子どもが主役の鑑賞授業~ある美術館の取り組み
こんにちは。アートナビゲーターの深津優希です。
美術検定公式ツイッターでも、時々(ふ)の名前でツイートしています。
今日は、私がガイドスタッフとして活動している損保ジャパン東郷青児美術館の鑑賞教育への取り組みついてお話したいと思います。
美術検定公式ツイッターでも、時々(ふ)の名前でツイートしています。
今日は、私がガイドスタッフとして活動している損保ジャパン東郷青児美術館の鑑賞教育への取り組みついてお話したいと思います。

バスで美術館を訪れた子どもたちは、5~10人の班にわかれて作品を見てまわります。
各班にガイドスタッフがつきますが、作品の解説をするためではありません。ガイドスタッフは、「よく見て」「感じて」「考えて」「話して」「聞く」という対話型鑑賞を行うための司会者のような存在です。子どもたち同士の話がはずめば、私たちガイドスタッフは聞き役に徹します。主役はあくまでも子ども、そして美術作品です。

そこで、鑑賞会のおおむね一週間前に、私たちガイドスタッフが学校を訪ねてウォーミングアップを行います。この取り組みを「事前授業」と呼んでいるのです。
事前授業のために、美術館で展示中の作品から10点選び、その作品の絵葉書を用意します。絵葉書の裏には作家名、作品名が印刷されていますので、そこには付箋などをつけて隠しておきます(絵に集中するためです)。このアートカードを10枚1セットにし各班に配ります。アートカードをカルタの絵札に見立て、自分たちで読み札を作るというのが事前授業の定番です。

最近では、現在開催中の「モーリス・ドニ-いのちの輝き、子どものいる風景-」の展示作品《バルコニーの子どもたち、ヴェネツィアにて》のカードを見て、「ピンクのドレスを着てお誕生会に行くところ。」と書いた子どもがいました。このように、描かれた人物、風景、場面を読み取り、子どもたちがそれぞれの言葉で表現しますので、私たちガイドスタッフも毎回どんな読み札ができるのかわくわく見守ります。
読み札作りが終わると実際にかるたあそびをしますが、普通のカルタとりとは違って正解が1つとは限りません。早い者勝ちで絵札をとることもしません。同じ絵を見ても人によって感じることは様々ですし、同じ文章から思い描く絵も人によって様々です。他の人の意見を聞いて色々な見方ができるようになることも、ひとつの目標です。このような事前授業を通して、絵をじっくり見て話し合うということに慣れておくと、美術館に来たときにスムーズに対話型鑑賞を行うことができるのです。
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最後に、損保ジャパン東郷青児美術館のガイドスタッフをしていて良かったと思うことを。ひとつの展覧会の期間中に何度も作品を見る機会があり、子どもたちやガイド同士の対話を通してその都度発見があること。こうした活動とは別に、ガイドスタッフが独自に勉強会や食事会、画廊ツアーなどを企画し、美術館の外でも交流の機会があること。そして、美術館スタッフの皆さんがいつもガイドスタッフを信じて尊重してくださることです。素敵な出会いに感謝し、長く活動していきたいと思っています。

美術検定は「合格するとボランティア募集の情報がもらえる」と聞いて3級を受験したのがはじまりで、その後、ガイド仲間にはげまされ、また大学で学んだ美術史をおさらいするつもりで1級まで受験しました。
1級の記述に関しては、広く関心をもって展覧会のチラシや美術館のサイトをじっくり見ることを強くおすすめします。特に展覧会の関連イベントについて見ておくと、作文のヒントになると思います。「美術検定」のブログでは全国のアートナビゲーターが様々な活動についてレポートしていますので、こちらもぜひお役立てください!
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