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美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

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CINEMAウォッチ「今も多くの人を魅了し続けるゴッホの展覧会と映画2本!」

こんにちは。アートナビゲーターの深津優希です。2019年のこの秋は、ゴッホ関連の展覧会、映画が目白押しです。10月11日から上野の森美術館で開催の「ゴッホ展」(2020年に兵庫県立美術館へ巡回)、10月25日公開の映画「ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝」、続いて11月8日公開の映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」をあわせてご紹介します。


「ゴッホ展」
ゴッホが絵を描き始めたのは27歳で、彼は37歳という若さでこの世を去りました。画家として創作していた期間は10年間と短いものの、現存する作品は習作を含めて2000点以上と言われます。今回の展覧会は、ゴッホの画業に大きな影響を与えた、静謐の“ハーグ派”と、色彩と躍動の“印象派”に焦点をあてています。日本初公開作品を含む約40点のゴッホ作品と、マウフェ、セザンヌ、モネなどハーグ派と印象派を代表する巨匠たちの作品約30点が、世界中から集結する貴重な機会をお見逃しなく。三つ折りの展覧会チラシを開くと、ゴッホの人生すごろくになっているので、こちらも要チェックです!

20191011
『美術検定4級問題集』の表紙を飾る《糸杉》にも展覧会場で出会えます!

映画「ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝」
ゴッホの世界最大のプライベート・コレクションといわれるクレラー=ミュラー美術館は、1938年に開館しました。オランダの森の中にあるこちらの美術館からは、今回の「ゴッホ展」にも《サン=レミの療養院の庭》などが出品されています。
ヘレーネ・クレラー=ミュラーという大富豪の女性は、ゴッホの死後、まだ無名だった彼の作品に魅了され、個人コレクターとして約300点を収集しました。そのコレクションが評価されたのはヘレーネの死後であり、作品が死後になって評価されたゴッホと共通しています。ふたりのもうひとつの共通点は、手紙をたくさん書いたこと。ゴッホの手紙を読み、また友人へ手紙を書くことで、ヘレーネはこれまで悩んできた信仰について等、考えを深めていきます。
ジョヴァンニ・ピスカーリア監督によるドキュメンタリー映画「ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝」は、イタリアのバシリカ・パラディアーナで開催された「ファン・ゴッホ 麦と空の間に」展に合わせて制作されました。監修と解説役に同展のキュレーターでゴッホ研究の第一人者であるマルコ・ゴルディンを迎え、ゴッホの初期素描から自殺の直前まで変化し続けた画風をその人生と照らし合わせて紹介。さらに映画「人間の値打ち」「歓びのトスカーナ」で知られる女優ヴァレリア・ブルーニ・テデスが案内役として登場し、ゴッホとヘレーネ、それぞれの手紙を通して、二人の感じ方、考え方、生き方に思いをはせます。作品のクローズアップも多く収録され、上野で開催される「ゴッホ展」はもちろん、ゴッホとヘレーネに会いにオランダの森の中にあるクレラー=ミュラー美術館を訪れたくなりました。

映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」
映画「バスキア」や「潜水服は蝶の夢を見る」で知られる画家・映画監督のジュリアン・シュナーベルと、脚本家ジャン=クロード・カリエールが、オルセー美術館で《自画像》《ゴーギャンの肘掛け椅子》《医師ガシェの肖像》《ルーラン夫人ゆりかごを揺らす女》《古靴》などゴッホの作品40点ほどを観たのをきっかけに、この映画は制作されました。37歳で亡くなるゴッホ役に選ばれたのは63歳のウィレム・デフォーですが、自然の中を走ったり登ったりといった動作を十分な体力で演じ、また監督から絵の描き方のレッスンを受けて撮影に取り組んだそうです。映画のために130を超えるゴッホの絵を監督、主演俳優、画家チームで描いたというのにはびっくりです!
ゴッホになりきり、ゴッホの見た景色、ゴッホの感じたものに迫ろうとする撮影では、様々な工夫のひとつとしてスプリット・ディオプターを使っています。レンズの上下で被写界深度を変えることで生み出されるめまいを覚えるような映像には、ゴッホの視点を体験させるような臨場感がありました。酔いそうだけど目が離せないこの映像について、監督が撮影監督に言ったのは「人生は揺れているものだから、君が揺れすぎということはないよ」という言葉だそうです。
ゴッホの人生についてはゴーギャンとの仲や耳切り事件、ピストル自殺(または他殺)といったキーワードが誰の頭にも浮かび「世間となじめない強い個性」といったふうに語られがちかもしれませんが、この映画をみると、ゴッホだけが真実を見ていて、周りの人には見えていないのかも、と感じます。大きな才能が、その持ち主の生前には認められず、しかし現在多くの人に愛されているのをみると、先述の映画のヘレーネの功績は素晴らしいですね。

世界中の人に愛されるゴッホ、その展覧会に行列ができることはもはや当たり前になっていますが、ゴッホを描いた映画というのが本当に多いことに驚きます。今回ご紹介した2本のほかに、最近だとゴッホの絵がアニメーションで動き出す「ゴッホ~最期の手紙~」なども記憶に新しいですね。これだけ人気なのでつい知ったつもりになりがちですが、謎も多い作家です。この機会に、展覧会と映画をあわせて楽しんでみませんか?


◆展覧会オフィシャルサイト
「ゴッホ展」 https://go-go-gogh.jp/highlight/

◆映画オフィシャルサイト
「ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝」 http://gogh-helene.com/
「永遠の門 ゴッホの見た未来」 https://gaga.ne.jp/gogh/

◆参考
映画「炎の人ゴッホ」ほか、こちらに10選あり


プロフィール
美術館ガイド、ワークショップ企画、美術講座講師、執筆などを通して、アートと観る人をつなぐ活動をしています。このブログでは、アートが題材となった映画をご紹介しています。

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