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美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

「美術検定」のオフィシャルブログです。

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アートナビゲーターによる出張授業!東京都立両国高校・附属中学校編

こんにちは。2019年「美術検定」本試験日も近い10月27日(日)に、東京都立両国高校・附属中学校でアートナビゲーターによる「美術検定」出張講座が開催されました。今回はその講座についてレポートします。


 東京都立両国高校・附属中学校は、中高一貫校で美術部の活動も盛んな学校として知られ、また数年前から「美術検定」団体受験にも取り組まれています。
 今回の出張講座は、本年の「美術検定」3・4級に挑戦する生徒さんを中心に、高校・附属中学校から美術好きな生徒の皆さん15名が参加されました。講師を担当下さったのは、大学やカルチャースクール等でも講座を持っている美術検定1級取得者のアートナビゲーター、中村宏美さんです(中村さんのアートナビゲーターとしての活動については、美術検定HP「合格者の声」でも紹介しています)。

●アートナビゲーターにとっての“美術を楽しく学ぶこと”

 まずは、「美術検定」合格者の先輩であり、また社会人の先輩でもある中村さんから、ご自身の子どもの頃の夢から今に至るお仕事の経験談なども絡めつつ、美術を学ぶきっかけや楽しむ学ぶその意義についてのお話がありました。

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今回講師を務められたアートナビゲーターの中村さん

「その美術作品が好きか嫌いか、感性で見るのもいいけれど、人間の脳はもっと複雑で、作品に込められたたくさんの情報を感じ取ることができる。そして“心のひだ”が増えていく。その“心のひだ”は人生の財産になっていきます。」

中村さんの実体験に基づいたリアルなそのお話に、生徒の皆さんは興味深く耳を傾けていました。

●西洋美術と日本美術を分けてみる

 次は、3つのグループに分かれてのグループ作業です。中村さんから、作家の出身国や地域、制作年代もバラバラな美術作品のカードが各グループに配布されました。
 「そのカードを、まずは西洋美術と日本美術に分けてみましょう。どちらか分からないものは別に避けておいて下さいね」
 あちこちで「これって西洋美術?」「油絵で描かれた作品だと思うけど、西洋美術でいいのかな?」「日本人が描いていれば日本美術?」という声が聞こえる中、作品カードが西洋美術、日本美術、どちらだか分からないもの、の3つに分類されました。

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カードを西洋美術と日本美術に分類分けするグループワーク

 その後、中村さんがその答えと共に作品を解説していきます。「日本人が描いていても、それが西洋から伝わってきた油絵で描かれていたら、西洋なのか日本なのか迷いますよね。でもその“迷い”が大切です。迷うとその作品のことを覚えるでしょう。だからこの授業ではどんどん迷ったり間違えたりして下さいね。」答え合わせの際には驚きやため息もあった教室内でしたが、「間違えてもいい」という中村さんのアドバイスにほっとした空気が流れました。

●年表に作品を当てはめてみる

 “西洋美術”“日本美術”の分類分けが終わった次は、中村さんから「紀元前美術」から「20世紀美術」まで5つの時代に分かれた年表が配られました。年表の左側は西洋美術、右側は日本美術の年表になっていて、年表のところどころ作品図版が抜けています。
 「年表に抜けている作品がありますね。各グループで、先ほど使った作品カードをその年表に当てはめてみて下さい」
 各グループで「これ古いように見えるけど意外と新しいのかな」「世界史で習ったけど、この時代あたりじゃない?」と話し合いながら、年表に作品カードが当てはめられ、徐々に年表が完成していきました。

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グループで話し合いながら、年表の図版の抜けた箇所に作品カードを当てはめていく

 そして正解の入った年表が配布され、中村さんがひとつひとつ作品を解説しつつ答え合わせをしていきました。紀元前に制作された壁画や彫刻に込められた願い、中世の宗教画が伝えていること、また作家が自由な表現を求めて制作した作品…時代背景や社会状況も交えながらの作品解説に、生徒の皆さんは熱心に聞き入り、新しい発見をノートに取っていました。

 講座の終了後、中村さんは「こうして美術を学ぶと、知識という“心のひだ”が増えていくでしょう。知識が身につくと美術鑑賞はもっと楽しくなります。美術をぜひ楽しく学んで、そしてその楽しさをほかの人にも伝えていって下さい」と締めくくられました。
 
 中村さんのその思いが生徒の皆さんにも伝わったようです。講座終了後の感想に、参加された生徒の方々からこんなコメントが寄せられました。

『チームのみんなで話しながら作品の時代を考えたり、時代の流れを感じながら作品について先生のお話を聞け、とても楽しかったです。私は美術検定3級を受けるのですが、テキストを見て「難しそうだな…合格できるかな…」と不安でした。ですが講座を受けて、「難しいと思うのではなく、楽しみながらやれるんだ!」と考えが変わりました。楽しみながら勉強し、美術について学んだ知識をこの先使えるようにしたいです。』
『美術はもともと大好きでしたが、美術史はなんとなく避けている自分がいたので、今回お話を聞けて楽しいと思えるようになりました。美術史の流れをしっかりふまえて、今の美術があるんだなと思いました。中村さんのお仕事のお話も聞くことができて良かったです。』

 また、美術部顧問でもある美術科の中西先生からも、このような感想をいただきました。

『今回の講義を聞き、美術史を教えることと、感じ・考える鑑賞のバランスの良さを感じました。日本美術・西洋美術の区分を考えるだけでもたくさんのコミュニケーションが生まれ、より深く絵を分析できていたと思います。年表づくりもちょうどよい部分が出題されており、生徒それぞれが持っている知識等を使いながら答えることができて、知的好奇心を育むプログラムだと感じました。』

 こうしてアートナビゲーターが講師として、“美術史を学ぶ楽しさ”を学校等で伝える「美術検定」出張講座、教える側も教わる側も共に楽しい時間となりました。美術検定協会では今後こうした活動をさらに展開していく予定ですので、乞うご期待下さい!


取材・文=高田奈美子(美術検定協会)&高橋紀子(「美術検定」実行委員会事務局)

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