール、クレーの代表作を間近でみることができる稀な機会です。ブラックの緻密な計算を重ねたようにも感じられる図形やイメージの配置、ボナールの明るい色遣いに重なる繊細な筆の運びをはじめ、実物の作品がもたらす情報量に圧倒されることでしょう。
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上/ピエール・ボナール《犬を抱く女》1922年 油彩・カンヴァス
フィリップ・コレクション蔵 The Phillips Collection
下/パウル・クレー《養樹園》1929年 油彩・カンヴァス
フィリップス・コレクション蔵 The Phillips Collection



4 芸術家と作品を語る「ことば」


この展覧会では、フィリップスの作家と作品に対する言葉がキャプションとして紹介されています。

「色彩の震えや屈折を得意とする近代の画家たち、空間における物体の真の関係性をとりわけ追求する画家たち、両者にとって祖先にあたる巨匠。物質世界に対する鋭い意識……調和のとれた形、色彩、表面と奥行きのある空間でもって、シャルダンは20世紀を先取りしている。」(展示キャプションより)

例えばこれはシャルダンを語ったものです。コレクターという鑑賞者が作品を通して作家の特徴を分析し、説明しています。フィリップスは、1つ1つの作品について“自分の”言葉を用いて描写しているのです。
じっくり作品そのものを鑑賞したのち、今度はフィリップスの言葉をヒントに、作品をみてみませんか。時代や様式を超えた共通点が浮かび上がり、時代の結節点となった表現、あるいはその作家だけが有した表現がみえてくると思います。

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上/フィリップスの言葉を紹介したキャプションの一部。各展示室の最後付近に設置されているため、見逃さないよう注意(画像をクリックで拡大)
下/1つの展示室からほかの展示室を見渡せる展示設計は、ワシントンD.C.のフィリップス・コレクションを意識したもの


作品とじっくり対峙して紡がれたフィリプスの言葉は、ぐっとくるところもあれば、作品のどこからそう考えたのか疑問を持つところもあるかもしれません。ただ、鑑賞者として作家や作品について自分の言葉で描写することは、1級受験者やアートナビゲーターに求められるスキルです。
この展覧会は、鑑賞者として作家をどのように語ればよいか、作品をどう説明したらよいか、非常に優れたサンプルも示してくれます。


ご紹介した2つの展覧会でお会いしたアートナビゲーターさんに、受験者のみなさんへの学習アドバイスをうかがってみました。「実物をみると作品の色や描かれた人物の表情といった情報が自然に記憶できます。本で覚えるのもいいですが、時間がないときこそ美術館が効果的!」(Nさん)、「展覧会では作家や展示テーマの関連年表が必ずあります。年表をみておくと、作品と社会背景がすっきりつながります。追い込みにどんどん展覧会を利用するのはおすすめです」(Kさん)、とのことでした。
みなさん、アートナビゲーターへの仲間入りをお待ちしております!

| 連載「検定にも役立つ!? 展覧会&プロジェクトプレビュー」 | 19:00 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

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