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美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

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アートナビゲーター・美術館コレクションレポート「東京国立近代美術館」

皆様こんにちは。東京国立近代美術館でガイドスタッフとしてボランティア活動をしております竹内です。今回はその活動先である、東京国立近代美術館をご紹介させていただきます。


 「日本で最初の国立美術館は?」、美術検定でもお目にかかったような問題ですが、それが「東京国立近代美術館」です。
 通称「東近美(とうきんび)」、1952年戦後間もなく、建築家・前川國男の設計により京橋に開館し、1969年に現在の竹橋に移転しました。現在の美術館は建築家・谷口吉郎によるものです。のちに映像作品を扱うフィルムセンター、工芸作品を扱う工芸館を増設しながら現在に至っています。2012年開館60周年を記念して行われたリニューアル工事の際には、重要文化財である横山大観の大作《生々流転》を展示するため50m以上の展示空間を確保しなくてはならない、といった所蔵作品優先のエピソードが残っています。

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建築家・谷口吉郎設計による現在の美術館

 東近美は、1階の企画展示室と4階から2階までを使用したコレクション展示室に分けられています。今回はこのコレクション展示室を中心にご紹介します。
 ここは「MOMATコレクション」という所蔵作品を展示しており、その数200点前後、展示替えは大きく年3回あります。その間も日本画や写真、版画などの小さな展示替えもあるため、いつ行っても違う作品が見られると言っても過言ではありません。
 日本に西洋画が導入された明治時代から現代までの、日本の近現代の美術の流れがわかるように、ピカソやセザンヌ等の日本に影響を与えた海外の作品を織り交ぜて展示をしています。横山大観、菱田春草、岸田劉生らの重要文化財15点(うち1点は寄託作品)を含む13000点以上の作品を所蔵しています。皆さまには上記の横山大観《生々流転》をはじめ、原田直次郎《騎龍観音》、岸田劉生《道路と土手と塀(切通之写生)》、川合玉堂《行く春》などでご存じの方も多いと思われます。
 
 東近美に来たけれど時間がなくどれを見たら良いのか悩むという方は、4階に設けられた「ハイライト・コーナー」をご覧下さい。東近美選りすぐりの作品をご紹介するコーナーです。重要文化財や各時代の名品と言われる作品を短時間でご覧になれるように集められています。落ち着いた濃紺の壁に、ガラスの映り込みを極力排除した黒い床で作品を見やすいように工夫しています。
 展覧会を見てお疲れの方には、4階に映画の題名から名付けられた「眺めの良い部屋」という休憩所があります。東近美のお向かいにある皇居とお堀、丸の内オフィス街の一旦まで望むことができる見晴らしの良い部屋です。春には桜並木の絶景が、夏には皇居の豊かな木々の緑が、鑑賞に疲れた来館者を癒やしてくれます。

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落ち着いた印象の4階「ハイライト・コーナー」と、見晴らしのよい「眺めの良い部屋」

 その他4階は主に、日本美術の近代化の始まりとされる文部省美術展覧会(文展)の前後から、作家の個性が花開いていく大正期、第一次大戦や世界恐慌といった世界の大きな変化に巻き込まれていく昭和初期の作品を展示しています。

 3階は第二次大戦前後から戦後、1960年代位までの時代を追って展示されており、戦争の影響、戦後の急速な復興、近代化による影響などが感じられる作品がご覧になれます。
 いわゆる「戦争記録画」も展示されています。第二次大戦中に戦意高揚を目的に作家達が描いた作品ですが、戦後は153点が米国へ接収され1970年に永久貸与という形で返還されたものです。現在は修復を行いながら数点ずつ展示しています。様々なご意見を持つ方がいらっしゃるため大きな宣伝は行っておりませんが、多くの方にご覧になっていただきたい作品です。自由な言論が許されず、自由に描くことも出来なかった作家達がどのような絵を描いたのか、どんな思いを持っていたのか、現代を生きる私達が見て、知って、考え、後世に伝えていかなければならない大切な資料だと思っています。
 日本画がお好きな方のための「日本画コーナー」もあります。一番展示替えの頻度が高いコーナーで、展示のテーマや季節に合わせて、様々な作品を剣持勇デザインのラタン・スツールや清家清の移動式畳に腰掛けてゆっくりと鑑賞することができます。

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3階の「戦争記録画」展示室と「日本画コーナー」。「日本画コーナー」では移動式の畳に座って鑑賞もできる
 
 2階は、主に1970年代以降の現代の作家を取り上げた展示がされています。難しいと言われる現代アートですが、新しい技法や素材を用いた作品、新しいジャンルの作品など見る者に新鮮な印象をもたらしてくれます。また同じ2階には「ギャラリー4」と呼ばれる展示室があり、毎回ミニ企画展を開催しています。所蔵作品の中から特集テーマに沿った作品が展示され、いつもと違った角度から作品を楽しむことができます。

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現代アートが楽しめる2階展示室

 その他、東近美のコレクション展で行われている鑑賞プログラムについてご紹介します。豊富な鑑賞プログラムが自慢です!
 まずは、毎日行われている「所蔵品ガイド」、午後2時から1時間ほどで誰でも参加できる対話型鑑賞です。参加者からは「こんな見方があるのか」「違う意見の人の話を聞いて参考になった」などのご意見を頂戴しております。

 月1回の無料開館時(毎月第一日曜日の午前11時から)に行われる「ハイライト・ツアー」もあります。所蔵品展示室を1時間でざっと見て回る、主に解説型のガイドです。また事前の予約が必要ですが、小学校から高校までの学生を対象とした「スクールプログラム」、大学生や一般の団体の方を対象にした「団体トーク」も随時行っています。特に小中学生を対象としたスクールプログラムは毎年たくさんの学校が来館され、授業の一環として鑑賞教育の実践の場となっています。
 他にも夏期の金曜夜には、仕事帰りの大人達を対象にした30分のミニトーク「フライデーナイトトーク」があります。美術館の前庭にはビール屋台も出て夕涼みができます。
 毎年4月のお花見の季節には、「春祭りトークラリー」が開かれます。ガイドに参加し、スタンプを3個集めると好きな作品の缶バッジがもらえるという、うれしい特典付きです。今春行われたトークラリーは無料観覧日とも重なり、参加者は約1300人と春の人気イベントとなっています。
 本年の2019年からは、近年増え続ける観光客に対応すべく多言語化を進め、外国人向けの「英語ガイド」(事前予約、有料制)も始まりました。日本画を中心としたコレクションの中でも選りすぐりの作品を外国人の方に紹介できるようになりました。
 
 東近美は東京駅からもほど近い便利な場所にあり、出張や観光とセットでお楽しみいただくことができます。ご来館の際には、是非ご興味のあるガイドツアーをご利用いただき、さまざまな鑑賞体験をしていただけたら嬉しく思います。


■東京国立近代美術館
〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間 午前10時~午後5時(金土は午後8時) ※いずれも入館は閉館30分前まで
休館日 月曜日(祝日除く)、祝日の翌日、展示替期間、年末年始
入館料 [常設展]一般500円(団体は400円)/17時より300円、学生250円(団体は200円)/17時より150円 
※18歳以下及び65歳以上、各種手帳をお持ちの障害者の方は常設展のみ無料
[企画展]企画展ごとに設定 
※企画展の入館料で当日に限り常設展も観覧可
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL https://www.momat.go.jp/am/


プロフィール
2006年当時、まだ美術検定がアートナビゲーター検定試験だった頃に1級取得。1995年より東京都現代美術館、2011年より東京国立近代美術館、現在二館のガイドスタッフとして主にコレクション展のガイドを行っています。知れば知るほど奥深く面白いアートの世界に入り込み、「No Art, No Life」をモットーに楽しんでいます!


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