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美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

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アートナビゲーター・美術館コレクションレポート「大川美術館」

皆さんこんにちは。今回は、“逢いたいときにいつでも逢える名画の館”大川美術館のご紹介を、アートナビゲーター・三橋がお届けします。


■美術館の外観

 美術館のある群馬県桐生市は、古くから織物の町としても有名です。美術館へは、東武線を利用すると「新桐生」駅からタクシーで10分ほど向かったところにあります。JRですと「桐生」駅から徒歩15分程、駅から北に向かって大通りを歩き、幼稚園を通り過ぎ水道山公園を目指して登ります。住宅街の中に溶け込むように建っている平屋建ての建物を初めて見た時は、つい「これが美術館?」と思ってしまいました。
 入口には、受付に美術検定応援館の表示がありました。美術検定合格認定証を見せると2割引になる嬉しい特典があります。

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小高い山の中腹にある大川美術館。受付には美術検定応援館の表示も

■展示室とコレクション

 展示室に入ってすぐの壁にピカソの絵画《海老と水差し》が展示されており、それを見ただけでも幸せな気分になります。2019年9月16日までは「大川美術館ベストコレクション」展が行われており、収蔵品約7300点の中から選りすぐりの250点が展示されています。
 ピカソの絵画に続いて小さな展示室がいくつもあり、ルノワールや藤島武二などの充実した所蔵品を見ながらぐるっと廻り、階段を少しずつ降りて行きます。入口のある受付が4階で、沢山の作品を見ながら降りると一番下が1階になります。そこには、美術館の創立者で初代館長の大川栄二氏の美術作品の蒐集のきっかけとなった、松本竣介の《ニコライ堂の横の道》も展示されている松本竣介作品コーナーがあり、その奥に、あたかも松本竣介が今にも現れて来そうなアトリエがあります。

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 竣介が使ったイーゼル、絵の具、パレット、机が置かれ、壁には本棚の写真が嵌め込まれています。本棚では竣介が読んだ本を偲ぶことができ、前の机には手にとって読める当時の本も数冊置いてあります。松本竣介の作品は、どれも静かでありながらその中に強い意志の感じられるものです。この再見されたアトリエのそばの椅子にじっと座っていると、竣介の気持ちが本当に伝わって来るような気がします。しかしこのアトリエは期間限定のもので、延長されたと言っても本年2019年12月8日までというのは大変残念なことです。なお、10月8日からは企画展「松本竣介 街歩きの時間」が開催されます。
 コレクションの展示されているすべての作品をご紹介したい程ですが、ここではその展示内容の一部をご紹介します。作者名は私の一存でピックアッブしました。

【展示内容】
*ヨーロッパの近代絵画1(ピカソ、ブラック、ピカビア、ドラン、レジエ)
*ヨーロッパの近代絵画2(ゴーギャン、ルドン、ボナール、マティスルノワール)
*第一次大戦以降のヨーロッパ絵画(クレー、ドラン、エルンスト、ダリ、キリコ)
*日本近代絵画藤島武二を中心に(青木繁、和田三造、岡田三郎助)
*日本近代絵画藤田嗣治を中心に(前田寛治、村山槐多、岸田劉生、萬鉄五郎)
*松本竣介コレクション「ニコライ堂の横の道」など15作品。
*松本竣介アトリエ再見
*松本竣介と同時代の画家たち(舟越保武、山口薫、麻生三郎、難波田龍起、オノサト トシノブ)
*20世紀の美術(アンディ・ウォーホル、三岸節子、桂ゆき、菅井汲、フランク・ステラ)
*大川栄二の愛した異色の画家(加賀孝一郎、佐野繁次郎、難波田史男)
*日本の版画(広重、恩地孝四郎、駒井哲郎、浜田知明)
*アメリカンシーンの画家(国吉康雄、野田英夫、イサム・ノグチ、清水登之)
*特集展示「ベン・シャーン」

■大川栄二氏について

 大川美術館は、桐生生まれの実業家・大川栄二氏が40年に亘って蒐集した作品約1200点を基に、1989年に開館しました。今も大川栄二記念室もあり、創立者の思いに触れることが出来ます。

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 大川氏は、「絵は心のマッサージ」であり「子ども達とともに大人の眼までが開かれ親子の心の交流とともに、昨今の日本人が忘れかけている人間の心の優しさ、ありがたさを絵を通して語り合える幸せな光景を想い浮かべている」(『父と子のために 絵のみかたたのしみかた』より)と、その著書で述べています。大川栄二氏が館長だった頃、来館者に作品について自ら熱く語っていたと言いますが、その姿が目に浮かぶようです。
 展示されている作品は、皆子どもの目線を意識した高さになっています。多くの部屋にソファが置かれ、自分の部屋で作品を眺めている気分になれます。

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作品展示の高さも工夫されている

 大川栄二氏の、子どもたちや大人たちへの思いが今も受け継がれ守られているとつくづく感じる美術館、皆さんも一度訪れてみませんか?


■大川美術館
〒376-0043 群馬県桐生市小曽根町3-69
開館時間 午前10時~午後5時(入室は午後4時半まで)
休館日 月曜日(祝日除く)、祝日の翌日、年末年始、展示入替期間
入館料 一般1000円、高・大生600円、小・中生300円
      ※小・中生を同伴の保護者は2名まで50%割引
TEL.0277-46-3300
http://www.okawamuseum.jp


プロフィール
鳥取市在住時に大阪で美術検定を受験し、2012年に1級合格。「ラファエロ展」や「ダリ展」のイベント、キヤノン・ミュージアム・キャンパスで、作品の傍でガイドができたことは大きな幸せです。おすすめ本は、水尾比呂志.・著『日本の美術』(岩波ジュニア新書)と『西洋絵画BEST100』(宝島社ムック)です。

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