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「ACOP鑑賞会」体験記

こんにちは。アートナビゲーターの高島美恵です。
今回は昨年11月~12月に京都造形芸術大学 芸術表現・アートプロデュース学科で行われた「ACOP(エーコップ)鑑賞会」に、鑑賞者ボランティアとして参加させていただいた体験をレポートしたいと思います。


そもそも「ACOP」とはなんでしょうか。初めて耳にされる方もいらっしゃるかもしれませんね。
私もこのボランティアに参加するまで、名称をきいたことがあるという程度でした。

「ACOP」とは「Art Communication Project」の略で、「みる、考える、話す、聞く」を基本とした対話型の美術鑑賞プログラムです。美術の知識だけに頼るだけでなく、鑑賞者同士の交流、コミュニケーションによって美術作品を読み解いていく鑑賞方法を提唱しているのだそうです。詳しくはこちら

acop1京都造形芸術大学 芸術表現・アートプロデュース学科 ではACOPをカリキュラムのひとつに取り入れており、学生が対話型鑑賞のナビゲイトを実践しています。ボランティア向けの事前説明会では、学生の指導にあたられている福のり子先生が分かりやすくACOPの美術鑑賞方法について説明してくださいました。


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さて事前説明会から半月ほど経ち、鑑賞会が始まりました。
ボランティアは鑑賞者として全3回の鑑賞会に参加します。1回あたり約2時間半で、休憩をはさんで4作品を鑑賞します。鑑賞者は各回15名から20名ほど参加をしていました。教室の前方に大きなスクリーンが設置され、学生のナビゲイターはその前横に立ち、向かい合って着席している鑑賞者たちと鑑賞を進めていきます。

最初に、スクリーンに映し出された作品の画像を数分間ひとりで鑑賞する時間があり、そこで鑑賞者はじっと目の前の作品をみて、各々で自分の印象を探していきます(このときはタイトルや作者、制作年代などの作品情報は告げられません)。

acop2ひとりの鑑賞タイムが終わると、ナビゲイターの「この作品について思った事を、どんどん言ってください」あるいは「絵の中で、なにが起こっていますか」等の問いかけで、対話型鑑賞がスタート。手を挙げて意見を述べるというルールのもと、自由に発言していきました。

ただ思い思いに発言していくと焦点がぼやけてしまうので、ナビゲイターがこれまでに出た意見に繋がるような問いかけをしたり、作中の対象(例えば人物の顔の部分など)を指し示したりして、鑑賞者の対話に流れをつくるような舵取りをされていました。そして鑑賞者が作品の印象等を述べたあとに「なぜそう感じましたか?」という問いかけをされたのが、鑑賞を深めるのに効果的だったと思います。

最後にその中で出てきた話題をナビゲイターがまとめて鑑賞が終了します。
このとき作品の作者やタイトルなどの情報が提示されることもあります。
鑑賞会の間には、きっと予想外の話もあるでしょうし、1作品あたり約30分という時間制限もあります。しかし、その中で鑑賞・対話を促し活性化させ、そして収束させていくナビゲイターの手腕はお見事だったと思います。

全3回で12作品を鑑賞したのですが、既知の作品も未知の作品も、ひとりで鑑賞するだけでは感じられなかった感想を持つことができました。特に私が印象に残っているのはアンリ・ルソーの《風景の中の自画像(私自身、肖像=風景)》でした。

私がそれまでルソーに関する知識として持っていたのは、 税関吏でもあった人でアカデミックな美術教育を受けていなかったということでした。また、独学で学んでいるからこそ、既成観念に捉われないスタイルで描かれていることが魅力のひとつだとも。
先日も自分がボランティアで参加している美術館での解説でそのように話していたのですが、しかしながら、私はその魅力を実感したことがありませんでした。どちらかというと個性的な画風に対する苦手意識が強かったと思います。今回の鑑賞会でもスライドを見てすぐにルソーだと分かりましたが、心の中では楽しめるのか不安がありました。

しかし、そんな心配は無用でした。私はそもそもルソーの作品をじっくり見ようとしたことがなかったのです。
背景に比べて極端に大きく描かれたルソー自身の自画像、それを中心に観察するだけでも彼がどこを強調して描きたかったのか、気付くことがいくつもありました。例えば、手に持ったパレットの面をこちらに向けて描いていたり、足元や身体の部分よりも顔のあたりを具体的に描いているところです。そして背景の空、地上の様子…….。
私だけでなく、鑑賞者のみなさんの声も借りて、私はルソーの作品にぐいぐいとひきこまれていくのを感じました。既成概念に捉われないで描いていたというルソーの魅力を初めて実感することができ、この鑑賞が終わったあと喜びでいっぱいになりました。

このように喜びを感じられた回もありますが、うまく鑑賞会の流れに入り込めなかったときもあります。そしてそれはACOPの「みる、考える、話す、聞く」この4つの要素が意識できていないときであったように思います。2週間おきに行われた3回の鑑賞会。前回の自分を振り返りながら、毎回意識しておきたいポイントを考えて臨めたのも良かったと思います。

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私がボランティアで参加している美術館では、お客様に知識を提供するレクチャー形式の解説が主流になっていますが、お客様とお話しできる機会を見つけたら、ACOP鑑賞会で体験できたことを活用してみたいと考えています。展覧会に出かけたときにも、ACOPのナビゲイターの問いかけを自分自身や友達にしてみながら鑑賞を楽しんでいます。


プロフィール/週末に兵庫県立美術館でボランティア活動中。ほか昨年は美術検定講座の講師やワークショップの企画進行など、新しい活動にチャレンジさせていただきました。今年もその調子で活躍できる場を広げたいと思っています。


画像提供=京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センター

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