FC2ブログ

美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

「美術検定」のオフィシャルブログです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

CINEMAウォッチ「アートのお値段」

こんにちは。アートナビゲーターの深津優希です。暑い夏でしたね!楽しいことたくさんできましたか?わたしは甥っ子とビニールプールで遊んだのが一番夏らしいイベントでした。さて、今回ご紹介するのは、東京・ユーロスペースはじめ全国各地で公開のドキュメンタリー映画、「アートのお値段」です。


この「アートのお値段」は、2003年に制作された映画「マイ・アーキテクト ルイス・カーンを探して」でアカデミー賞、インディペンデント・スピリット・アワード、エミー賞にノミネートされたドキュメンタリー映画監督のナサニエル・カーンが、アーティスト、コレクター、オークショニアなどにインタビューを実施したもの。200点近い近現代美術の傑作が次々に登場するので、それだけでもワクワクしました。アーティストのアトリエでの制作過程や、白熱したオークションの様子、アートフェアやギャラリーでの展示風景などを通して、それぞれが現代アートの価値を語ります。はてさて、どのように受け止めましょうか。

◆アーティスト
・美術館に買ってほしい。個人コレクターに買われると作品には二度と会えない。
・何でもない理由で、急に存在を忘れられてしまう。まだ生きて描いているのに!
・女性アーティストは、年を取っているか死んでいるかでないと売れない。
・最高傑作はまだこれからだ。

ジェフ・クーンズ、ゲルハルト・リヒターをはじめとする現存する現代アーティストたちが登場します。売れるのと成功するのは違うとか、昔の作品だけ評価されるのはどんな気持ちだろうとか、アートの世界も男性社会なのかとか、色々と考えてしまいます。現代アートの面白さは、例えばこうした映画を通して作家の話を聞くチャンスがあること。同時代を生きているからこそ、作品の背景にある問題意識は、見る側のわたしたちにとっても重要であることも多いですよね。

◆コレクター
・資産として、安く買って高く売る。土地や証券とおなじ。
・人が持っているもの、話題のものを自分も欲しい。
・純粋に好きなものを集める。
・どんな作品も、アートはアート。

アートも商品で、投資の対象にもなるのは当たり前のこと。コレクターとひと口に言っても、転売で稼ぐのが目的の人、ただ好きなものを欲しい人、人気作家の作品だからみんなが買っているから自分も買いたいという人など、その立場や買い方は十人十色。以前に本ブログでも紹介した映画「ハーブ&ドロシー」のような個性的なコレクターもいますね。一方アートは見る専門で買わない、という人も。あなたはアートとどんな付き合い方をしていますか?

◆オークショニア
・カタログには、作品の前に立つアーティストの写真があればバッチリ。
・どんな人に買ってほしいか?それはあまり考えないことにしている。
・美術館は墓場!地下の収蔵庫にでも入ったらそれこそ終わりよ。
・企業のロビーに置かれだしたら、その作家もそろそろ終わりかも。

オークションでいくら高値がついて世間の注目を集めても、その取引で支払われたお金はアーティストにわたりません。ただし、今後制作し販売する作品の値段が上がる要因とはなりえます。作品の価値は値段だけでは判断できないけれど、高い値段がついたものを人は大事にします。一方であまり値が上がると、公立美術館などが買うことは難しくなります。作品と作家の運命を左右するオークションのシーンは、映画「鑑定士と顔のない依頼人」「グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状」などにも登場しますが、ついつい引き込まれてしまいます。

この映画は、何か新しいことを見せてくれるわけではないかもしれません。しかしアート・マーケットの様々な様相を改めて提示されたことにより、わたしにとって、あなたにとってのアートの価値を、話し合いたくなりました。どうしてアートが好きなのかしら!どうしてアートを観たくなるのかしら!映画を観て考えてみませんか。
さて、アートのオーディエンスのあり方をめぐっては、美術検定協会トークイベント「アートとメディア、オーディエンスのこれから」が9月10日に開催されます。私も今から楽しみにしています。ぜひ会場でお会いしましょう!


◆映画オフィシャルサイト
「アートのお値段」 http://artonedan.com/

◆美術検定協会トークイベント
「アートとメディア、オーディエンスのこれから」 http://www.bijutsukentei.jp/2019event_seminar.html

◆CINEMAウォッチ 美術検定ブログ バックナンバーより
「ハーブ&ドロシー」 http://bijutsukentei.blog40.fc2.com/blog-entry-119.html
「鑑定士と顔のない依頼人」 http://bijutsukentei.blog40.fc2.com/blog-entry-148.html
「グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状」 http://bijutsukentei.blog40.fc2.com/blog-entry-225.html


プロフィール
美術館ガイド、ワークショップ企画、美術講座講師、執筆などを通して、アートと観る人をつなぐ活動をしています。このブログでは、アートが題材となった映画をご紹介しています。

| おすすめブック&映画 | 10:32 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

PREV | PAGE-SELECT | NEXT