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美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

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アートナビゲーター・美術館コレクションレポート「太田記念美術館」

こんにちは、アートナビゲーターのつだです。“雨の日の美術館は混む”と言われる通り、梅雨空を押してアート鑑賞にお出かけの方も多いことでしょう。今回は、普通の暮らしのなかに四季に恵まれた日本の美を見いだした浮世絵を堪能すべく、太田記念美術館にやってまいりました。


■若者の街の一画に佇む江戸
 
 JR原宿駅あるいは東京メトロの明治神宮前駅で降り立つと、都内有数の人気スポット、表参道、原宿、竹下通りを目指す華やかな若者たちの雑踏に一瞬圧倒されます。「このファッションの街で、はたして渋い(?)“浮世絵”が見られるのだろうか?」と違和感が押し寄せるかもしれませんが、そこはぐっと気を取り直して表参道を進みましょう。
 明治通りとの交差点に近い道をわずかに住宅街の方へ曲がると、目指す「太田記念美術館」の入口の石段が見えてきます。石段には、海外の訪問者がリラックスして腰を下ろしていたり、半地下にはショップが見えたり、圧迫感のない穏やかな佇まいにほっとします。

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 さあ、安心して入館しましょう。
 美術館を入るとすぐ受付があり、右に展示室が見えます。
 ちなみに入場料は、2019年4月4日(木)から5月26日(日)まで行われた『没後170年記念 北斎-富士への道』展では一般1000円、その後6月1日(土)から6月26日(水)まで行われた企画展『江戸の凸凹-高低差を歩く』では一般700円でした。『北斎』展の時はリピーター割引があり、半券の提示で200円割引がありました。

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『北斎』展では、会期中再入館し半券提示すると入場料割引になった

 では、展示室へ。

■喧騒を忘れる"和風'"の室内

 こぢんまりした展示室は、中ほどにちょっとした坪庭スペースがあって、吹き抜けの二階に向かう木の階段が見えるという、和風で開放的な空間になっています。作品は壁にぐるりと順を追って展示されています。
 珍しいのは、展示室に入って左側に畳敷きの「小上がり」があること。見学者は靴を脱いで、床の間を拝見するような感じで展示された作品を鑑賞するようになっています。二階では周囲の壁と、吹き抜けの柵にそって設置されたガラスケースの中と、二重に展示があり、丁寧な説明文とともに充実した鑑賞ができます。
 『北斎』展の時は、地下も展示に利用され、「富嶽三十六景」シリーズをはじめとする204点という豊富な内容が展示されていました。
 同館では、「日曜映写会」として午前11時と午後2時の2回、浮世絵の制作過程や歴史を解説した映画を上映しています。また企画によっては、トークイベントも開催されます。6月の『江戸の凸凹』展の時は東京スリバチ学会の皆川典久さんによるもので、午後2時からのイベントに当日11時から整理券が配布されたのですが、あっという間に定員に達してしまっていました。他にも、適宜「学芸員によるスライドトーク」が行われています。

■満員、立ち見のスライドトーク

 「毎日たくさんの方にお越しいただいております。“暗渠(あんきょ)マニア”“階段マニア”の方もこぞっておいでくださっています」と語るのは、スライドトークを司会する主幹学芸員の渡辺晃さん。実は、「葛飾北斎のように著名な作者の展覧会ならともかく、“江戸の凸凹”という企画はちょっとマニアックすぎるのではないかしら?」と思っていたのですが、なんと、展示室は見学者でいっぱいですし、トークイベント会場は立ち見が出るほどの人気です!なるほど、近年の“坂道”ブームや“街歩き”ブーム、NHKで放映中の「ブラタモリ」の好調もあいまって、“江戸の町”への興味は盛り上がっていたのです。美術館の慧眼はさすが!と、不明を恥じるばかりでした。

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トークイベントも盛況だった『江戸の凸凹』展

 それにしても、渡辺晃さんのスライドトークの楽しかったこと!会場にも展示されていたのですが、見学者に展示品リストと「東京の地形と江戸の名所マップ」が配られ、たしかに凸凹の多い江戸の地形と、それを斬新なアングルでとらえた浮世絵師たちの腕裁きの妙がよくわかるのでした。キーワードとして“崖の上に八幡、湧き水に弁財天”が言えると渡辺さん。浮世絵に残された美しい江戸の景観が地図でも確認できて、タイムマシンに乗ったようなひと時でした。

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配布された「東京の地形と江戸の名所マップ」

■タイムリー、季節感抜群の企画
 
 思えば浮世絵は、その時代その時代を映す“現代的”なものでした。浮世絵を扱う美術館の企画が、シャープな現代性を持っているのは当然なのかもしれません、美術館では、月ごとに展示作品を入れ替え、さまざまな企画を通して、浮世絵の持つ多彩な魅力を紹介しています。本年2019年は今後、7月に『青のある暮らし―着物・器・雑貨』展、8月に『異世界への誘い―妖怪・霊界・異国』展など季節感豊かな企画展、そして、9月には大人気の『歌川豊国―写楽を超えた男』展と続きます。

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2019年7月開催の『青のある暮らし―着物・器・雑貨』展

 パンフレットによると、太田記念美術館は1980年に浮世絵専門の美術館として開館しました。実業家の故・五代太田清蔵が国内外から蒐集したコレクションをもとに設立され、収蔵品は14,000点にのぼります。五代太田清蔵は浮世絵の海外流出を嘆き、日本で浮世絵が見られなくなってしまうようなことがないようにと蒐集を始め、そのコレクションは浮世絵の初期から末期までの代表的な作品を網羅し、また保存状態の良好なものが多いことでも知られています。
 風俗や暮らしの文化が好き、そして浮世絵の斬新な構図やデザイン性に惹かれる私は、今後もトークショーやスライドトークなどを見逃さずに訪れたいと思いました。

■j江戸柄、和柄の「可愛い」を堪能

 『江戸の凸凹』展では図録は制作されていませんでしたが、受付の周囲では浮世絵関連の書籍、絵葉書などのほか、ガーゼ手ぬぐいが販売されていました。ガーゼのためか価格も手頃で、よい記念と金魚柄を求めました。
 なお地階には、手ぬぐいで有名な「かまわぬ」の店舗があります。手ぬぐいだけでなく、お財布などの小物に可愛い和柄がたくさん!ここも展覧会のあとの大きなお楽しみスポットです。


■太田記念美術館
150-0001 東京都渋谷区神宮前1-10-10
開館時間 10時30分~17時30分(入館は17時まで)
休館日 毎週月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)、展示替え期間、年末年始(12月23日~1月10日)
入館料 展示ごとに異なる
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL http://www.ukiyoe-ota-muse.jp


プロフィール
2016年に美術検定1級合格、アートナビゲーターになりました。現在は小学校に伺って対話型美術鑑賞教育授業、地区内のアートイベントにまつわる様々なお手伝いをしています。2019年は六本木アートナイトでガイドをつとめました。お芝居、映画、展覧会、旅行が大好きです。

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